昨日、あなたに恋をした

菱沼あゆ

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恋か純愛かストーカーか

それがすべてのはじまりだった――



「お疲れ様です」

 エレベーターで一緒になった誠孝に、日子はそう挨拶しながら、予測変換でないから、

 お疲れ様ではゴザイマセン、とか出てこないからよかった、と思っていた。

 昼間の裕子たちの話を思い出しながら、日子は誠孝と話す。

「思っていたより、みんながありのままの私を受け止めてくれてて、ビックリしました。

 汚い部屋を見せるのが恥ずかしいと思うのは、私の変なプライドだったんですかね?」
と言って、

「いやそこは、変なプライドとかじゃないだろ。
 きちんとしろ」
と言われてしまったが。

 そこで誠孝の目が下を見る。

 日子が肩からさげているショップの紙袋を見ているようだった。

 動くたび、ガサガサ言うからだろうか。

 いや、違うな……。

「またなにか買ったのか」

 買ってはいけませんか……?

「また部屋に物を増やそうとしてるだろ」

 心を入れ替えたんじゃなかったのかと日子は言われる。

「いえいえー。
 ちょっとした部屋着が欲しくて買っただけなんですよ」
と言い訳しながら、日子は紙袋の中からその部屋着を出して見せた。

「そのまま宅配とか取りに行けるルームウェアらしいです」

 だがその、もふもふほどではない、もふっとした白と落ち着いたピンク色の部屋着を見た誠孝は、

「……やめとけ」
と言う。

「誇大広告にだまされるな。
 その部屋着は人前ではアウトだ」

 じゃあ、と言って、エレベーターを降りた誠孝は部屋に入っていってしまう。

 ……なにがアウトなんだろうな、と日子は廊下でひとり、ちょっとパジャマっぽいその部屋着を見つめた。




 部屋、今日も片付いている。
 素敵だ、
と日子は満足げにおのれの部屋を見回した。

 物が少ないと、やはり、すっきりしていい。

 まあ、今、もふっとしたルームウェアというアイテムがひとつ増えてしまったが……。

 でも、そうか。
 これ、やっぱり、人前に着て出られる感じじゃないのか。

 上になんか羽織っでも駄目かな~?
と思いながら、新品の匂いがするそのルームウェアに着替えてみる。

 すごい肌触りもいいな~。

 これ着て、沙知見さんとご飯食べたり、ゲームしたり、寝落ちしたりしたら、楽に過ごせそうなんだけど。

 宅配業者さんの前に出るのも駄目なら、沙知見さんの前に着て出るのも駄目だよね、
と思いながら、日子は、すぐにガサガサと紙袋やタグを片付ける。

 前ならそのまま隅に置いたりしていたのだが、最近は、すぐに片付ける習慣が身についていた。

 すごいなー。
 沙知見さんのおかげだなあ。

 クローゼットにおさまりきらない服が部屋の中に、あふれてたのに。

 今はそのクローゼットの中までスッキリしてるし。

 すごい進歩だ、と日子は感激する。

 いつ、氷河期とか来るかもわからないので、迂闊うかつに服は捨てられないと思っていた私がっ。

 ちなみに、同じ理由により、使用期限が過ぎた薬も捨てられない。

 いやまあ、置いておいても使えないとは思うのだが……。



 風呂に入った日子は、ダラッとスマホを眺めていた。

 ちょっとお湯でのぼせていたのだろうか。

 いや、キッチンもピカピカになったので、ちょっとは興味が湧いていたのだろうか。

 普段はいいなと思いながらも買わないような、黒い円形の素敵なカッティングボードをぽちっと買ってしまった。

 ……そして、それがすべてのはじまりだったのだ。




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