1000歳の魔女の代わりに嫁に行きます ~王子様、私の運命の人を探してください~

菱沼あゆ

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酔って蔵に入ったら、異世界に飛んでいました

酔っ払いにまじめに訴えても無駄です

 

 二時間後、楽しく焼き鳥をみんなと平らげたアキは、すっかりご機嫌だった。

「イラークさん、鴨も美味しかったですー」

「鴨が、と言えっ」
と怒鳴られながら、皿を下げようとして、慌ててミカに止められた。

 厨房から顔を覗けて、イラークが言ってくる。

「まあ、お前は気持ちよく食べてくれるからな……。
 明日の昼の弁当まで頼まれてるから楽しみにしていろ」
と言われ、はいっ、と言う。

「ああでも、私は旅立ちませんよ」

 唐突に言うアキに、立ち上がりかけた王子たちが、なにっ? と振り返る。

「私、ここで日本酒を作ろうかと思うんです」

 そうアキは宣言した。

「この焼き鳥に美味しい日本酒があれば、この宿に世界中の人が集まって。
 この国は大発展しますよ。
 どうですか、王子っ」

「……いや、それはいいことなんだが。
 ここは、よその国なんだが……」

 ラロック中尉が、
「王子。
 気をつけないと、ほんとうに、この人、酒を作り始めますよ」
と王子に言っていた。

「……なにをどう気をつければいいんだ」
と王子は呟いていたが。
 
「美味しい焼き鳥においしい日本酒があれば、みんながイラーク様にひれ伏しますよっ。
 ねっ、王子っ」

「いやいや、待てっ。
 なんで俺がちょっと呼び捨てっぽくて、イラークがイラーク様なんだっ。

 っていうか、お前の世界では、焼き鳥と日本酒で世界が征服できるのかっ。
 料理人しか王になれないじゃないかっ」

「酔っ払いに真面目に訴えても無駄ですよ。
 っていうか、酔っ払いとまじめに議論しはじめる時点で、あなたも相当酔ってますよね」
と半ば諦めたような顔でラロックが二人を見ながら言ってきた。



 数十分後。
 水を大量に飲んだら、酔いがさめた……と思いながら、アキは二階の廊下にしゃがんでいた。

 いや、大量に飲んだというか。
 むりやりラロック中尉に飲まされたんだが……。

 大きなピッチャーごと持ってこられて死ぬかと思った、と思いながら、アキは、ドアの幅より大きかったせいで、部屋の中に入らなかったあの木箱を眺めてた。

「……なにをしている」
と通りかかった王子が言う。

 アキの部屋とこの木箱を見張るために立っていた兵士が王子に敬礼した。


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