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38.少しお時間よろしいでしょうか
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数日もしないうちに裁判は開かれ、王侯貴族の意思の通らない場所で誘拐事件の実行犯たちは処罰された。貴賓席ですべてを傍観していた王と王妃の後ろに控え、私は共和国への第一歩を目の当たりにした。
今日ばかりは山のような書類も、ひっきりなしに走ってくる伝達官もいない。最終判決が下された今日から、王妃の生誕祭である。
そんなに大きくしなくていい、と言った王妃に王は何を言うかと反発し、最低でも一週間は開かねばと息巻いた。予算的には一週間お祭り騒ぎにするくらい余裕はある。問題はそのあとだ。たまりにたまった書類を王にさばききれるとは到底思えない。これもまた、王家から分化すべき業務だろうが時期尚早だ。
とにかく、一週間分の仕事を24時間以上王妃と会うこともなくこなせるのかと半ば脅し気味に言えば、わかりやすくしゅんと頭を抱えた。
『レオ様、生誕祭はわたくしに取り仕切らせてもらいたいとノアに言ってありますの。一週間だなんて…陛下はわたくしに過労になれとおっしゃるのですか』
この一言が決め手となり、王はせめて三日、と妥協案を出した。一日目から二日目は王都からその近郊へ視察がてらパレードを行い、三日目にはメインストリートで出店を許可し、そこをお二人で歩かれるという。三日目の夜はもちろんクリスタルパレスでのダンスパーティーも予定されている。ただの雑談に見えるそれで、三日分の行程が決まっていくのだから不思議だ。
こうして決まった生誕祭は滞りなく進んでいく。
視察では回る場所が多くそんなに時間が取れない中で、王妃にその賢人さを見せつけられた。土地それぞれのデータがすべて頭に入っているのか、簡単な説明を受けながらも宦官たちが気づけなかったものを鋭く指摘し、結果より効率的な仕様に変更されていった。どこからそんな考えが浮かんでくるのか、不思議で仕方ない。そんな方が王に対して子供のような癇癪を起したことが信じられないくらいだ。
「ノア、ここが少しわかりづらいのだけれど」
「はい、それは…」
こうして度々、王妃は私に聞いてくる。その度に厚く深い壁を感じずにはいられない。それもそうかと納得してしまうほどに、私は彼女を試したのだ。昔から警戒心がイチミリもなかった王は国を立ち上げるまでに何度も騙された。それを本人が深刻にとらえていないから問題だった。国のトップに立った今、その背中には子供だった頃とは比べ物にならないほど重いものがのしかかっている。私がしっかり支えなければと何事にも疑いを持つようになった。
けれど王妃に関しては少しやりすぎであったことも否めない。おそらく、王の隣というポジションを奪われるとでも無意識に思ってしまったのだ。何と幼稚だろう。
「リリー様。少しお時間よろしいでしょうか」
「ええ、いいわ」
王が生まれ故郷の民衆に囲まれているのをいいことに、私は王妃を領主家のガゼボへと案内した。お付きの侍女は離れて控えさせ、用意させた紅茶をサーブする。
「身勝手なお願いとは心得ております。…どうか、わたくしめをお許しくださいませんか」
「…え?」
「何度もリリー様のお力を見ようとしたこと、越権も甚だしい行いであったと反省しております。申し訳ございませんでした」
「…あら、もうよろしいの? わたくしは合格?」
優雅にティーカップを傾けながら、薄い唇からは鋭い皮肉がこぼれる。私や王とは違う、生まれながらの貴族がそこに座っていた。
「滅相もございません」
「そう。…よかった。まだ続いているのかと、毎日緊張で肩が凝るの。今日は肩をもんでもらわなくてもよさそうね」
つばの広い帽子を脱ぎ、ふわりと王妃は笑った。
「紅茶のおかわり、いただける?」
「…喜んで」
王妃は王に「あなたほど口下手な方はあったことありませんわ」と言っていた。けれどそれは王妃もではないだろうか。空のティーカップに二杯目を注ぎながらふとそう思った。
