1000歳の魔女の代わりに嫁に行きます ~王子様、私の運命の人を探してください~

菱沼あゆ

文字の大きさ
28 / 97
なんだかんだで魔法が使えました

湖の女神様を呼び出しました


 結局、アキたちはすぐには宿を出発せず、楽しくミカたちと料理を作ったり、晩ご飯を食べたりしたあとで、迷いの森へと向かった。

 町にはまだ明かりらしきものがあったが、森は本当に真っ暗だった。

「新月って、名前だけ聞くと、なんかぴっちぴちの月がありそうな感じですけど、月ないんですよね」

 などとしょうもないことを言いながら、森へと入る。

 空が見えないほど鬱蒼とした木々に覆われているので、カンテラの明かりでゆっくりと進んだ。

 馬は夜でも走れるのだが、入り組んだ森の中だ。

 人間が上手く馬を誘導できないので、歩いていくことになったのだ。

 入り口の木に長いロープの先を縛り、それを引っ張りながら進んだ。

 出られなくならないようにだ。

 ロープが尽きたら、そこに新しいロープをつないで、また進む。

「でもこれ、早く解かないと、誰か引っかかっちゃいますよね~」
と振り返りながら言ったアキだったが、

「あ」
と声を上げる。

 今、後ろを見ようとしたとき、右手の木々の間にキラキラと光るものが見えた気がしたからだ。

「もしや、あれが問題の湖では?」

 ずっと真っ暗な中にいたので、わずかな光でも強く感じられるようになっていた。

 アキが指差す方にみなが移動する。

 木々を抜けると、薄く水が張って、大きな湖に見える場所があった。

 月がないので、余計美しく見える星空が水面に映っている。

 まるで、足許にも宇宙があるかのようだった。

「こんなものが湧き出してくるとはな」
と言う王子に、アキは、

「我々の世界にも結構あるんですよ。
 ある時期になると湧き出してくる湖」
と教える。

 雨季になると現れるレンソイス・マラニャンセス国立公園の湖や鏡ばりで有名なウユニ湖。

 日本だったら、十年に一度現れるという富士山近くの赤池などがある。

 でも、この湖はウユニ湖に近いな、とアキは思った。

 湖ができる理由ではなく、この、空を鏡のように映すところがだ。

 ウユニ湖は、タイミングがよければ、美しい星空が水面みなもに映り、他に視界を遮るものもないので、空と水面が一体の宇宙のように見えるのだ。

 浅い水の中に立つと、まるで宇宙空間にいるかのような写真が撮れるので人気だ。

 此処は天地の間に森があるので、つながっては見えないが。

 すると、その足許の宇宙空間から、ふわっと白いものが浮いてきた。

「クローズ家の者が訪れたようだな」

 美しい白い女神が現れた。

 肌も髪もまとっている衣も白く、目だけが金色だ。

 その造り物のような目で女神がこちらを見る。

「宝を取りに来たのか。
 いにしえの王の血を引く者よ」

「そうです」
と王子は女神に向かって言った。

 すると、王子に深く頷き、女神は言う。

「王子よ。
 人差し指を愛するものに斬ってもらえ。

 その血を湖に垂らすのだ」

 その言葉に王子は一瞬、ビクついてから、こちらを見た。

 斬られるのが嫌なのかと思ったが、ビクついた理由は、そこではなかったようだった。

 王子は迷いながら、アキに訊いてくる。

「……今、愛するものになってもらってもいいか?」

「なってもらってもいいかって変ですよ、王子」

 今、も変です、と思うアキの前で、いろいろと不安を覚えたらしい王子が女神に訊いていた。

「愛する者に斬られて流す血でなければ、宝は得られないということか?」

「いや、別に誰が斬ってもいいんだが」
と女神は軽く言ってくる。

「単に湖に血を一滴落とせばよいのだ。

 それで、水が真実、いにしえの王の血を引いているかどうかを判断する。

 愛する者に斬ってもらえと言ったのは、単に、その方が痛みが紛れるかと思ってだ」

 ただの親切だったのですね……とアキは思った。


感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…