異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました

菱沼あゆ

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エミリ、魔法の絨毯を所望す

長老出立っ!

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 マーレクが消えたあとも、長老たちは話し合っていた。

「なんとしても、この国と王のために、あの神の子を取り戻さねばな」

「マーレクは、あてにならないし」

 さすが長老、その辺の勘はよかった。

「マーレクは、いつの間にやら、魔王に懐柔されているようだ」

「……あいつは本当に神官なのか」
と長老たちは愚痴る。

「まあ、いろいろ神の力を秘めているとは言っても、マーレクはまだ若い。
 私、自ら交渉に参りましょう」

 長老の中では若い方に当たる男、ロンヤードは、そう言った。

 おお、と誰もが嫌がることを引き受けたロンヤードに長老たちは拍手喝采する。

「なに、魔王など。
 この私の交渉術にかかれば、ひとたまりもありませんよ」

 今まで、さまざまな国との交渉をまとめてきた長老ロンヤードは胸を張る。

 いつもマーレクについていく者たちよりも多い兵を引き連れ、ロンヤードは魔王の城へと出立した。


 魔王の城に辿り着いたロンヤードは、早速、魔王と神の子エミリに面会できた。

 なにもないガランとした広い部屋には、魔王の椅子とその妻であるエミリの椅子しかない。

 二人は仲睦まじく並んで座り、彼らの側に控えているのは、ケモミミのある軍人のような男ひとり。

 うむ。
 人間が兵士たちを率いてきても、なにも恐れぬということか、と数々の交渉を華麗にこなしてきたロンヤードは深読みしすぎる。

 これが神の子、エミリか。

 正直言って、神の力を秘めているといっても、ちょっと賢く、人より美しいだけだと思っていたのだが。

 送り出したときより、輝いて見えるな。

 魔王の城に来て、神の力が開眼したのか。

 輝いて見えるのは、自分が神の子だと思い込んでいるせいと。
 
 こちらに来てからの方が、食べるものが良くなり、行動に制限もないので、エミリがいつもワクワクしていて、輝いているせいだったのだが、ロンヤードは気づかなかった。

 ……うん。
 ちょっと神の子に対抗できるか自信がなくなってきたぞ、と長老 ロンヤードは気弱になる。


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