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悪役令嬢リティシア
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目が覚めると私は…真っ赤に燃え盛る炎を連想させる髪に、まるで春の訪れを知らせるかの様な可愛らしい桃色の瞳をもつ、美女になっていた。
初めは見惚れて鏡を食い入るように数分間見つめ続けた私であったが、その姿にはどうも見覚えがあった。…そして記憶が鮮明になっていくにつれ私の顔はどんどん青ざめていく。
小説、『悪が微笑む』において悪役令嬢リティシア=ブロンドはそれはもう凄まじい勢いで主人公に嫌がらせを繰り返すのだ。
主人公は生まれつき魔力をもたない少女だった。正確には、世間も、そして自分自身もそう思っていた。この世界では魔力が人の価値をそのまま表すと言っても過言ではない。その為に彼女の味方となる者は現れなかった。ただ一人王子を除いては。
リティシアは魔力に恵まれ経済的にも恵まれた少女であり、一人娘の彼女は両親に甘やかされ育っていったとんでもない我儘放題の娘だ。
彼女は貧相な家庭に生まれブロンド家のメイドとして働いていた主人公を魔力のない卑しい女だと嫌いそれはもう滅茶苦茶に虐めるのだ。
…この世界で最も重視される魔力。それをもたぬ主人公はリティシアにとって格好の的だったのである。
ある時は主人公のメイド服に珈琲のシミをわざとつけ、主人公が涙するのを見て嘲笑った。
更に不幸なことに、明らかにお嬢様から嫌われている主人公は他のメイド達からも仕事を押し付けられた。
人一倍働かされる主人公に追い打ちをかけるように彼女は薄汚れた数十枚のドレスと宝石を投げつける。全て汚れ一つなくなるまで洗い、宝石を縫いつけておけ、と。
ただでさえ洗濯や掃除に追われる身であるのにお嬢様の世話まで全て一人で任された主人公だったが、そこは流石主人公だ。手先の器用さを上手く使い見事忙しい仕事の傍ら、数日でやり終えた。
…皮肉にも、それがまたリティシアに嫌われる要因となってしまったのだが。
こんな虐めを繰り返した結果、自分の婚約者である心優しい男性からも見放される事となる。
根っからの悪役令嬢リティシアの婚約者は…なんと一国の王子であった。
しかも彼は一人息子である為王になるのは確実。だが彼女は次期王となる王子をあろう事か所有物としか見ていなかった。その思いがそのまま伝わったのか、王子はリティシアに対し当然好印象を抱くことはなかった。
リティシアが床を雑巾がけする主人公を乱暴に蹴り飛ばした直後に、彼は現れる。
その衝撃の光景にすかさず豪奢なドレスの少女を押しのけ汚れたメイド服の少女へ手を差し伸べる心優しい王子の姿に主人公は目を丸くする。
しかし彼女が驚いてしまうのも無理はない。彼女を優しく丁重に扱い彼女の悲しみを理解してくれるのは亡くなった両親しかいなかったからだ。
その瞬間から彼女の運命の歯車は動き出す。
「まさかこんな事までする女だったとはな…父さんが選んだからって我慢してたけど…もう無理だ。婚約は破棄させてもらう。この子は俺のところに連れて行くからな」
「へぇ、言うようになったじゃない。私がどんなに冷たくしてもバカみたいに明るく笑ってたあなたが…ねぇ」
「…笑顔は最大の武器であり、人を変える道具でもある。俺はお前に変わってほしかったんだよ、リティシア=ブロンド嬢。誰にでも優しく笑いかける女の子に、なってほしかった」
完全にリティシアに失望した王子は目を伏せ、悲しげにそう呟くのだが…当然性根が腐っているリティシアに届くはずがない。
「何を言っているのか分からないわ。さっさとそのみすぼらしい女を連れていきなさい。こんなのがいいなんてあんたの趣味には心から軽蔑するけどね」
何一つ思いが届かぬ婚約者に王子は嘆き悲しみ、しかしこの心優しき王子も遂にリティシアを突き放す判断を下し、主人公を連れて逃げ出すのだ。
この世界では愛称で呼ぶ事は親しみ深い相手である象徴となる。リティシアは奴隷の意を込めて使用し、王子の事を一方的に呼んでいた。一方的に呼んでいる事が知られれば社交界では恥となる。
リティシアは王子に愛称で呼べと生意気にも命令を下すのだがそれをやんわりと否定し、逆に王子は彼女に愛称で呼ぶのを止めるよう勧めるのだった。
…結論から言えば、王子は結局最後まで自身の婚約者を愛称で呼ぶことはなかった。彼女が処刑される、最期まで。
…正確に言うとそこでもしぶといリティシアは命からがら牢屋から逃げ出し婚約者を連れ去った主人公の命を奪おうとするのだが最終的に彼女の隠された魔力が発動しリティシアは跡形もなく消し炭にされてしまう…というストーリーだったのだが。
