昨日、あなたに恋をした

菱沼あゆ

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恋か純愛かストーカーか

コタツからそのまま出てきたような格好で

 

 これは恋だろうか。
 いや、気のせいだ。

 あれはストーカーだろうか。
 いや、気のせいだ。

とそれぞれが悩んだりしながらも、仕事が忙しかったので、すれ違ったまま、バタバタと数日過ごした。

 あっという間に、日子たちの取材の日が来る。

 よりにもよって、その日寝過ごした日子は会社にタクシーで乗り付け、

「いや~、寝過ごしちゃって、すみません~っ」
とペコペコしながら、自分の部署へと駆け込んだ。

 仕事の邪魔になってはいけないので、そちらのいい時間でいいです、と言われ、始業前に少し取材を受けることになっていたのだ。

 何故か裕子たちも取材を覗きに早くに来ていたようだった。

「……日子さん、髪、やってあげますよ」
と裕子が日子を一目見るなり言い、後ろから髪をとかしてくれた。

 日子のところの部長と廊下からやってきた誠孝が、明らかに寝起きな日子を見て、

「どうした、コタツからそのまま出てきたような格好で」
と言う。

「沙知見さん、うちコタツありません」
と苦笑いして日子が言うと、

「そうだったな」
と誠孝が言う。

 そうだったな!?
という顔をみんなしていたが、誠孝は特に気にする風にもなく、カメラを手にした石田と名乗る恰幅のいい男と話していた。



 部長からはじまって、みんな順番に軽くインタビューされ、日子は仕事をしながら、それを眺めていた。

 やがて、日子の番になる。

「仕事中の横顔もいいですね~」
と石田たちに照れたように言われたが、日子は、

 ……いや、ほんとうに?
と疑念を抱く。

 絶対、目が血走って、ヤバイ顔をしているに違いない、と思っているからだ。

 よく見るオフィスのイメージ画像とかみたいに、化粧も服装も乱れなく、爽やかな微笑みでパソコンを叩くとか、絶対無理だと思っている。

 微笑んでいる暇があったら、もう一回チェックした方がいい。

「いつも素敵な楓さん、おしとやかなイメージなんですけど。
 若手の中では、中心になってお仕事されてるみたいですが。

 後輩をビシッと叱責するなんてこともあるんですか?」

 そう石田と来ていた広報の女の子に微笑んで訊かれた。

 日子は照れて笑いながら言う。

「いや、そんな中心になってやってるわけじゃないです。

 それに、後輩をビシッと叱るとか。
 そういうのも苦手ですし。

 大きなミスをした人をボコボコにするとか基本、ないです」

 基本ないっ!?
ということは、あるっ?
という顔で、取材の人たちが見る。

 だが、
「でも、楓さんが声を荒げて叱ってるところとか、想像がつきませんね~」
と石田が言って、みんな笑った。

 裕子も笑っていた。

 そんな日子を見たことがないからだ。

 部署の後輩、道中みちなかは笑っていなかった。

 見たことがあるからだ。

 取材陣の後ろにいる誠孝は驚いてもいなかった。

 ゲームのコントローラーを握った状態の日子を知っているからだ。

 だが、そいつ、熱が入りすぎると、ゾンビに向かって、
「死ね死ね死ね~っ」
と叫んでるときありますよ、とは武士の情けか言わなかった。



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