【完結】妖精王をさがして〜小さな妖精フィルの冒険〜

伽羅

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24 少女の正体

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 エイミーを連れて歩き出したはいいが、彼女にどう接して良いのかがわからない。

 前世では男兄弟しかいなかったし、付き合った女性もいない。

 学生時代もそれほど女子とは話さなかったし、ましてやこんな小さな女の子と接した事もない。

 黙ってエイミーの隣を飛んでいる僕とは違って、レオは積極的に彼女に話しかけている。

「エイミーのお家には誰が住んでいるの?」

「お父さんとお母さん」

「お父さんとお母さんだけ? 兄弟はいないのかな?」 

「うん、いない」

 などと仲睦まじくやりとりをしている。

 何事もなく進んでいたのだが、そのうちに何処からか「キー、キー」と何かの鳴き声が聞こえてきた。

 すると、エイミーの肩がピクリと反応する。

「どうかした? エイミー?」

 不思議に思って声をかけたが、エイミーは「何でもない」としか繰り返さない。

 そのうちまたしても「キー、キー」と聞こえてきたが、その声はレオの近くから聞こえた。

「何の声だろう? 何か近くにいるのかな?」

 レオはエイミーの手を離して草むらをガサガサとかき分けた。

 すると、草むらから一匹のネズミが飛び出してきた。

「うわっ! ネズミだ!」

 ネズミはすぐさま別の草むらの中へと消えたけれど、あろうことか、エイミーはそのネズミを追いかけて行ってしまった。

「エイミー!?」

 僕とレオは慌ててエイミーを追いかけた。

 すると、すぐ向こうで座り込んでいるエイミーがいた。

 そのエイミーから何やらボリボリと硬い物を砕くような音が聞こえる。

(…まさか? エイミーが何かを食べてる!?)

「エイミー、どうしたの?」

 レオと僕が近付くと、エイミーがゆっくりと振り返った。

 けれど、その顔はエイミーではなく、猫の顔をしていた。

 しかも、その猫は先ほどのネズミを食べていたのだ。

 口の周りをネズミの血で真っ赤に染めた猫は忌々しそうに語る。

「ちっ! まさか、この私が正体をバラしてしまうとはね。よりによって好物のネズミが出てくるとは思わなかったよ!」

「エ、エイミー!?」

 レオも僕もあまりの出来事に驚いて動けない。

「バレたからには生かしておけない。お前達も食ってやる!」

 エイミーは既に身体を少女から猫へと姿を替えていた。

 全身真っ黒な猫で二本足で立ち、胸元には白い模様が見える。

「ケット・シーだ!」

 ケット・シーはレオに向かって襲いかかってくる。

「うわあっ!」

 普通の猫よりも大きなケット・シーに飛び掛かられ、レオはその場に倒されてしまう。

 レオを押し倒したケット・シーは、今にもレオの喉笛に噛みつこうとしていた。

「やめろ!」

 僕がそう叫んだ瞬間、僕の身体は変化して手には剣を持っていた。

 僕はその剣を振り下ろしてケット・シーに切りかかった。

「ギャアー!」

 ケット・シーは背中に傷を負いながらレオから離れた。

「ちくしょう! 覚えておいで!」

 ケット・シーはそんな捨てゼリフを吐くと、這々の体で走り去っていった。

「レオ! ケガは?」

 剣を持ったままレオに近寄ろうとしたところで、僕の身体は小さな妖精に戻り、剣もまた何処かへ消え失せていた。

「やれやれ、またこのパターンか」

 がっくり項垂れていると、起き上がったレオが僕の頭を撫でてくる。

「毎回僕が襲われて、フィルに助けてもらうパターンばかりだな」

「今度はそんな展開にはならないと思っていたのに、この先もこんな事が続くのかな?」 

「きっとそうだろうな。小さいフィルよりも大きい僕の方が狙いやすいだろうしね」

 僕とレオは二人揃って盛大なため息をつくのだった。
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