何故こんな小説を思い出したかというと…しかも無駄に悪役視点多めで思い出したかというと…今後の私の未来を知りたかったからだ。
私は間違いなく悪役令嬢リティシア=ブロンドに転生している。
初めは見惚れて鏡を食い入るように数分間見つめ続けた私であったが、その姿にはどうも見覚えがあった。…そして記憶が鮮明になっていくにつれ私の顔はどんどん青ざめていく。
小説、『悪が微笑む』において悪役令嬢リティシア=ブロンドはそれはもう凄まじい勢いで主人公に嫌がらせを繰り返すのだ。
主人公は生まれつき魔力をもたない少女だった。正確には、世間も、そして自分自身もそう思っていた。この世界では魔力が人の価値をそのまま表すと言っても過言ではない。その為に彼女の味方となる者は現れなかった。ただ一人王子を除いては。
リティシアは魔力に恵まれ経済的にも恵まれた少女であり、一人娘の彼女は両親に甘やかされ育っていったとんでもない我儘放題の娘だ。
彼女は貧相な家庭に生まれブロンド家のメイドとして働いていた主人公を魔力のない卑しい女だと嫌いそれはもう滅茶苦茶に虐めるのだ。
…この世界で最も重視される魔力。それをもたぬ主人公はリティシアにとって格好の的だったのである。
ある時は主人公のメイド服に珈琲のシミをわざとつけ、主人公が涙するのを見て嘲笑った。
更に不幸なことに、明らかにお嬢様から嫌われている主人公は他のメイド達からも仕事を押し付けられた。
人一倍働かされる主人公に追い打ちをかけるように彼女は薄汚れた数十枚のドレスと宝石を投げつける。全て汚れ一つなくなるまで洗い、宝石を縫いつけておけ、と。
ただでさえ洗濯や掃除に追われる身であるのにお嬢様の世話まで全て一人で任された主人公だったが、そこは流石主人公だ。手先の器用さを上手く使い見事忙しい仕事の傍ら、数日でやり終えた。
…皮肉にも、それがまたリティシアに嫌われる要因となってしまったのだが。
こんな虐めを繰り返した結果、自分の婚約者である心優しい男性からも見放される事となる。
根っからの悪役令嬢リティシアの婚約者は…なんと一国の王子であった。
しかも彼は一人息子である為王になるのは確実。だが彼女は次期王となる王子をあろう事か所有物としか見ていなかった。その思いがそのまま伝わったのか、王子はリティシアに対し当然好印象を抱くことはなかった。
リティシアが床を雑巾がけする主人公を乱暴に蹴り飛ばした直後に、彼は現れる。
その衝撃の光景にすかさず豪奢なドレスの少女を押しのけ汚れたメイド服の少女へ手を差し伸べる心優しい王子の姿に主人公は目を丸くする。
しかし彼女が驚いてしまうのも無理はない。彼女を優しく丁重に扱い彼女の悲しみを理解してくれるのは亡くなった両親しかいなかったからだ。
その瞬間から彼女の運命の歯車は動き出す。
「まさかこんな事までする女だったとはな…父さんが選んだからって我慢してたけど…もう無理だ。婚約は破棄させてもらう。この子は俺のところに連れて行くからな」
「へぇ、言うようになったじゃない。私がどんなに冷たくしてもバカみたいに明るく笑ってたあなたが…ねぇ」
「…笑顔は最大の武器であり、人を変える道具でもある。俺はお前に変わってほしかったんだよ、リティシア=ブロンド嬢。誰にでも優しく笑いかける女の子に、なってほしかった」
完全にリティシアに失望した王子は目を伏せ、悲しげにそう呟くのだが…当然性根が腐っているリティシアに届くはずがない。
「何を言っているのか分からないわ。さっさとそのみすぼらしい女を連れていきなさい。こんなのがいいなんてあんたの趣味には心から軽蔑するけどね」
何一つ思いが届かぬ婚約者に王子は嘆き悲しみ、しかしこの心優しき王子も遂にリティシアを突き放す判断を下し、主人公を連れて逃げ出すのだ。
この世界では愛称で呼ぶ事は親しみ深い相手である象徴となる。リティシアは奴隷の意を込めて使用し、王子の事を一方的に呼んでいた。一方的に呼んでいる事が知られれば社交界では恥となる。
リティシアは王子に愛称で呼べと生意気にも命令を下すのだがそれをやんわりと否定し、逆に王子は彼女に愛称で呼ぶのを止めるよう勧めるのだった。
…結論から言えば、王子は結局最後まで自身の婚約者を愛称で呼ぶことはなかった。彼女が処刑される、最期まで。
…正確に言うとそこでもしぶといリティシアは命からがら牢屋から逃げ出し婚約者を連れ去った主人公の命を奪おうとするのだが最終的に彼女の隠された魔力が発動しリティシアは跡形もなく消し炭にされてしまう…というストーリーだったのだが。
何故こんな小説を思い出したかというと…しかも無駄に悪役視点多めで思い出したかというと…今後の私の未来を知りたかったからだ。
私は間違いなく悪役令嬢リティシア=ブロンドに転生している。
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