仏眼探偵 ~樹海ホテル~

菱沼あゆ

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樹海に沈む死体

死体の正体

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「……いろいろと気になることがあるのよ」

 そう亮灯が言うと、

「浅海さんが此処で見た干からびた死体が、今回のあれかどうか?

 まあ、此処、地面、土だから。
 死体に同じ土が付着してれば、すぐにわかるからもね」
と志貴は言う。

「その死体がそうなら、餓死じゃなかったわけだから。

 浅海さんは、此処に居た人を殺してないことになるわ。

 で、どうやって、死体が車まで移動したかだけど」

「此処に死体があるのを知ってたのは、浅海さんだけど、彼女の力じゃ無理だよね」

「もう一人居るじゃない。
 彼女に食事を運ぶよう指示していた人物が」

 それは誰なのか。

 何故、子供の彼女に運ばせていたのか。

 子供である浅海が迷わないようよう、わざわざ白い糸で目印をつけてまで。

「そして、なんのために、今更、その死体を持ち出してきたのか」

「なんで、あの車を選んで載せたのか、もだよね」

「『なんであの車に』かあ。
 街に行きそうだからかな。

 OLさんたちがたくさん買い物したら、トランク、街中で開けたかもしれないわよね。

 いえ、それ以前に。

 転がり出たってことは、もともと、トランクは軽くしか閉めてなかったのかもしれない。

 今の車は、トランクが半ドアでもサインがつくけど、あれ、古いし。

 もし、わかるようになっていたとしても。

 あの人たち、死体が自分たちの車から転がり落ちても、歌歌ってて気づかなかったくらいなんだから。

 もし、光ってるだけの警告とかなら、気づかないかったのかもしれないわね」

「うーん。
 わざわざあの車に載せた人は、死体を発見させたかったってことなのかな?」

「遠くに捨てたかったとも考えられるけど、ちょっと無理があるわよね。

 彼女らは、トランク開けても、ただ大騒ぎするだけだし。

 それどころか、買い物が少なければ、開けずに戻ってくる可能性もあったのよね。

 そして、実際、そうなったわけだし」

 たまたまカーブで死体が転がり出ただけだ。

「なにかこう、無計画な匂いがするわ」
と亮灯は顎を手をやり、唸ってみせた。

 志貴が笑う。

 なに? と目を上げると、
「そうしてると、本当に探偵みたいだよ。
 助手とかやめて、自分が探偵になったら?」
と言う。

「なに言ってるの。
 私は別になりたいものがあるのよ」

「なに?」
と言う志貴に、

「志貴のお嫁さん」
と言うと、赤くなる。

「亮灯……」

 ま、刑務所入ったらなれないかもしれないけどね、と思っていると、
「いつまで、居るんだ。
 とっとと、出ろっ!」
と外から抜群のタイミングで晴比古の声が聞こえてきたので。

 もしかしたら、全部聞かれてたのかもしれないな、と思ったのだが。

「ま、いいか」
と呟き、辺りを見回して、外に出た。


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