【完結】呪われた悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される

伽羅

文字の大きさ
21 / 77

21 それを言っちゃあお終いよ

しおりを挟む
 ブツブツと呟いていたケンブル先生は、何かを思いついたらしく、壁に造り付けられている戸棚から、様々な素材を取り出し始めた。

「あの戸棚には色んな魔獣の素材が収められているんだ。どうやらそれらを使って魔道具を作るつもりのようだ。どうせすぐには出来ないから僕達は一旦ここを離れよう。ケンブル先生の邪魔になってはいけないからね」

 ケンブル先生の助手でもなんでもない私達がここにいても仕方がないのは分かりきっている。

 私達は音を立てないようにそっと『どこでも◯ア』から、アラスター王太子の自室へと戻った。

 そこから私に割り当てられた部屋に戻ろうとした時、部屋の扉がノックされた。

「アラスター王太子、いらっしゃいますか? 陛下がお呼びです。すぐに執務室にいらしてください。お客様もご一緒にとの事です」

 アラスター王太子が私を連れて王宮に戻った事は知られているはずだから、呼び出しがかかるのは当然だろう。

 先程のブリジットが一緒にいるのではないかと、アラスター王太子を見やれば、軽く微笑まれた。

「キャサリン嬢、大丈夫ですよ。執務室にはブリジット様は足を踏み入れませんからね。顔を合わせるのは父上だけになります」

 私の視線の意味に気付いたアラスター王太子がそう言うのならば間違いはないのだろう。

 エイダに身だしなみをチェックされて、私はアラスター王太子と一緒に陛下の執務室に向かう。

 ウォーレンとエイダもついて来てくれるが、執務室の中にまでは入れないそうだ。

 扉の向こうから呼びかけてきた騎士に連れられて、広い王宮の中を進んで行く。 

「陛下、アラスター王太子とお客様をお連れいたしました」

 執務室の扉の前に立っていた騎士によって開かれた扉の中に入ると、奥に座っている陛下が見えた。

 私達が入ってきた事に気付いて顔を上げてこちらを見ている。

 アラスター王太子に似た雰囲気の陛下だけれど、何処となく疲れて見える。

「アラスターか。とりあえずそこに座りなさい」

 陛下に勧められて私とアラスター王太子はソファーへと腰を下ろした。

 陛下も執務机から離れて、私とアラスター王太子の向かいに腰を下ろす。

「学校も卒業したというのに、何かと理由をつけてはエヴァンズ王国に行っているな。おまけにエヴァンズ王国から令嬢を連れて帰ったと聞いたが、本当か?」

「はい。諸事情により、家を追い出されて行く宛もないとの事で、ひとまず私の国に来るようにとお誘いしました」

「諸事情とは何だ? 後でエヴァンズ王国から苦情が来たりする事はないのか?」

 アラスター王太子がチラリと私に視線を寄越したので、私はコクリと頷いた。

 ここで変に隠し立てして、後でバレるよりはきちんと説明していた方が良いだろう。

「はじめまして、国王陛下。このような形でご挨拶する事をお許しください。私はキャサリンと申します。エヴァンズ王国のセドリック王太子と婚約をしておりましたが、セドリック王太子に婚約を解消された挙げ句、家を追い出されました。行く宛もなく彷徨っていた所をアラスター王太子に助けていただいたのです」

 アラスター王太子との打ち合わせ通りに私が猫に変化するのは内緒だ。

「婚約を解消? 理由を聞かせてもらっても良いか?」 

「はい。セドリック王太子は私よりも妹のキャロリンを好きになったそうです」

 国王陛下はやれやれとばかりに首を振っている。

 王太子ともあろう者が、好きな人と結婚したいからと婚約を解消するのは、あり得ないと思っているのだろう。

「何とも羨ましい事だな。私ももっと早くブリジットに会っていれば…。いや、失礼」

 セドリック王太子を非難するどころか、まさかの肯定って。

 それってアラスター王太子のお母様である前王妃様に失礼じゃないのかしら?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

処理中です...