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完璧だったはずの男
シンデレラよりすごい
目が覚めても魔法は解けなかった。
シンデレラよりすごい、と日子は綺麗なおのれの部屋を眺めながら思った。
部屋に差し込む日差しもいつもより明るい感じがする。
今日、私は生まれ変わったんだっ、と思った日子はスマホを手に、誠孝にメッセージを入れた。
起きたら微動だにせず、知らせろ、と言われていたからだ。
折り返し電話がかかってくる。
「おはよう。
着替えたらすぐにうちに来い。
余計なことはするなよ」
……信用ないな。
私がピクリとでも動いたら散らかると思っているようだ。
そんな、天からなにかが降ってくるみたいに物やゴミが降ってはきませんよ、と思ったが。
でも、自分でも、ちょっとそんな気がして、日子は、そろっとベッドから出てみた。
なんとなく上を見たが、とりあえず、なにも降ってくる様子はなかった。
それにしても面倒見のいい人だ。
ここに引っ越してきてよかったな。
沙知見さんがただの厳しい邪悪な代理店の人ではないとわかって、と日子は思う。
いや、元より邪悪なわけではなかったのだが。
激しく攻撃されるので、悪魔のように見えていた。
綺麗な顔で表情がないのが、怖かったし。
だが、昨日、高道とゲームをやっていた誠孝が、無表情のまま、指先だけがコンローラーのボタンを激しく連打していたのは可笑しかった。
自分もやってるときは、呑気に対戦相手を眺めている余裕はないので気づかなかったのだが、きっといつもそうなんだろうなと思い、日子は、ぷっと笑た。
笑ったことが誠孝にバレたら、それこそ悪鬼のような目で睨まれそうだなと思いながらも。
「お前が部屋でご飯を作ると、絶対散らかすからな」
と言う誠孝に美しい部屋で美味しい朝食をいただき、
「頑張れよ」
と仕事のときには絶対にないことだが、
まあ、敵なので当然なのだが……、
励まされ。
「はいっ」
と日子は駅に着いたという裕子たちを迎えに行った。
とりあえず、みんなでランチをすることになっていたからだ。
裕子たちと合流し、楽しくランチをして、マンションまで戻ると、東城が入り口に立っていた。
「おかえり、日子。
友だちか?」
「はい、会社のお友だちと先輩なんです」
と笑顔で日子が言ったとき、裕子と郁美が後ろから日子の腕を引く。
「誰なんですかっ、この素敵な人はっ」
「おかえり、日子ってなにっ?
私もおかえり、郁美って言われたいっ」
と二人が小声で叫ぶ。
「……ここに住めば言ってもらえるのではないかと」
「住むっ、住むわっ、私っ」
今、空き部屋ありません……。
「新人の私の稼ぎではっ。
貯金もないしっ。
親に借りてきて、ここに住みますっ」
だから、空き部屋、今、ありません……。
「えーっ。
日子の高校の先輩なんですかーっ。
じゃあ、頭もいいんですねーっ」
郁美たちは、やたら盛り上がり、警備員室のお客も入れられるスペースにも入れてもらい、
「わあ、警備員室って、こんなになってるんですね~っ」
と喜んで。
警備員室を見ただけで満足して帰っていった。
「じゃあ、また遊びに来ますねっ、東城さんっ」
「私もまた来ます~っ」
楽しげな二人の姿が消えたあと、一緒に見送っていた東城がこちらを見下ろし言ってきた。
「……お疲れ」
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