怪奇迷宮366 ~あやかし探偵と私~

菱沼あゆ

文字の大きさ
11 / 11
第二話「百点のとれる鏡」

テストの答え

しおりを挟む

 数学の小テストの日。
 学校に行くと、李都は机の上にお守りを置き、拝んでいた。

「すごい勉強した。
 かつてないくらい勉強した。

 仕事の合間にも、鏡に聞いた答えを暗記してて、偉いね、と女優さんたちからお菓子もらった」

「それはよかったね」

「あとはもう神頼みしかないっ」
と李都は祈っている。

「あんたが神頼みしてどうすんの?」
と言ったスマ子を何故か李都が、あっ、こらっ、という顔で見る。

 ……なんだろうな。

 そのスマ子は、ふう~っとらしくない溜息をついて椅子を引いた。

 彼女の机の上には、びっしり書き込んだノートがある。

「そもそも覚えらんない~。
 なんで~? 歌の歌詞とか、すぐ覚えられるのに~」

「じゃあ、替え歌みたいに、歌に乗せて覚えてみたら?」
と李都に言われ、

「じゃあ、今から歌うわっ」
と祈るように手を合わせ歌い出したスマ子は入ってきた数学の教師に、

「うるさい、新井っ」
と早速、怒られていた。
 

 
「どうだった?」
 数学の時間が終わったあと、李都が微妙な顔をしていたので、なづなはそう訊いてみた。

「予想、外れた?
 結構当たってたと思うけど」

「うん。
 みんなとやったとこはできたよ。でも……」

 チラ、と李都は、問題用紙を見る。

「最後の問題なんだけど」
「ああ、あれは鏡の前でやらなかったね」

「僕はやったんだ。
 一人で残ってたとき、でも、なんか答えが違う気がして――」

 鏡に習ったのと違うのを書いてしまった、と李都は浮かない顔で言う。

「どれだ、見せてみろ」
 聞いていたらしい宮本が立ち上がり、李都が問題用紙の方にしていた計算を眺める。

「これを書いたのか? 合ってるじゃないか、李都」
 ああ、いや、生田、と宮本は言い直す。

 鏡の前に集まっている間、みんなが李都と呼んでいたので、つられたのだろう。

「李都でいいよ」

「いや、いい。
 俺は他人とあまり距離をつめたくない。
 その方がいい関係でいられるから」

 確かに人と人との関係は、近くなりすぎたら問題も起こりがちだ。
 だから、適切な距離というのは必要だろうが。

 宮本くんは、ちょっと距離を置きすぎているような気もするなあ、となづなは思う。

 でもまあ、人によって、ちょうどいい距離って違うだろうからな~。

 私も霊との距離を測り兼ねてるし、ととりあえず、今、一番身近な霊である『零』を見た。

 今日は気を抜かずに、ちゃんと、なづなの影をやっているようだった。

「これで合ってる。
 すごいじゃないか、生田」

 鏡が映したという答えを見せてみろ、と宮本は言う。

 これだよ、と李都は、鞄からノートを出してきた。

 そこに丁寧に書かれた文字を見て、うん? と宮本は首を捻った。

「ほんとだ。違うな。
 それほど難しい問題じゃないはずなんだが」

「それは宮本にとってでしょう? 私、ぜんぜんわかんなかったっ」
と机に倒れていたスマ子が言う。

「あっ、でもさっ」
 スマ子は、突如、ガバッと起き上がってきた。

「合ってるかどうかは知らないんだけど。
 今回、はじめて半分以上、なにかは書けたんだよっ」

「……なにかは」
と繰り返し、宮本は渋い顔をする。

「どうしようっ。
 先生に褒められるかも~っ」

「褒められるわけないだろ」
とつれないことを言いながら、宮本は李都のノートとテストの問題を眺めていた。
 
 

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?

無色
恋愛
 子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。  身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。

処理中です...