「ふふ、ありがと」
軽く頭を下げて後ろに控える。なんの疑いもなく私の淹れた紅茶を飲むこと自体、最大の信頼の現れであり、とどのつまり、私のことはとっくに許してくれていたのだ。
こんな高貴な人間を試していたのかと、畏れ多すぎて頭が上がらなかった。
「時に、ウィンディ―・ポロネフ男爵令嬢をご存じ?」
「…はい。身柄を拘束しております。いかようにも処罰できますが…、恐れながらストラテの司法は使えません」
「ええ、この国で起きたことではないものね。…そうね、たしかシルバーが侍女を何人か送ってほしいと言っていたのではなかったかしら」
「二日前に書簡が届いております。条件は何も付けぬから早く、と」
「ちょうどいいわね。彼女を送るといいわ。身分はそうね…わたくしの侍女のお気に入りとでもしておきましょうか。シルバーなら出自を問うこともないでしょう」
「御意」
涼しい顔して、ウィンディーとかいう令嬢にとって残酷なことを、さもなんでもないかのように言う。容姿の美しさと相まってなんとも魅惑的な姿だ。
一国の王妃ともなろうお方の汚点となりうる芽は摘んでおいた方が良いと、王妃がストラテに入国したと同時に彼女の身柄を拘束した。聞けば彼女はもとは平民、ポロネフ男爵の養女だった。平民としては美しい容姿の生まれだったからとポロネフ男爵が拾ったという。あわよくば皇子のどちらかと婚約させ自らは出世しようと目論んだ結果だった。
利用された駒に過ぎないとはいえ、令嬢も何も知らなかったでは済まされない。しかし、手を下すべきは王妃と考えていた。いつ言い出したものかとタイミングを見計らっていたが、王妃の方が一枚上手だったらしい。ちなみに男爵の方はお家取り潰しの上労役が課せられた。労役といっても死刑と変わらないほどの劣悪な環境での鉱夫だ。
「妬けるねえ、僕は忙しかったというのに」
「あら、レオ様。こちらでご一緒しましょう? ノア、お願い」
「喜んで」
話がひと段落ついたのを見計らったように王はガゼボに顔を見せた。
「なんの話をしていたんだい?」
「先ほどの資料のことですわ。少しわかりずらかったので、意図的に何かを隠したい人が作成したものではないかと思いまして。思い過ごしならいいのですけれど、一応ノアに見てもらっていたのです」
「ああ、あれね。さっき話してきたよ。…わかってくれたようだから明後日あたりにまた資料が挙げられるんじゃないかな」
「まあ、仕事の早いこと」
「そりゃあもちろん。リリーと長く一緒にいたいからね」
王に紅茶をサーブしたところで、私は侍女のところまで下がった。ウィンディ―令嬢の処遇の指示とこの後の行程を確認する。
内ポケットの懐中時計に目をやって、おや、と首を傾げた。さっきも同じ時間を指していたような気がする。
「おい、今何時だ」
フットマンのひとりに聞く。
「14時半でございます」
背中に冷や汗が流れる。私の懐中時計はきれいに30分前を指している。
「すぐに出立の準備をしろ!」
使用人たちをばたつかせ、私はガゼボへ走った。
「おや、ノア。何か焦っているのかい?」
にやにやと二人して似たような笑みを浮かべるのを前にして、我慢ができるわけなかった。
こいつら、気づいてたな。
近くに誰もいないことを確認し、大きく息を吸った。
「時間が押してる。馬車で酔いたくなかったら急いで乗れ!」
「僕は大丈夫だけど、リリーが酔ってしまうのは嫌だから急ごうか」
「あら、レオ様。わたくし、乗り物には強くてよ」
「なら何も問題ないな。ゆっくり行こうか。そうだな、互いの好きなところを言うたびに一歩進むというのはどうだい」
「陛下!!」
このバカップルが。おっとりしすぎていることに怒りを覚えているのか、自分に相手がいないから羨ましさで怒りを覚えているのか、もはやわからない。ただただ腹立たしい。
「レオ様。侍女たちが酔ってしまってはかわいそうですわ。急ぎましょう」
「わかったよ」
なんとか馬車に乗り、全速力で次の町に向かう。その道中も婚約中であるというのに熱々な二人を見せつけられることになってしまった。この役目を誰かに丸投げしたくなってくる。とはいえそんなことはできないから、トランクから書類を出し、王に投げる。
