【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅

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4 カインとの邂逅

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 今日、僕は一歳の誕生日を迎えた。

 そのため、王宮で盛大なパーティーが催される。

 ヨチヨチ歩きを始めたばかりの僕を見て皆が、かわいいかわいいと目を細めている。

 前世の記憶がある事で中身が十八歳になる男としては、むず痒くって仕方ないがどうしようもない。 
 
 この一年で色々とこの世界について学んできた。

 なんとこの世界には魔法があるのだ!

 …って、まぁよくある異世界もののパターンだけどね。

 前世RPG好きとしては、魔法があるって聞いてワクワクしないわけがない。

 魔法の種類としては火・水・土・風・治癒の5つらしい。

 今のところ、見たり聞いたりしたのがそれだけだから、他にもあるのかもしれないけど‥‥。

 貴族は魔力が高く、平民は生活魔法がそこそこ使えるぐらい。平民でも魔力の高い者は、神殿や魔法省に勤める事が出来るんだって。

 僕も魔法が使えるか、人目を盗んでこっそり試してみたら、水・土・風が使えた。
 
 火は危なくて王宮の中では出来ないし、治癒魔法は今のところ、使う場面がない。

 早く試してみたくてウズウズするよ。

 ニコニコと招待客に愛想を振りまいていると、誰かの視線を感じた。 

 振り向くと、宰相がこちらにやって来た。

 おや? 一緒にいる男の子は誰だ?

 あれが息子かな?

 黒髪のちょっと冷たい雰囲気の子だな。

 赤い瞳をしていて射るような視線で僕を見下ろしている。

 その視線に思わずたじろいで母上にしがみついた。

「あらあら、抱っこなの?」

 勘違いした母上は優しく抱き上げてくれる。

「フェリクス王子、お誕生日おめでとうございます。ようやく息子を連れて来ました。…ほら、カイン。両陛下とフェリクス王子に挨拶を」

 こわごわとカインに目を向けると、さっきまでとは打って変わって柔らかい視線で満面の笑みを浮かべている。

「はじめまして、フェリクス王子。カインと申します」

 母上に促されるまま、ペコリとお辞儀をする。じっとカインを見つめるけど、相変わらずニコニコしたままだ。

 一通り、参列者の挨拶を受けたので僕は退席する事になった。乳母に抱かれて広間を後にする時、ふと、カインが目に入った。

 彼は僕を見てニヤリと笑う。

 その顔はゾッとする位、冷たかった。

 彼は僕を一歳の子供だからすぐに忘れるだろうと思って、そんな表情を見せているのだろうか。

 でも、何故あんな目を僕に向けるんだろう。

 


 成長するにつれて、僕の行動範囲も広くなってきた。今日は庭を探索中だ。ここなら火魔法を使っても問題ないかな?

 周りに燃えそうな物はない。

 よーし、誰も見ていないすきに。

「火!」

 あれ? もう一度。

「火!」

 ‥‥‥‥。

 何も起こらない!

 あ~、残念。火魔法は使えないみたいだ。
 
 ちょっとがっかりした。

 王族だし、チートスキル持ちで魔法がバンバン使えるんじゃないかと期待してたのに‥‥。

 もう少し大きくなったら使えるようになるのかな?

 けれど、こんな平和な日が、ある日突然終わりを告げるなんて、僕は少しも考えていなかった。


 *******


 王子の1才の誕生日から数ヶ月後のとある屋敷。

 皆が寝静まった頃、離れに二人の女が入って行った。

 年若い方の侍女が囁くように問う。

「侍女長、やっぱり駄目なんですか?」

「仕方ないでしょ。旦那様の妹君が、未婚で子供を産んだなんて、醜聞でしかないわ」

 侍女長はため息をつきながら持っていた荷物から赤ん坊の服を取り出した。

「でも、何も捨てるなんて…」

「人聞きの悪い事を言わないでちょうだい。孤児院の前に置いてきなさいと言っているだけよ!」

 ピシャリと言われて侍女は肩を竦めるが、それを捨てると言うのではないだろうか?
 
 最も母親が亡くなった今、誰がこの子を育てるのかと言われれば返す言葉もない。

 自分も世話を手伝ってきたが、まだ未婚である以上、引き取るわけにもいかない。

 乳飲み子の面倒を見ていたら仕事が出来なくなってしまう。

 それに、この子の髪は燃えるような赤だった。この国ではまず見ない色だ。

 それだけでも人目をひいてしまう。

 なるべく身元がわからないようにと、今までの豪華な衣装から平民が着るような粗末な物に着替えさせる。

 このままではこの子が不憫でならない。

 そう思った侍女はこっそり侍女長の目を盗んで、この子の母親のペンダントを赤ん坊の首にかけた。生前、母親が細工師に作らせていたものだ。

「準備はいい? なるべく遠くの孤児院に連れて行くのよ」

「はい、わかりました」

 二人は赤ん坊を連れて離れを出ると裏門へと向かった。

 誰もいないのを確認して侍女が出て行くと、侍女長はそっと門を閉めた。
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