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魔王城に危機が訪れようとしています
ちょっとは距離が近づいた気がする
しおりを挟む「それでは行って参ります」
みなに挨拶し、エミリと魔王は何とか魔法の絨毯に二人別々に腰かけ、ふわりと空に舞い上がった。
お互い背を預け、反対側を向いて座る感じだ。
レオは、これではお互いの顔が見えないではないかっ、と思っていたが。
魔王はエミリと背が触れ合うだけで、ときめいていた。
一方、エミリもまた、
うーん。
やっぱり魔王様の体温を感じるなあ。
こういうところは人間っぽいんだよな、とちょっぴり緊張していた。
できるだけ、魔王から離れようとする。
舞い上がった絨毯は、最初は高度が低かったのだが、どんどん上に昇っていった。
岩山のような魔王の城が小さく見える。
城の外で見守るみんなが、おお、という感じにこちらを見つめていたが。
その姿もどんどん小さくなっていった。
「素晴らしい眺めですね、魔王様」
と言うと、
「おお、そうか」
と機嫌のよい魔王の声が背の向こうから聞こえてくる。
「夕暮れどきになると、きっともっと美しいぞ」
「楽しみですね。
ありがとうございます。
もうちょっと大きかったら、みんなも乗れたのに」
「そうか。
……そうだな。
そうするか?」
とちょっと寂しそうに魔王が言った。
「あ、すみません。
これ以上の物は動かすのは大変なんでしたね。
お疲れになりますよね」
「そんなことはないっ。
……うん。
そんなことはないのだ。
すまない。
すべて嘘だ。
私はお前と二人で空の旅に出たかったのだ」
ほんとうは城ごと飛ばせる、と白状する魔王にエミリはちょっと微笑んだ。
眼下に広がる美しい山々を見下ろしながらエミリは言った。
「……絨毯飛ばしてくださって、ありがとうございます、魔王様
とても楽しいです」
怒られるかと思った。
魔王はちょっとビクビクしながら構えていたのだが。
エミリは微笑み、ありがとうございますと言ってくれたようだった。
なんという、よい娘だっ。
このような伴侶を持てて私は幸せだっ。
いや、未だ、正式に伴侶となってくれてはいないのだが!
それにしても、なんだろう。
この今まで味わったことがないような、ほこほこした気持ちはっ。
魔王がこのような穏やかな気持ちになってよいものかどうかわからないが。
人間はきっとこのような時間を持ちたくて、結婚しようとするんだな、と思う。
魔族の寿命は長いので、番になる事はあるが、永遠に一緒、ということはなかなかない。
自分の血族さえ作れば、それでもう用はない、と考えるものも多い。
……そもそも、分裂して増えたりする輩もいるしな。
そんなに急いで産み育てなくてもよいので、急いで相手を探すこともないし。
そんこと、生きる上で、重要なことだとも思ってはいなかったが。
私は今、幸せだ。
いいのだろうか、とつい、思ってしまったとき、エミリが下を見て言った。
「あ、王宮が見えます」
エミリが住んでいた砂漠の国の宮殿が下にキラキラと輝いて見える。
白い石造りの建物や、宮殿の金で装飾されている部分が光って見えるようだった。
「降りてみるか?」
と魔王は訊いた。
「そうですね。
コーヒー豆の情報を得たいですし。
ルーカスもよくは知らなかったようなので。
博識なセレスティア様がいらっしゃるといいのですが」
うむ、と言いながら魔王は元気がなくなった。
行くのは良いのだが、里心がついて帰ると言い出さないだろうか。
魔王はそんな心配をしていたが、
そもそもここはエミリの里ですらなかった。
「おや?
王宮の外にたくさん人が出てますね」
とエミリが身を乗り出す。
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