はるよ こい。

たみやえる

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出会う

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「背が高い女子の何がいけないの? 私だって百七十センチ越えだよ?」
「逸子さんは違うよ。綺麗だし、優しいし。楽器もできて。私なんて何にもないもの」
「拗ねちゃって。可愛い」
「そんなこと言うの、逸子さんだけだから」
 角度を変えて頬をフニフニ摘まれる。その手を避けようとして、逸子の左薬指にきらりと光る一筋がアヤの目に留まった。
「あ、逸子さん……もしかして」
「ふふ、プロポーズされちゃった」
「おめでとう! 逸子さん」
「ありがとう……そういえばアヤちゃんに会ったの、もう一年前になるのね」
「男なんて都合の良いことしか言わないんだから、自分の気持ちを一番に考えなきゃダメよ、って逸子さん教えてくれた」
「珍しくね、お節介したくなったのね。ほら、お互い背が、ね」
「逸子さんの相手の人は、そういう人じゃないんだね。勝手な都合を押し付けてきたりしない人」
「男の人の中にも、本物がいるってわからせてくれた人かな。ほら、ウチ、片親なんだけど、母にも良くしてくれるからすごく安心できるんだ」
「惚気てるー」
「うふふ……」
「私も、本物の人に会えるかな」
「今、好きな人がそうかもよ?」
「もうっ、その話はよそうよ」
「ごめん、ごめん。じゃ、」
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