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第二話「百点のとれる鏡」
テストの答え
しおりを挟む数学の小テストの日。
学校に行くと、李都は机の上にお守りを置き、拝んでいた。
「すごい勉強した。
かつてないくらい勉強した。
仕事の合間にも、鏡に聞いた答えを暗記してて、偉いね、と女優さんたちからお菓子もらった」
「それはよかったね」
「あとはもう神頼みしかないっ」
と李都は祈っている。
「あんたが神頼みしてどうすんの?」
と言ったスマ子を何故か李都が、あっ、こらっ、という顔で見る。
……なんだろうな。
そのスマ子は、ふう~っとらしくない溜息をついて椅子を引いた。
彼女の机の上には、びっしり書き込んだノートがある。
「そもそも覚えらんない~。
なんで~? 歌の歌詞とか、すぐ覚えられるのに~」
「じゃあ、替え歌みたいに、歌に乗せて覚えてみたら?」
と李都に言われ、
「じゃあ、今から歌うわっ」
と祈るように手を合わせ歌い出したスマ子は入ってきた数学の教師に、
「うるさい、新井っ」
と早速、怒られていた。
「どうだった?」
数学の時間が終わったあと、李都が微妙な顔をしていたので、なづなはそう訊いてみた。
「予想、外れた?
結構当たってたと思うけど」
「うん。
みんなとやったとこはできたよ。でも……」
チラ、と李都は、問題用紙を見る。
「最後の問題なんだけど」
「ああ、あれは鏡の前でやらなかったね」
「僕はやったんだ。
一人で残ってたとき、でも、なんか答えが違う気がして――」
鏡に習ったのと違うのを書いてしまった、と李都は浮かない顔で言う。
「どれだ、見せてみろ」
聞いていたらしい宮本が立ち上がり、李都が問題用紙の方にしていた計算を眺める。
「これを書いたのか? 合ってるじゃないか、李都」
ああ、いや、生田、と宮本は言い直す。
鏡の前に集まっている間、みんなが李都と呼んでいたので、つられたのだろう。
「李都でいいよ」
「いや、いい。
俺は他人とあまり距離をつめたくない。
その方がいい関係でいられるから」
確かに人と人との関係は、近くなりすぎたら問題も起こりがちだ。
だから、適切な距離というのは必要だろうが。
宮本くんは、ちょっと距離を置きすぎているような気もするなあ、となづなは思う。
でもまあ、人によって、ちょうどいい距離って違うだろうからな~。
私も霊との距離を測り兼ねてるし、ととりあえず、今、一番身近な霊である『零』を見た。
今日は気を抜かずに、ちゃんと、なづなの影をやっているようだった。
「これで合ってる。
すごいじゃないか、生田」
鏡が映したという答えを見せてみろ、と宮本は言う。
これだよ、と李都は、鞄からノートを出してきた。
そこに丁寧に書かれた文字を見て、うん? と宮本は首を捻った。
「ほんとだ。違うな。
それほど難しい問題じゃないはずなんだが」
「それは宮本にとってでしょう? 私、ぜんぜんわかんなかったっ」
と机に倒れていたスマ子が言う。
「あっ、でもさっ」
スマ子は、突如、ガバッと起き上がってきた。
「合ってるかどうかは知らないんだけど。
今回、はじめて半分以上、なにかは書けたんだよっ」
「……なにかは」
と繰り返し、宮本は渋い顔をする。
「どうしようっ。
先生に褒められるかも~っ」
「褒められるわけないだろ」
とつれないことを言いながら、宮本は李都のノートとテストの問題を眺めていた。
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