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植物園でもてなしたい人々
その花言葉、いらなくないですかね?
しおりを挟む「陽子、茶を飲め」
「陽子さん、このケーキ」
植物園で、准と誠二は遊びに来た陽子をこれでもかと、もてなしていた。
さすが幼い頃から、此処で人をもてなすのが夢だった人々だ。
「陽子さん、これ、食べられる花、エディブルフラワーを使ってるんだよ。
紫のバーベナの花言葉は、後悔」
と笑顔で誠二は可愛らしい紫のバーベナと白い生クリームで飾られたケーキを出しているが。
いや、何故、後悔……。
花言葉はいらなかったのでは、と思いながら、葉名はお茶を飲んでいたが。
近々、花嫁になろうとしているのに、後悔にまみれたケーキを渡された陽子は、
「美味しそう、ありがとう」
と特にこだわることなく、微笑んで言っていた。
陽ちゃんのそういうとこ、とても好きだ……と葉名は思う。
葉名たちの話を聞いた陽子は、
「あー、あったんだー、盗聴器。
じゃあさ、それ、たぶん。
前、隣に住んでた人がつけたんだよ」
と笑って言った。
「……なんで隣に住んでた人がお前の部屋に盗聴器つけるんだ」
と白いティーポットを手に言う准を見上げて陽子は言う。
「前、隣の人と付き合ってたから」
そして、その隣の人は別れたときに引っ越してしまったらしい。
「そうか。
それであまり電波の飛ばないタイプだったんだね。
隣の部屋だったから」
と誠二が頷く。
「……なにやってたんでしょうね、私たち。
誰も聞いていないのに」
と呟く葉名の横で、
「聞かれてたら、もっと恥ずかしいと思うが」
と准がもっともなことを言っていた。
「まあ、いいじゃない。
楽しかったから」
とこれまた深く考えない誠二が軽くまとめて、やってきた瑠璃子たちの方に行った。
陽子と瑠璃子たちが話し出したので、准と葉名はなんとなく席を立つ。
二人でゆっくり植物園を見た。
「おっ、お前の野望のウンベラータじゃないか」
とウンベラータの前に来たとき准が笑った。
だが、実は結婚式のあと、100均で小さなウンベラータを見つけて買ったのだ。
ひょろひょろして小さなウンベラータだったが、葉名は窓辺に置き、せっせと水をやっている。
いつか此処のウンベラータに負けないくらい立派な木になることを夢見て。
水と土と緑の匂いに包まれた植物園で、葉名はバナナを見た。
あのとき思った。
准さんがバナナで、私がその下で守ってもらっているコーヒーの木。
でも、私は私で准さんを支えたい、と思いながら、チラ、と准を見ると、准もチラとこちらを見た。
准もバナナとコーヒーの木を見ていたので、きっと同じようなことを考えていたのだろうと思っていたが、准は、
「お前、きっと新しい家も散らかすんだろうな」
と笑顔で言ってきた。
……断定しないでください、と思う葉名に准は言う。
「いいよ。
言ったろう。
散らかっていくのは、新しい思い出が積み重なっていっている証拠。
また、二人で片付けよう」
思い出が積み重なって、家がいっぱいになって。
また片付けて、新しい思い出を重ねていって。
そうして、ずっと生きていく。
二人で――。
准がそっと口づけてきた。
「あーっ。
なにやってんだよっ、僕の植物園でーっ」
と遠くから誠二が叫んでくる。
准が振り返り叫び返していた。
「お前のものじゃない、俺のものだっ。
だって、葉名は一生俺のものなんだから、葉名の植物園も俺のものだっ」
だから、貴方は、どちらのジャイアン様ですか……。
そう思いながらも葉名は、『葉名は一生俺のもの』という准には反論せずに。
ただ、赤くなってうつむいた――。
完
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