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31 デュラハン
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森を出ると月明かりの明るい夜だった。
フランス窓と平行に建てた壁には窓枠の影が出来ている。
「それじゃあ、開けるよ」
レオが月影の窓に両手を当てて押した。
音もなく、月影の窓が左右に開かれる。
「うわ! 本当に開いた!」
壁は何処かに消え失せ、新たな空間が広がっている。
「…ここが、ライトエルフの国?」
レオが疑問に思うのも無理はない。
まるで荒野のように荒れた大地が広がっているだけだった。
「ライトエルフの国ってこんなに寂れた所なの?」
「いや、そんなはずはない。僕の記憶にあるライトエルフの国は、花が咲き乱れてもっと明るい所だった」
とても同一の場所とは思えない程の荒れ地に僕はただ呆然とするだけだった。
「何でこんなに荒れているんだ? やはりライトエルフの王がいないせいなのか?」
レオに聞かれても僕にはどう答えていいのかわからない。
「僕が転生出来たから、きっと陛下も転生してライトエルフの国にいると思って来たのに…」
ここで会えないのならば、一体何処に行けば陛下に会えるのだろうか?
「昨日会ったスレイプニルは何処だ? ライトエルフの国にいるって言ってたよね?」
「きっと王宮だ。そこに行ってみよう。こっちだよ」
微かな記憶を頼りに王宮へ向かう。
この国の中央に王宮があったはずだ。
しばらく進むと向こうの方が霧に覆われている事に気が付いた。
その霧の中に微かに王宮の建物のような物が見える。
「なんでこんなに霧に覆われているんだ?」
「わからない。一体この国に何が起きたのか…」
王宮に向かうに連れてどんどん霧が濃くなっていく。
突然何かが現れても、咄嗟には対処出来ないくらいだ。
「急に魔獣とか襲ってきたりしないよね」
レオも不安そうに足を進めているが、その手はいつでも剣を抜けるように柄に添えられている。
進んでいると、向こうの方から微かに蹄の音が聞こえたような気がした。
「ねぇ、レオ。今蹄の音が聴こえなかった?」
「…そういえば、微かに何か聞こえるような…」
レオがそう口にした途端、霧の中から剣の切っ先が突き出された。
「うわっ!」
僕とレオは、慌てて左右に避ける。
そこへ一度引っ込んだ剣が再び突き出されてくる。
「畜生! 誰だ!」
レオが前方に向かって風魔法で霧を吹き飛ばした。
そこに現れたのは黒い馬に乗った鎧姿の騎士だった。
だが、その騎士に頭はなく、左手で抱えているのだった。
「デュラハンだ!」
叫ぶレオにデュラハンが襲いかかる。
レオは咄嗟に抜いた剣でデュラハンの槍をかわす。
デュラハンは少し体勢を崩されたがすぐに立て直し、再びレオに向かって斬りかかる。
「お前の相手はこっちだ!」
僕が叫ぶと僕の身体は元の大きさに戻り、右手には剣を握っていた。
頭のない騎士が乗っている馬を斬りつけたが、鎧に阻まれて傷を負わせられない。
それでも多少の効果はあったらしく、馬は驚きいなないて、頭のない騎士を振り落とそうとした。
頭のない騎士は馬を宥めると、今度は僕に狙いを定めてくる。
デュラハンが突進してくるのをヒラリと躱して、僕は馬に体当りした。
不意を突かれたのか、頭のない騎士は落馬し、乗り手のなくなった馬は何処かへ走り去っていく。
尻餅をついたまま、起き上がれない騎士を見たレオは、その左手に抱えている頭をもぎ取り、地面に叩きつけた。
『オオオー!』
断末魔をあげると、デュラハンは霧散していく。
「ふう…。まさかこの国に入ってまで魔物に襲われるとは…」
だが、一つだけいつもと違っている所があった。
魔物を倒しても僕の身体は大きくなったままだったのだ。
フランス窓と平行に建てた壁には窓枠の影が出来ている。
「それじゃあ、開けるよ」
レオが月影の窓に両手を当てて押した。
音もなく、月影の窓が左右に開かれる。
「うわ! 本当に開いた!」
壁は何処かに消え失せ、新たな空間が広がっている。
「…ここが、ライトエルフの国?」
レオが疑問に思うのも無理はない。
まるで荒野のように荒れた大地が広がっているだけだった。
「ライトエルフの国ってこんなに寂れた所なの?」
「いや、そんなはずはない。僕の記憶にあるライトエルフの国は、花が咲き乱れてもっと明るい所だった」
とても同一の場所とは思えない程の荒れ地に僕はただ呆然とするだけだった。
「何でこんなに荒れているんだ? やはりライトエルフの王がいないせいなのか?」
レオに聞かれても僕にはどう答えていいのかわからない。
「僕が転生出来たから、きっと陛下も転生してライトエルフの国にいると思って来たのに…」
ここで会えないのならば、一体何処に行けば陛下に会えるのだろうか?
