夫を堕とす妻

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玩具 ニ

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彩花は棚の前で一瞬手を止め、列にならんだ箱をじっと眺めた。それは男性用の貞操帯。

金属の冷たい光、革の艶、筒状の形をしたものがいくつも並んでいる。

「ねぇ? 奥さんにつけられてた貞操帯、この中に似たようなやつありますか?」

彩花の問いは柔らかい。だがその目は、ただの好奇心以上のものを宿している。

隆は言われるまま、商品を見ていく。

金属製のもの、シンプルなベルト型、そして筒状の貞操帯を指差しながら隆は声をひそめた。

「筒状のコレが一番近いかもしれない。ちょっと違う部分はあるけど……」

その言葉に、彩花の顔がぱっと明るくなった。

迷いなく、彼女はその箱を取り上げ、カゴに放り込む。

隆は思わず顔を上げ、言葉を探す。胸の奥がきゅっとなる。

「ま、まさかコレ、つけたまま帰らなきゃならないんですか? 流石にそれはまずい…」

彩花はクスクス、と小さく笑った。笑いの中にはからかいと優越の色が混じる。

「私だって部長の家庭を壊すつもりはないんですよ?」

その声は甘く柔らかいが、本心を煙に巻くような含みがある。隆は胸を撫で下ろしたように思う一方で、何かを差し出されているような胸騒ぎも覚えた。

「まぁつけて帰りたいなら止めませんけど?」

彩花は少しだけ身を乗り出す。指先でカゴの端を押さえ、つぶらな笑いを見せる。

「今日と明日ずっと部長と一緒でしょ?襲われたら嫌だし♡出張中は貞操帯つけて過ごしてもらうってだけですよ?」

その言葉の最後に、彩花は小首をかしげるようにして、まるで冗談めかして囁いた。

更に彩花は赤と黒のロープをカゴに入れる。

「赤と黒のロープ♡これ、部長に似合いそうですね♡」

小さな声で呟きながらも、その声には確かな興奮が滲む。触れずとも隆の反応を感じ取れる立ち位置を計算しているようだ。

次に、アナル開発用の玩具コーナーに目を向ける。いくつかの形状や材質を手に取り、大きさや感触を確かめながら、気に入ったものをいくつかをカゴに入れる。隆はその様子を見て、思わず息を呑む。