「酔わないのですよね? 少しでも片付けておきましょう?」
頬を膨らませて黙々とサインし続ける王を見、ようやく私の心は落ち着いた。 ≪終≫
今日ばかりは山のような書類も、ひっきりなしに走ってくる伝達官もいない。最終判決が下された今日から、王妃の生誕祭である。
そんなに大きくしなくていい、と言った王妃に王は何を言うかと反発し、最低でも一週間は開かねばと息巻いた。予算的には一週間お祭り騒ぎにするくらい余裕はある。問題はそのあとだ。たまりにたまった書類を王にさばききれるとは到底思えない。これもまた、王家から分化すべき業務だろうが時期尚早だ。
とにかく、一週間分の仕事を24時間以上王妃と会うこともなくこなせるのかと半ば脅し気味に言えば、わかりやすくしゅんと頭を抱えた。
『レオ様、生誕祭はわたくしに取り仕切らせてもらいたいとノアに言ってありますの。一週間だなんて…陛下はわたくしに過労になれとおっしゃるのですか』
この一言が決め手となり、王はせめて三日、と妥協案を出した。一日目から二日目は王都からその近郊へ視察がてらパレードを行い、三日目にはメインストリートで出店を許可し、そこをお二人で歩かれるという。三日目の夜はもちろんクリスタルパレスでのダンスパーティーも予定されている。ただの雑談に見えるそれで、三日分の行程が決まっていくのだから不思議だ。
こうして決まった生誕祭は滞りなく進んでいく。
視察では回る場所が多くそんなに時間が取れない中で、王妃にその賢人さを見せつけられた。土地それぞれのデータがすべて頭に入っているのか、簡単な説明を受けながらも宦官たちが気づけなかったものを鋭く指摘し、結果より効率的な仕様に変更されていった。どこからそんな考えが浮かんでくるのか、不思議で仕方ない。そんな方が王に対して子供のような癇癪を起したことが信じられないくらいだ。
「ノア、ここが少しわかりづらいのだけれど」
「はい、それは…」
こうして度々、王妃は私に聞いてくる。その度に厚く深い壁を感じずにはいられない。それもそうかと納得してしまうほどに、私は彼女を試したのだ。昔から警戒心がイチミリもなかった王は国を立ち上げるまでに何度も騙された。それを本人が深刻にとらえていないから問題だった。国のトップに立った今、その背中には子供だった頃とは比べ物にならないほど重いものがのしかかっている。私がしっかり支えなければと何事にも疑いを持つようになった。
けれど王妃に関しては少しやりすぎであったことも否めない。おそらく、王の隣というポジションを奪われるとでも無意識に思ってしまったのだ。何と幼稚だろう。
「リリー様。少しお時間よろしいでしょうか」
「ええ、いいわ」
王が生まれ故郷の民衆に囲まれているのをいいことに、私は王妃を領主家のガゼボへと案内した。お付きの侍女は離れて控えさせ、用意させた紅茶をサーブする。
「身勝手なお願いとは心得ております。…どうか、わたくしめをお許しくださいませんか」
「…え?」
「何度もリリー様のお力を見ようとしたこと、越権も甚だしい行いであったと反省しております。申し訳ございませんでした」
「…あら、もうよろしいの? わたくしは合格?」
優雅にティーカップを傾けながら、薄い唇からは鋭い皮肉がこぼれる。私や王とは違う、生まれながらの貴族がそこに座っていた。
「滅相もございません」
「そう。…よかった。まだ続いているのかと、毎日緊張で肩が凝るの。今日は肩をもんでもらわなくてもよさそうね」
つばの広い帽子を脱ぎ、ふわりと王妃は笑った。
「紅茶のおかわり、いただける?」
「…喜んで」
王妃は王に「あなたほど口下手な方はあったことありませんわ」と言っていた。けれどそれは王妃もではないだろうか。空のティーカップに二杯目を注ぎながらふとそう思った。
「ふふ、ありがと」
軽く頭を下げて後ろに控える。なんの疑いもなく私の淹れた紅茶を飲むこと自体、最大の信頼の現れであり、とどのつまり、私のことはとっくに許してくれていたのだ。
