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エミリ、魔王の森に行ってみる
ニンゲンこわい
しおりを挟む「魔王様、これは食べ物です」
とエミリは言った。
「食べ物?」
そう、みんなに訊き返される。
「こんな攻撃的な食べ物があるのか」
と言う魔王に、エミリは地面からあちこち突き出している茶色く尖ったもの、タケノコを指差し言った。
「これはタケノコです。
上手く煮られれば、ホクホクして、甘味があり、美味しいです」
先ほどから、普通の森を抜け、竹林に入っていたのだ。
ただ、とエミリは小首を傾げる。
「我々の世界ではそうなんですが。
この世界のタケノコも人が食べられるものなのかはわかりませんが」
「お妃様」
とアンジェラが進み出る。
「ちょうど良い試薬がございます」
「試薬?」
「人に食べられるものなのかどうか。
試してみるのに良いものがございます」
その言葉に、マーレクが怯える。
もしや、私のことかっ、と思ったようだった。
だが、アンジェラはマーレクに毒味をさせようとしたわけではなかったようだ。
「これは人間のエキスです」
と小さなガラス瓶に入った青い液体を出してきた。
「これをかけて、なにも変化が起きなければ人間にも食べられます」
いや、青く染まった時点で、それ、食べたくないんだが、と思いながら、エミリは訊く。
「……食べられなかったら?」
「かけた試薬の色が真っ赤に変わり、そのモノは笑い出します」
鳥とかにかけたら、笑い出すのはまだわかるが。
真っ赤になったタケノコが笑い出すところは、あまり見たくないな、と思う。
「へえ、便利ね。
……人間のエキスとやらがなにでできてるのか気になるけど」
人を釜に入れてグツグツ煮たとか、絞り出したとかじゃないだろうな、とヘンゼルとグレーテルの魔女みたいなアンジェラを見て思ったが。
「私にもわかりません。
さっき、昨日のムカつく色男の行商人から買ったので」
ルーカスか。
っていうか、アンジェラはルーカスに文句を言いながらも、彼の説明をするとき、必ず『色男』とつけるのは何故なんだろうな、とエミリは思っていた。
「……なにでできてるのか、今度訊いてみよう」
と呟きながら、エミリはまだ抜いていないタケノコにいきなりそれをかけようとした。
「おやめくださいっ、エミリ様っ」
とマーレクが慌てて腕をつかんで止める。
「どうするんですか、そんなまだ生えてて成長状態にありそうなものにかけてっ。
笑いながら、伸びてって攻撃してくるかもしれませんよっ」
それはそれで、なんか楽しそうだが……。
「城の周りに配置したら、きっと敵が恐れて攻めてこないわね」
とエミリが呟くと、魔王は感心し、
「ほう、そうだな。
エミリ、お前は賢い妃になるな」
と言い出した。
マーレクが呆れたように、
「いいんですか、このバカップルを野放しで。
魔族の国が傾きませんか」
とレオに言っていた。
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