「昨日会ったスレイプニルは何処だ? ライトエルフの国にいるって言ってたよね?」
「きっと王宮だ。そこに行ってみよう。こっちだよ」
微かな記憶を頼りに王宮へ向かう。
この国の中央に王宮があったはずだ。
しばらく進むと向こうの方が霧に覆われている事に気が付いた。
その霧の中に微かに王宮の建物のような物が見える。
「なんでこんなに霧に覆われているんだ?」
「わからない。一体この国に何が起きたのか…」
王宮に向かうに連れてどんどん霧が濃くなっていく。
突然何かが現れても、咄嗟には対処出来ないくらいだ。
「急に魔獣とか襲ってきたりしないよね」
レオも不安そうに足を進めているが、その手はいつでも剣を抜けるように柄に添えられている。
進んでいると、向こうの方から微かに蹄の音が聞こえたような気がした。
「ねぇ、レオ。今蹄の音が聴こえなかった?」
「…そういえば、微かに何か聞こえるような…」
レオがそう口にした途端、霧の中から剣の切っ先が突き出された。
「うわっ!」
僕とレオは、慌てて左右に避ける。
そこへ一度引っ込んだ剣が再び突き出されてくる。
「畜生! 誰だ!」
レオが前方に向かって風魔法で霧を吹き飛ばした。
そこに現れたのは黒い馬に乗った鎧姿の騎士だった。
だが、その騎士に頭はなく、左手で抱えているのだった。
「デュラハンだ!」
叫ぶレオにデュラハンが襲いかかる。
レオは咄嗟に抜いた剣でデュラハンの槍をかわす。
デュラハンは少し体勢を崩されたがすぐに立て直し、再びレオに向かって斬りかかる。
「お前の相手はこっちだ!」
僕が叫ぶと僕の身体は元の大きさに戻り、右手には剣を握っていた。
頭のない騎士が乗っている馬を斬りつけたが、鎧に阻まれて傷を負わせられない。
それでも多少の効果はあったらしく、馬は驚きいなないて、頭のない騎士を振り落とそうとした。
頭のない騎士は馬を宥めると、今度は僕に狙いを定めてくる。
デュラハンが突進してくるのをヒラリと躱して、僕は馬に体当りした。
不意を突かれたのか、頭のない騎士は落馬し、乗り手のなくなった馬は何処かへ走り去っていく。
尻餅をついたまま、起き上がれない騎士を見たレオは、その左手に抱えている頭をもぎ取り、地面に叩きつけた。
『オオオー!』
断末魔をあげると、デュラハンは霧散していく。
「ふう…。まさかこの国に入ってまで魔物に襲われるとは…」
だが、一つだけいつもと違っている所があった。
魔物を倒しても僕の身体は大きくなったままだったのだ。
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