ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ

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運命が連れ去られました

社長に対して、いつもそんな失礼なこと思ってんのか……

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 一方、レストランで大吾たちと向かい合って座るあかりは、ちょっと緊張していた。

 うーん。
 スーツとか着ると、やっぱり似てるな。

 そのとき、大吾がこちらを見て訊いた。

「おい、ストーカー鞠宮。
 なんにする?」

「あの、ストーカーやめてください」

 横で来斗が、何故、ストーカー? という顔していたからだ。

「いや、ストーカーとかつけて呼ばないと、ちょっと惑わされそうな可愛さだからだ」

「なにがですか」

「お前が。
 実は、お前、俺の好みなのかな」

 ひっ。
 なんなんですか、この人、真顔でっ、と姉弟そろって照れる。

 そこで、来斗がコソコソ言ってきた。

「この人、すごい人だな。
 社長と同じ顔だけど。

 社長はあの顔でも、性格的にグイグイ来そうにないから、実はモテないんじゃないかと思ってるんだけど」

 いや、社長に対して、仕事しながら、いつもそんな失礼なこと思ってんのか……。

「この人、この顔でグイグイ来るよ。
 俺が女なら、即落ちするね」
と来斗は大吾を絶賛する。

 そのまま来斗は、何故、ストーカーと呼ばれているのか、については追求してこなかった。

 どうやら、カンナが気になって、気もそぞろらしい。

 うわ~、大丈夫かなあ、と連れてきておいて、あかりは不安になる。

 来斗は照れてるけど、カンナさん、無表情だしな~。

 絶対、相手にもされてないよな~。

 来斗、本気になって、振り回されちゃったりしないかな。

 美女の顔でも眺めながら食事したら楽しいんじゃない? と思った姉心があだになってしまったかも、
と思うあかりの中の、弟の評価はとても低かった。
 


 一方、大吾もその頃、妹、カンナに小声で話しかけられていた。

「なんだかわからないまま、連れてこられたけど。
 この人たちは誰?」

「青葉の元カノとその弟だ」

 細かいことは気にしないカンナは、なんで青葉の元カノと会ってんの、とは訊いてはこなかった。

「じゃあ、大吾と弟さんとはなんの関係もないのね」

「弟は今、初めて会ったぞ」

「そうなの。
 実は、大吾が弟さんの方と付き合ってて、私に紹介しようとしている、というパターンも考えたんだけど」

「どうしていきなり、そのパターン考えてみた……」

「気になったから」
と表情も変えずにカンナは言う。

「……気になった? なんで」

 カンナは真っ直ぐ来斗を見て言う。

「すごいイケメン。
 今までの人生で出会った中で、一番好みかも」

「うーん。
 まあ確かに、顔は……。

 ストーカー鞠宮によく似て綺麗な顔だな。
 お前、こういうスッキリ系が好みだったんだな。

 ……ていうか、気に入ったのなら、そんな冷徹な顔で見下してないで、微笑めよ。

 理解されないぞ」

 お前はうちの母親か、寿々花さんか、と注意する。

 大吾の中で、彼女らは愛情の伝わりにくい人たちの代表だった。

「わかった。
 愛想よくするから、このあと、二人きりにして」

「……なんか不安しかないが、まあいいか」

 っていうか、お前と弟を二人きりにしたら、俺たちも二人きりになってしまうんだが、と思いながら、大吾はストーカー鞠宮を見る。

 ストーカー鞠宮は弟となにかコソコソ話していて。

 心配そうな顔をしたり、不安げにこちらを窺ったりしていた。

 初めて巣から顔出して外覗いてる子リスみたいだ……。

 そんな鞠宮あかりを見ながら、大吾は思っていた。

 妙なものだな。

 青葉と俺。

 顔はよく似てるけど。
 性格的には全然似ていない気がするのに。

 女の好みだけ一緒だとか――。

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