昼と夜の間の女

たみやえる

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 そういえば……。これまでの恋人は(当然、林より歳上の女たちだ)いつも林と自分の間に柔らかな絹のようなカーテンを張っていたように思えてきた。手を伸ばすほどその壁はやわやわと林の手をすり抜けた。好きだと強く迫るほど、彼女たちは憂い顔になった。〈そのうちどうせ若い子がよくなるんだから〉と一方的に別れを告げられた。
 廣木の幸せそうな顔が頭をよぎる。
 俺だって、ほんとは結婚したい。子供が持てるなら持ちたい。だが自分の性癖では多くは望むまいとも思っている。なぜ、女たちはこんな俺のことをわかってくれないのか。
 目の奥が焼き切れたように熱くなって林は寒さのせいだけでなしに鼻をすすった。ガチャ、と通用口のドアが開いたのはその時だった。驚いて顔を向けたのでまともに目が合った。
(なんて水っ気のない女だ)林のこれまでの恋人は皆、自分の食い扶持以上稼いでいる自信からか、贅沢することに慣れていて、成熟した女性特有の潤いに満ちていた。
 それに比べて店の看板と同じ配色の制服を着たこの女、頭の上から爪先まで見事にカラっからじゃないか。
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