29 / 65
お前の望む部屋を作ろう
また違う世界に転移したのかと思った……
しおりを挟むこっちの世界に来てから、毎朝。
目は覚めたはずなんだが、またこれ、夢かな、と思う。
しかも、今日はまた景色が違った。
目覚めたとき、エミリは、狭苦しく、暗い洞穴ではなく、広々とした岩山の穴の、広々としたベッドで燦々と日に照らされていた。
――ああ、魔王の城か。
エミリは眩しさに、目をしぱしぱさせながら、ただ壁をくり抜かれただけの大きな窓を見る。
そういえば、入り口に鍵はかけたが、窓は閉められないから、このまんまだったな。
ここからいくらでも入って来れるのに、紳士だな、魔王様、とエミリが思ったとき、コンコン、とドアをノックする音がした。
「エミリ様、そろそろお目覚めですか?
マーレクが食事を運んできております」
とレオの声がする。
……朝食も持ってきてくれたのか。
っていうか、持ってきておいてもらってなんなんだが、奴は神官の仕事はしているのだろうか。
感謝しながらも不安になる。
下の広間っぽい、だだっ広い穴に行く。
ど真ん中に、ぽつんと大きなテーブルがあり。
そのテーブルにはマーレクが王宮の厨房から運んできた食事が二人分並べてあった。
魔王の分も約束通り、あるらしい。
「マーレク、朝はその辺のものでも、とって食べるからいいわよ」
エミリは申し訳なくなって言ったが、マーレクは、
「いえいえ。
魔王様にいろいろとご賞味いただいた方が、人間の味のバリエーションを早くに覚えていただけるので。
運んでこなくてよくなるかと思いまして」
と言う。
「それもそうね」
と言いながら、エミリは思っていた。
人間の味のバリエーションとか言われると、人間の作る味じゃなくて、人間の味みたいで怖いんだが……。
「でも、その辺のものをとって食べるって、なにを召し上がられるつもりだったんです?」
そうマーレクが訊いてくる。
「え? なんか森とか探してみようかと思って。
植物に詳しい魔女の人もいるし」
と言うと、レオの後ろに控えていた魔女が嬉しそうに、にんまり笑った。
ほう、と言ったマーレクは、
「本日、探索などされるのなら、私もついて行ってもよろしいですか。
魔王の森。
見たこともない薬草などありそうです」
と言い出す。
見たこともない、人が食べたら死ぬ薬草なら、たくさんありそうなんだけどね……。
そんなことを考えながら、エミリは魔王とともに、奴隷だったとき食べていたのより、具の多いスープを飲み、奴隷だったとき食べていたのより柔らかい肉を食べ。
奴隷だったとき食べていたのより、ふかふかしている気がするパンをかじった。
……気がする、くらいのやわらかさのパンを食べながら、エミリは思う。
よく考えたら、魔法で料理の再現をするのなら、この世界のパンとかより、私たちの世界のパンを作ってもらった方がおいしいんじゃない?
「……でも、それには、一度パンを作って、魔王様に食べてもらわないとな」
と呟く。
魔王をまるでパン製造機のように言いながら、エミリは食事を終えた。
4
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる