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第八話「旧校舎」
理科準備室
李都たちは旧校舎に撮影に来ていた。
「なんだ、李都。
キョロキョロして」
自分の学校だろ?
と廊下で裕司に言われる。
「こっちに来ることないから」
旧校舎の南に今の新校舎ができているが。
その新校舎もすでに結構古い。
生徒の人数が多い頃は、旧校舎も新校舎も両方使っていたらしいのだが。
人数が減って、今は旧校舎の方は使っていない。
生徒は立ち入り禁止になっているが、そのまま崩さずに残してあるのは、こちらにも結構物が置いてあるので、先生はとりに入ったりしているのかもしれない。
李都は教室の表示プレートを見上げて思う。
『理科準備室』か。
昔はザックリだな。
今は『生物準備室』とか『化学準備室』とか細かく分かれているけど。
準備室は開かなかったが、理科室の方はそんなに危険な物もないのか、鍵は開いていた。
カラカラと引き戸を開け、覗いてみる。
理科室って感じの匂いがするな。
この間まで使っていたかのように、いろんな物がそのままあった。
でも、ここには人体模型はないな。
もしかして、あの動くやつ、こっちから持ってきたとか――?
準備室とつながっているドアには小さなすりガラスがはまっていたが。
その向こうで誰かが動いたように見えた。
いやいや。
スタッフはみんな向こうにいるし。
準備室は鍵かかってるようだし。
誰かが入ってるとかありえないんだけどっ。
……いや、この理科室から通じているドアは開いてるのかも。
でも、確かめに行くの怖いな、と思って見ていると、裕司がやってきた。
「なにやってんだ? 旧校舎探検か?
旧校舎って言うから、木造かと思ったのに、違うのなー」
そう言いながら、背中に覆い被り、一緒に理科室の中を覗いてくる。
うざい、と李都は手でその額を払いながら、すりガラスの向こうに誰かがいると裕司に告げた。
「ここで撮影があると聞きつけてやって来た野次馬か、誰かのファンだったりして」
「誰のファンだよ」
「うちのファンはお行儀がいいから……
お前の?」
と言ったあとで、裕司は、
「違うか。
お前のファンって、ばあさんとかが多いもんな。
うちの近所のばあさんも、李都くん、孫みたいで可愛いってよく言ってる」
と笑う。
「っていうか、気になるんなら、開けてみろよ」
「嫌だよ。
なにが出てくるかわかんないじゃん」
そう李都が言うと、わかった俺が開けてやる、と裕司は言う。
「おばあさんでも霊でも大丈夫だ。
俺も老人受けいいし。
霊は全然見えないしな。
怪奇番組で女子たちが泣き叫んだり、頭が痛いって言ってる中、平然としてたら、第二弾のとき、呼ばれなかったくらいなにも感じないから」
裕司はさっさと理科室の中に入っていった。
「あんなの集団ヒステリーだよ」
そう言いながら、李都もついて行く。
自分が言い出しっぺなのに、裕司だけ行かせたら悪いなと思ったのだ。
「なんだよ、お前も霊とか信じてないのかよ」
と笑いながら、裕司は迷いなくドアを開けようとした。
その背に向かい、李都は言う。
「『僕が裕司を見たのはそれが最後だった――』」
やめろ莫迦っ、と振り返りながらも、裕司はノブを捻ったが。
「あれ?」
と今捻ったノブを見る。
「鍵かかってるぞ」
「じゃあ、廊下側もここもかかってるのか」
「中にいる奴、どうやって入ったんだよ」
いや待て、と裕司はこちらに向かい、手を突き出してきた。
もう片方の手で顔の右半分を隠して言う。
「『全員黙れ。
俺に推理させろ!』」
サマになってるな……。
そういや、こいつ、昔、そんな決めゼリフのある中学生探偵みたいなシリーズやってたな。
「お集まりの皆さんっ」
「僕しかしないけど。
あと、今事件はじまったのに、もう解決編?」
とツッコミを入れるもスルーされる。
「実はこの密室には、誰も知らない、第三のドアがあったのですっ」
「……なにその、犯人は超能力者でテレポートしましたとか。
飛行機で飛んで逃げましたみたいなの」
結局、扉は開かなかったが、二人で耳を澄ませてみると、中からカタカタ……と聞こえてきた。
「ネズミじゃないか?」
「さっきの影も?
どんなサイズだよ。
立って歩いてるの? そのネズミ」
「おーい、李都ー、裕司ー。
何処行ったー?」
と仲良いスタッフの声がする。
はーい、と二人で返事をして、そのまま撮影に戻っていった。
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