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28 王宮
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僕は兄さんに促されるまま、重い足取りで家に辿り着いた。
今すぐにでもシェリルの元に駆けつけたいのに、僕は何をやっているんだろう。
「兄さん、僕はやっぱりシェリルを助けに行きたい!」
必死で訴えたが、兄さんは首を縦に振らなかった。
「フェリクス王子。兄弟としてなら行って来い、と言うべきでしょうが、側近としては許すわけにはいきません。どうかわかってください」
兄さんの言う事はわかる。だけど頭では理解しても感情がついていかない。
「何を言い争っているんだ?」
扉が開いて父さんが帰って来たが、コンラッドさんも一緒だった。
「フェリクス王子の恋人がカインに捕まって王宮に連れて行かれたんだ。罠に決まってるから行くなと止めてるんだけど‥‥」
兄さんの言葉に父さんはふっと相好を崩した。
「王子もそういう年頃になりましたか。シオンがいるから大丈夫でしょう。どうぞ行ってください。私達もすぐに後を追いかけます」
「ありがとう、父さん!」
家を飛び出そうとすると、シオンが一回り大きくなった。
『俺の背中に乗れ!』
「わかった。ありがとう」
シオンの背中に跨がると、凄い勢いで駆けていく。振り落とされないように捕まっているのがやっとだ。
通り過ぎる人々が驚いたように僕達を見つめているが、そんなのを気にしている余裕はなかった。
しばらく走っているとようやく王宮が見えてきた。
変だな?
門は閉じられているが、そこにいるはずの門番の姿がない。
やはり罠なのか
門扉に手を当てると紋章が光り、静かに開いた。僕が入るとまた静かに閉ざされた。
紋章がないと入れないのなら、後から来る父さん達はどうなるのだろう?
そう思いつつ足を進めた。
王宮の中に入っても、誰もいなかった。
一体どういう事だろう。
シオンがシェリルの匂いを辿っていく。
『こっちだ』
やがてシオンある扉の前で止まった。
「ここにシェリルが?」
無作法だとはわかっているが、今はそんな事を言っている場合ではない。
僕はノックも無しにその扉を開けた。
すると、ソファーの上に座っているカインとシェリルがいた。
シェリルの腕がカインに掴まれているのを見て、僕は思わず叫んだ。
「カイン! シェリルを離せ!」
するとカインはシェリルの首元にナイフを突きつけて、シェリルの身体を盾にするように自分の身を隠す。
「随分と早かったな。せっかくこの女を私の物にしようと思っていたのに残念だ」
何処まで本気なのかわからないカインの物言いに僕は唇を噛む。
ふと、隣にいるシオンが殺気を出したのに気づいて慌てて止めた。
「駄目だ! シェリルに当たる!」
この世界に土下座は有効なのかわからないけど、床に手を付き頭を下げた。
「お願いだ。シェリルを離してくれ。お前が用があるのは僕だけだろ?」
そう言うと、カインは何かを投げて寄越した。それは首輪と手枷だった。
「シェリルを開放した途端、八つ裂きにされたくないからな。そこのフェンリルに首輪を付けて、お前は手枷だ」
言われるまま、シオンに首輪を付けたが、シオンは首輪を付けた途端にその場に座り込んでしまった。恐らく何かの魔導具なのだろう。
それならばこの手枷もそうなのだろう。
僕も両手に手枷をはめるとようやくカインはシェリルから体を離した。
けれど、シェリルはそのままソファーへと倒れ込む。
「シェリル!?」
駆け寄ろうとしたが、手枷のせいか、僕もその場から動けない。
「心配するな。ほんの少し睡眠薬を飲ませただけだ」
カインは立ち上がると僕に近寄ってきた。
きつく睨む僕の顎に手を当て、顔を持ち上げてくる。
「まったく…、王妃に生き写しだな。さて、本題に入ろうか。私の父上に会いたいのだろう?」
そうだ。先ずはグレイと対峙しなければならない。だが、この状態ではなすすべもなく殺されてしまうだろう。