こんな高貴な人間を試していたのかと、畏れ多すぎて頭が上がらなかった。
「時に、ウィンディ―・ポロネフ男爵令嬢をご存じ?」
「…はい。身柄を拘束しております。いかようにも処罰できますが…、恐れながらストラテの司法は使えません」
「ええ、この国で起きたことではないものね。…そうね、たしかシルバーが侍女を何人か送ってほしいと言っていたのではなかったかしら」
「二日前に書簡が届いております。条件は何も付けぬから早く、と」
「ちょうどいいわね。彼女を送るといいわ。身分はそうね…わたくしの侍女のお気に入りとでもしておきましょうか。シルバーなら出自を問うこともないでしょう」
「御意」
涼しい顔して、ウィンディーとかいう令嬢にとって残酷なことを、さもなんでもないかのように言う。容姿の美しさと相まってなんとも魅惑的な姿だ。
一国の王妃ともなろうお方の汚点となりうる芽は摘んでおいた方が良いと、王妃がストラテに入国したと同時に彼女の身柄を拘束した。聞けば彼女はもとは平民、ポロネフ男爵の養女だった。平民としては美しい容姿の生まれだったからとポロネフ男爵が拾ったという。あわよくば皇子のどちらかと婚約させ自らは出世しようと目論んだ結果だった。
利用された駒に過ぎないとはいえ、令嬢も何も知らなかったでは済まされない。しかし、手を下すべきは王妃と考えていた。いつ言い出したものかとタイミングを見計らっていたが、王妃の方が一枚上手だったらしい。ちなみに男爵の方はお家取り潰しの上労役が課せられた。労役といっても死刑と変わらないほどの劣悪な環境での鉱夫だ。
「妬けるねえ、僕は忙しかったというのに」
「あら、レオ様。こちらでご一緒しましょう? ノア、お願い」
「喜んで」
話がひと段落ついたのを見計らったように王はガゼボに顔を見せた。
「なんの話をしていたんだい?」
「先ほどの資料のことですわ。少しわかりずらかったので、意図的に何かを隠したい人が作成したものではないかと思いまして。思い過ごしならいいのですけれど、一応ノアに見てもらっていたのです」
「ああ、あれね。さっき話してきたよ。…わかってくれたようだから明後日あたりにまた資料が挙げられるんじゃないかな」
「まあ、仕事の早いこと」
「そりゃあもちろん。リリーと長く一緒にいたいからね」
王に紅茶をサーブしたところで、私は侍女のところまで下がった。ウィンディ―令嬢の処遇の指示とこの後の行程を確認する。
内ポケットの懐中時計に目をやって、おや、と首を傾げた。さっきも同じ時間を指していたような気がする。
「おい、今何時だ」
フットマンのひとりに聞く。
「14時半でございます」
背中に冷や汗が流れる。私の懐中時計はきれいに30分前を指している。
「すぐに出立の準備をしろ!」
使用人たちをばたつかせ、私はガゼボへ走った。
「おや、ノア。何か焦っているのかい?」
にやにやと二人して似たような笑みを浮かべるのを前にして、我慢ができるわけなかった。
こいつら、気づいてたな。
近くに誰もいないことを確認し、大きく息を吸った。
「時間が押してる。馬車で酔いたくなかったら急いで乗れ!」
「僕は大丈夫だけど、リリーが酔ってしまうのは嫌だから急ごうか」
「あら、レオ様。わたくし、乗り物には強くてよ」
「なら何も問題ないな。ゆっくり行こうか。そうだな、互いの好きなところを言うたびに一歩進むというのはどうだい」
「陛下!!」
このバカップルが。おっとりしすぎていることに怒りを覚えているのか、自分に相手がいないから羨ましさで怒りを覚えているのか、もはやわからない。ただただ腹立たしい。
「レオ様。侍女たちが酔ってしまってはかわいそうですわ。急ぎましょう」
「わかったよ」
なんとか馬車に乗り、全速力で次の町に向かう。その道中も婚約中であるというのに熱々な二人を見せつけられることになってしまった。この役目を誰かに丸投げしたくなってくる。とはいえそんなことはできないから、トランクから書類を出し、王に投げる。
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