愛はないですが、地の果てからも駆けつけることになりました ~崖っぷち人質姫の日常~

菱沼あゆ

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廃墟のような城に到着しました

……近くまで迫っていました

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 少しの従者を残し、コリーたちは帰っていった。

 アイリーンたちは城の中を見て回る。

 広いが蜘蛛の巣だらけの厨房。
 鎧の飾ってある部屋。

 だだっ広い渡り廊下には山の風が吹き抜けている。

「メディナ、どこの部屋を使う?

 私、ここにしよっと。
 庭にすぐ出られるから」

 中庭に面した一階のこじんまりとした部屋をアイリーンは選んだが、

「……上の階にしてください。
 物騒ではないですか」
とメディナに駄目出しをくらう。

「刺客とかなら、どこからでも来るわよ」

「刺客、来ますかねえ?
 こんなところまで」

 しかも、8888番目の妃候補だ。

「私はこんな山の中だから、危険なケモノなんかが……」
とメディナは言いかけ、自分で、

「来ませんよね、こんなところまで」
と言って笑う。

 石造りの広い城の中を一通り見て回ったあと、みんなで片付け、今日、寝られるよう、シーツを洗った。


 従者たちが庭にあった石のテーブルを綺麗にしてくれたので、そこでお茶にすることにした。

 従者の人たちも一緒にと思ったのだが、緊張するから、と遠慮されてしまったので、彼らの分は別の場所に用意する。

「一通りのお道具持ってきておいてよかったです」

 用意のいいメディナは小ぶりなカゴの中からお茶のセットを出してきた。

「まあ、ここの食器なども綺麗にすればいけそうですけどね。
 というか、年代物のいい食器がそろってそうですよ」

 そこで、メディナはふと気づいたように、眉をひそめて言う。

「ちゃんと食料とかとどきますかね?」

「さあ?
 8888番目の妃候補だものね。

 コリーですら、王様に報告したら、存在を忘れてそう」

 そう言ってアイリーンは笑った。

「いざとなったら、二人で街に買いに下りればいいわ」

 そうですねえ、とメディナも笑う。

 下りるのは大変そうだが、異国の街や市場を想像すると、ワクワクしてくる。

「それにしても、8888人のお妃候補とは。
 コルバドスの王様はよくばりなんですねえ」

 一生かかっても、そんなにお相手できないでしょうに、とメディナは言う。

「別によくばりで娘たちを集めているわけではないんじゃない?

 美しい姫を婚姻させることで、国同士に結び付かれては困るし。
 賢い娘が賢い王を産んでも困るし」

「はあ、そんなものなんですかね?
 私は単に、欲張りなんだと思いますよ。

 次々、領地を広げてってる王様ですしね」

 まあ、別にどっちでもいい。
 その王様と会うことなんて、きっとないから。

 そうアイリーンは思っていた。

「それより、見た?
 図書室にすごいたくさん本があるの。

 ここの国の本は読んだことがないものばかり。
 読んでお昼寝しよっと」

「えっ? 昼にも寝るんですか?
 うるさいと言われませんか」
と言うメディナに、

「そうねえ。
 でも、大丈夫よ。

 かなり移動したし、会わないんじゃない?」
とアイリーンが言ったその頃、コルバドスの王、エルダー一行は近くの国境くにざかいで狩りをしていた。

 友好国の重鎮たちをもてなすためだ。




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