だが、せめて援軍が来るまでは持ちこたえたい。
僕はカインに促されるまま、歩きだした。
今すぐにでもシェリルの元に駆けつけたいのに、僕は何をやっているんだろう。
「兄さん、僕はやっぱりシェリルを助けに行きたい!」
必死で訴えたが、兄さんは首を縦に振らなかった。
「フェリクス王子。兄弟としてなら行って来い、と言うべきでしょうが、側近としては許すわけにはいきません。どうかわかってください」
兄さんの言う事はわかる。だけど頭では理解しても感情がついていかない。
「何を言い争っているんだ?」
扉が開いて父さんが帰って来たが、コンラッドさんも一緒だった。
「フェリクス王子の恋人がカインに捕まって王宮に連れて行かれたんだ。罠に決まってるから行くなと止めてるんだけど‥‥」
兄さんの言葉に父さんはふっと相好を崩した。
「王子もそういう年頃になりましたか。シオンがいるから大丈夫でしょう。どうぞ行ってください。私達もすぐに後を追いかけます」
「ありがとう、父さん!」
家を飛び出そうとすると、シオンが一回り大きくなった。
『俺の背中に乗れ!』
「わかった。ありがとう」
シオンの背中に跨がると、凄い勢いで駆けていく。振り落とされないように捕まっているのがやっとだ。
通り過ぎる人々が驚いたように僕達を見つめているが、そんなのを気にしている余裕はなかった。
しばらく走っているとようやく王宮が見えてきた。
変だな?
門は閉じられているが、そこにいるはずの門番の姿がない。
やはり罠なのか
門扉に手を当てると紋章が光り、静かに開いた。僕が入るとまた静かに閉ざされた。
紋章がないと入れないのなら、後から来る父さん達はどうなるのだろう?
そう思いつつ足を進めた。
王宮の中に入っても、誰もいなかった。
一体どういう事だろう。
シオンがシェリルの匂いを辿っていく。
『こっちだ』
やがてシオンある扉の前で止まった。
「ここにシェリルが?」
無作法だとはわかっているが、今はそんな事を言っている場合ではない。
僕はノックも無しにその扉を開けた。
すると、ソファーの上に座っているカインとシェリルがいた。
シェリルの腕がカインに掴まれているのを見て、僕は思わず叫んだ。
「カイン! シェリルを離せ!」
するとカインはシェリルの首元にナイフを突きつけて、シェリルの身体を盾にするように自分の身を隠す。
「随分と早かったな。せっかくこの女を私の物にしようと思っていたのに残念だ」
何処まで本気なのかわからないカインの物言いに僕は唇を噛む。
ふと、隣にいるシオンが殺気を出したのに気づいて慌てて止めた。
「駄目だ! シェリルに当たる!」
この世界に土下座は有効なのかわからないけど、床に手を付き頭を下げた。
「お願いだ。シェリルを離してくれ。お前が用があるのは僕だけだろ?」
そう言うと、カインは何かを投げて寄越した。それは首輪と手枷だった。
「シェリルを開放した途端、八つ裂きにされたくないからな。そこのフェンリルに首輪を付けて、お前は手枷だ」
言われるまま、シオンに首輪を付けたが、シオンは首輪を付けた途端にその場に座り込んでしまった。恐らく何かの魔導具なのだろう。
それならばこの手枷もそうなのだろう。
僕も両手に手枷をはめるとようやくカインはシェリルから体を離した。
けれど、シェリルはそのままソファーへと倒れ込む。
「シェリル!?」
駆け寄ろうとしたが、手枷のせいか、僕もその場から動けない。
「心配するな。ほんの少し睡眠薬を飲ませただけだ」
カインは立ち上がると僕に近寄ってきた。
きつく睨む僕の顎に手を当て、顔を持ち上げてくる。
「まったく…、王妃に生き写しだな。さて、本題に入ろうか。私の父上に会いたいのだろう?」
そうだ。先ずはグレイと対峙しなければならない。だが、この状態ではなすすべもなく殺されてしまうだろう。
だが、せめて援軍が来るまでは持ちこたえたい。
僕はカインに促されるまま、歩きだした。
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