異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました

菱沼あゆ

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エミリ、魔法の絨毯を所望す

それぞれの思惑

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「皆様、お疲れでしょうから、少しここに滞在されてはいかがですか?
 よろしいですか? 魔王様」

 みなを気遣ったエミリが、魔王にそう尋ねる。

 だが、ロンヤードたちは遠慮したがっていた。

 魔王の城にっ?

 魔獣たちにとって食われるのではっ?
とみな青ざめていたが。

 最近、エミリ主導で作る謎の料理や、マーレクが運んでくる王宮の料理ばかり見ている魔獣も下っ端の魔物も、硬くてまずそうな兵士たちには特に興味はなかった。

 エミリが魔王に問う。

「あの、皆様のお部屋とか、それぞれにご用意できますか?」

「全員にか?」

「はい。
 できれば、下で控えてる兵士の方々にも」

「まあ、構わぬぞ。
 幾らでも同じ部屋を増やせるし」

 魔王はエミリにいいところを見せたかった。

 だが、ロンヤードは恐縮したように言う。

「いえ、この者どもは、ひとまとめに外で結構です。
 なんなら私も外で結構です」

 遠慮があったのも確かだが。
 魔王の城より、外で寝る方がマシだと思っていた。

 兵士たちもみな怯えて固辞する。

 だが、はなから、魔獣たちを恐れていないエミリには、その怯えは伝わらず。

 身を乗り出し、エミリは言った。

「でも、皆様、長旅で疲れていらっしゃるのでしょう?
 兵士の皆様もゆっくりおやすみにならなければ」

 神々しいまでに美しいエミリにやさしくねぎらわれ、
「エミリ様っ」
とロンヤードの護衛の兵士たちは涙ぐむ。

「ああでも、あんまり魔法を使われたら、魔王様もお疲れになりますよね」

 兵士たちと同じようにエミリにねぎらわれた魔王も、エミリ様っ、とつられて同じ感じに――

 いや、兵士たちより、かなり熱めの視線でエミリを見る。

「いや、大丈夫だ、エミリ。
 私の力は無限大だ。
 お前のために頑張ろう」

 魔王はそう宣言し、ぶ厚いおのれの胸板を叩いた。

 なんと、無限大とはっ。
 魔王の力はそんなに強いのかっ、とエミリに感謝しつつもロンヤードは身構えたが。

 魔王は、ほんとうに、ただただ、エミリにいいところを見せたいだけだった。


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