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わたし、結婚するんでしょうか?
禁断の森
しおりを挟むアリスンたちが呑気にイカの塩焼きを食べている頃。
村の気のいいオヤジ、オースは家に帰り、納屋の地下を漁っていた。
オースの先祖は古くからこの土地に住んでおり、代々いろんなものを納屋や地下の貯蔵庫に溜め込んでいるのだ。
オースは麻の袋に入ったジャガイモなどの横にある棚を見た。
うーむ。
アリスン様のおっしゃる醤油というものがどんなものなのかよくわからないが。
秘伝のソースの入った壺とか、秘伝のソースのレシピとかなかっただろうかな。
そんなことを思い、探してみていたのだ。
年代物の古い石板とかあったような……と思いながら、ガサゴソと漁っていると、棚が揺れたせいか、棚の上にあった木の板が落ちてきた。
いたたた……とオースは頭を押さえ、それを拾う。
その板には、この辺りの古い文字が刻まれていた。
『禁断の森の魔王を起こしてはならぬ』
……禁断の森。
って、何処だ?
と思いながら、オースはその板を眺めていた。
「アリスン様~」
いつか境内に落ちていたイタリアンの店の開店チラシをアリスンは、ふと思い出していた。
手を振りやってくるオースの風貌がそこに描かれていたコックと似ていたからだ。
「オースさん。
今度はタコを炒めてみようと思うんですけど」
と外にノアが持ち出してきた大鍋の前からアリスンは笑いかけたが。
オースは、
「アリスン様、これを見てください。
実は、我が家の地下に秘伝のソースとかないかなと思って探してたんですが」
と言いながら木の板を渡してきた。
……いや、地下に秘伝のソースが埋まっていたとして、それ、食べれるのでしょうかね。
発酵していい具合になってたりするのでしょうか、と思いながら、アリスンはその板を見る。
「古い文字ですね。
えーと……」
とアリスンが言ったとき、頭の上から、王子と魔王様の声がした。
「『禁断の森の魔王を起こしてはならぬ』」
魔王様が小首を傾げて、
「禁断の森とは何処だろうな」
と言い、王子が、
「この近くに危険な森でもあるのではないですか?」
とその横で呟く。
「……いやあのー、あの森のことじゃないですかね?」
とアリスンは魔王の住んでいる森を指差した。
まあ、誰でも入っていけるし、何処も禁断な感じはしないのだが。
何故か売り買いできないようだし。
なにより、魔王様が住んでいる。
「いや、魔王様が住んでる森がそこ此処にあったりするのなら、違うかもなんですけど」
と言いながら、アリスンはその静かな森を見た。
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