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「ふっかつのじゅもん」
イチの探偵事務所
しおりを挟む乃ノ子たちが事務所に入ると、
「こんにちは」
と先に着いていたらしいゴミ出しサラリーマンがソファから立ち上がり、頭を下げてきた。
後藤と名乗る。
「すまないな。
仕事中じゃないのか」
と後藤にイチは言ったが。
後藤は白い紙袋を差し出しながら言う。
「社長が、早くイチさんに持ってってやれと言うので」
社長って……組長かな、と思っていると、あのカセットといっしょにゲーム機まで出てきた。
「これ、社長のなんですが。
貸してくれました」
と言いながら、後藤が事務所のテレビにセットしはじめる。
組長、ゲームするんですね、と思いながら眺めていると、ちょっとハードボイルドな音楽が流れ、荒い画像のオープニングが流れはじめた。
イチとふたり画面を見ていたが。
「……全然違うじゃないか」
「違うじゃないですかっ」
とふたりで叫んでしまう。
似たような街が出てくるのだが、ちょっと昔の外国の街風で、夢に出てくる街とは違っていた。
闇雲にあらくれ者が襲いかかってくるところは、そのままだったが。
こちらはちゃんとしたミステリーらしく、ストーリーがあった。
「……ただ敵を倒すだけのゲームかと思ってました」
乃ノ子は画面を見つめ、茫然と呟く。
「もしかして、あの夢とこのゲーム、全然関係ないんじゃないですか?
やってもらえなかったゲームの呪いじゃなかったんですか」
とイチに言うと、
「そのようだな。
っていうか、よく考えたら、伯父さん、中古のゲーム屋で買ってきたんだろ?
一度は誰かに遊んでもらってるわけだから、遊んでもらえなかった無念な怨念とかなかったもかれしないな」
とイチはあっさり、最初の意見をひるがえした。
そこで、ゲームをやってくれていた後藤が手を止め、振り返り言う。
「結構面白いですよ、このゲーム。
試しに店の奴が一度やったんですが。
結構進んだらしくて」
はい、これ、とメモを渡された。
「そこまでのパスワードです」
「ふっかつのじゅもんだ……」
とイチとふたり、謎の暗号みたいに見える平仮名の羅列を見つめて呟いた。
そのとき、後藤のスマホに電話がかかった。
はい、と出た後藤が青ざめる。
「どうかしたのか?」
とイチが訊くと、
「昨日から、うちの若いのがひとり行方不明らしくて。
ちょっとヘマやったかもしれませんね。
……すみません。
このゲーム機お貸ししますので」
ちょっと行ってきます、と後藤は出ていこうとする。
「大丈夫か?」
とイチが問うと、後藤は足を止め、振り返ってスマホを操作した。
イチのスマホに着信する音がして、イチが見る。
「消えたの、そいつなんです。
イチさん、いろんな方面に顔が広いから。
もし、なにか情報あったらお願いします」
いろんな方面……。
あやかし方面ですかね?
あと霊とか、と思いながら、乃ノ子もイチが画面を開くのを覗いた。
「見つけてくださったら、ゲームやらない奴なんですが。
やらせて、イチさんに大量にハートを送らせます」
そう約束して、後藤は急ぎ出て行こうとしたが、イチと乃ノ子は同時に声を上げていた。
「待て、後藤っ」
「後藤さん、待ったーっ!」
えっ? と後藤が振り返る。
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