彩花の買い物はまだ終わらない。
赤いボールギャグを見つけるとそれを手にして
見せつける。

革のベルトに艶やかな赤の球体が光を反射し、まるで「黙らせる快感」を象徴しているようだった。

「……これも必要かもしれませんね♡」

何気ないように言いながら、ゆっくりとカゴへ入れる。

隆の喉が小さく鳴った。羞恥と恐れと――どうしようもない興奮が混ざった音だった。


「部長、きっとすぐ余計なこと言っちゃうでしょ?ちゃんと“躾”しないと……ね?」

その言葉に、隆の心臓が一瞬止まる。

“それをされたい”という感情が生まれてしまっていた。

「赤って、いいですよね。血の色みたいで♡」

まるで独り言のように呟くが、その声には確かな色気が宿っていた。

隆はその言葉に、全身が熱くなるのを止められなかった。

彩花の指先に転がる赤い球――それが、まるで自分の理性を封じる印のように思えてならなかった。

そして、彩花はボールギャグをカゴの上にそっと置き直し、微笑む。

彩花の無邪気そうな表情の裏で、隆の心は緊張と期待で張り詰めていた。

彩花はクスクス笑い、わざとらしくカゴの中を整理する。赤いロープの上に黒い玩具を重ねるように置き、さっと隆を見た。

「部長、これで…準備万端になりましたね♡」

その言葉の裏には、挑発と支配の意思がしっかり込められている。

隆は言葉が出ず、ただ小さく頷くしかなかった。

彩花の手が再び赤と黒のロープに触れ、選びながら心の中で考える。

「さっきの貞操帯と合わせたら…部長、どれくらい私に従順になるのかしら…♡」

その想像に彩花の胸は高鳴り、軽く息を吐く。掌の中でロープを握る感触が、支配者としての快感をさらに刺激する。

カゴに入れ終わると、彩花は立ち止まり、隆をちらりと見た。赤と黒のコントラスト、そして玩具の存在感が、これから始まる二人の関係の緊張と昂ぶりを象徴していた。

「さ、これで準備は完璧です♡」

その声に、隆は羞恥と屈服の感情が入り混じった複雑な胸の高鳴りを感じた。

彩花の手によって選ばれた道具たち――それはただの道具ではなく、彼の中の隠された欲望と羞恥を引き出す、二人だけの合図のように思えた。

会計のカウンターに並ぶ二人。

総額がかなりの額になっているのを見た隆が財布を出そうとするのを見て、彩花は口元に手を当て、クスクス笑った。

「部長……こんなヤバい玩具、堂々と“買いました”って持って帰れるんですか?私との思い出の道具なんですから、捨てるなんて許しませんけど♡」

彩花の声は甘いのに、言葉の刃は鋭い。

隆は返す言葉が見つからず、困惑した顔を浮かべる。

「も、持って帰れないけど……代金くらいは……」

弱々しく言う隆に、彩花はもう一度クスクス笑った。

「部長……ううん、違うね。“奴隷”……これは二人で選んだけど、私の道具なの。私の道具で、奴隷を調教するんだから……勘違いしないでね?」

その言葉に、隆の胸の奥で羞恥と興奮が混ざり合う。

会計を済ませて店外に出ると、彩花はすぐに袋の中から金属の貞操帯の箱を取り出した。

無言のまま包装を破き、中から鈍く光る金属の輪と筒を取り出す。

彩花は付属の南京錠を摘み上げ、解錠用の小さな鍵だけを取り出すと、それを何事もなかったかのように自分の財布の奥にしまい込んだ。

「……奴隷は先にホテル戻っててください。
 私はもう少しだけ買うものがありますから。」

彩花はそう告げると、ヒールの音を響かせながら颯爽と歩き出す。

その背中を見つめながら、隆は胸の奥で息を詰まらせた。

――鍵を握っているのは、もう完全に彩花だ。いや、貞操帯の鍵だけじゃない。今の自分の全てを握っている。

その事実が、羞恥よりも先に甘い痺れとなって隆の全身を駆け抜けた。

彩花は、ホテルへ向かう隆の背中が角を曲がり、完全に見えなくなったのを確認してから、静かに踵を返した。

向かう先は、ついさっき出たばかりのアダルトショップ。

自動ドアが再び開き、独特の甘い匂いと薄暗い照明が迎える。

胸の奥に、さっきまでとは違う鼓動が広がる。

「……ちょっと色々、買いすぎたかな」

自分でも苦笑しながら呟く。

奴隷の前であれ以上買い足したら――さすがに“気合い入りすぎ”って思われたかもしれない。

けれど、どうしても気になっていたものがあった。

彩花の指先がゆっくりと手に取ったのは、
深い光沢を放つ赤いラバーのボンテージスーツ。
伸縮性のある素材が照明を反射し、艶めかしく光る。
隣にディスプレイされていた肘の付け根まで覆う赤いグローブを見つけると、その瞬間、彼女の中にある何かが“これだ”と確信した。

――赤。

その色は、彼女の好みであり、同時に“支配”と“誘惑”の象徴でもあった。

ただの興味ではない。

彼の前で、女としても支配者としても、完全に君臨したい――

そんな感情が静かに、でも確実に彩花の中で膨らんでいく。

レジに向かう足取りは、先ほどよりずっと軽かった。

選んだものをカゴに入れるその手は、わずかに震えている。

それが期待による震えなのか、自分でも気づき始めた快感への恐れなのか――

彩花自身にも、まだ分からなかった。

アダルトショップを出た彩花は更にドラッグストアへ寄る。

買うものは決まっていて、時間はかからない。

すぐに会計を済ませて袋の中をちらりと覗いた。

購入したのはサランラップといちじく浣腸。

二つの道具をどう使うかは彩花の頭の中では、もうその使い道がはっきりと描かれていた。

ホテルで待っている「奴隷」の姿を思い浮かべる。

あの人がどんな顔をするか──想像するだけで、口元がゆっくりと歪む。

「ふふ……ちゃんと我慢できるかな?」

声に出して呟く。

ラップの冷たい感触、手に伝わる微かな重み。
すべてが「支配」のための道具。

彼女の中のスイッチが、確実に入っていた。

ドラッグストアの袋を片手に、彩花は軽やかに歩き出す。

夜の風が頬を撫で、赤いグローブのビニールが微かに擦れる音がした。

──次に始まる「遊び」は、彼女にとっても未知の興奮を孕んでいた。
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