異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました

菱沼あゆ

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エミリ、魔法の絨毯を所望す

城を改造しましょう

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「しかし、いきなり人間の勇者が攻めてくるとは、危険ですね」

 朝食の席でそう言ったエミリをマーレクが、

 いや、お前は何処の立ち位置に立って物を言ってるんだ、という顔で見る。

 だって、形ばかりとはいえ、私は魔王様の嫁ですし。

 今はこの城の住人ですしね。

 住まいを襲撃されては困ります。

 なんとなく、魔王様たちにも親近感を覚えてきたことですし、と思いながら、エミリは言った。

「もうちょっと防御力上がらないですか、この城の」

 魔王たちの力は強い。

 人間たちに負けるとも思えないが、彼らがいないときもある。

 城自体が敵から身を守れるようになっていたらよいのだが、と思って言うと、魔王がエミリに問うてくる。

「ほう。
 お前の思う防御力の高い城とはどんなのだ」

「えーと、そうですね。
 外国のお城には詳しくないので……。

 そうだ。
 日本の昔のお城みたいなのはどうでしょう。

 日本のお城、いろいろ仕掛けがあるんですよ。
 敵が侵入してこれないような」

「よくわからんが、作ってみよ」

「作ってみよと言われましても。
 私ひとりの力では。

 魔力もありませんし」
と言うと、見本を作ってみろと言う。

 そこで、エミリは魔女、アンジェラや小悪魔たちとともに森に小枝を拾いに行った。

 それをマーレクに持ってきてもらった接着剤――

 天然のアスファルトで引っ付ける。

 やがて、不恰好ではあるが、小学校低学年の夏休みの工作として提出するくらいならいけそうな気がする小枝の城ができあがった。

 アンジェラや小悪魔たちと、わっと盛り上がる。

 その日の夕食の席で、
「これが日本の城ですっ」
とみんなで魔王やレオに見せたとき、マーレクに習いながら、給仕を覚えていた虫歯菌のような小悪魔のひとりが手にしていたカゴをドサリと落とした。

「それは……っ」
と斜めに傾いた城を見る。

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