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訓練場
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竜は早すぎず、遅すぎず適度な速度で飛んでいったにも関わらず、私が予想していたよりずっと早く訓練場へと辿り着いた。そこは広大な敷地の周りに結界が張られた、至ってシンプルな造りであった。
アレクシスの話に集中していたせいで、周りの景色をあまり見ていなかったのだが…うっすらと見えた眼下に広がる景色は眩しい程に綺麗な風景としか形容の仕様がなかった。
美しい王国に優しい心を持つ王子様がいるとは、まるでおとぎ話の世界ね。当然、王子と結婚するのは可愛らしい美少女…主人公なんでしょうけど。
そもそもここは主人公とアレクの為に作られた世界なんだから当然と言えば当然か。私の出る幕なんて初めからないのよね。
…寂しいなんて感じる暇はないわよ、私。私がしなければいけない事は寂しがることなんかじゃない。悪役令嬢の役を全うするの。
リティシアとアレクシスの関係がどんなに改善しようと所詮は悪役令嬢と男主人公(第二の主人公)。決して結ばれる事は…ないのだから。期待なんてするだけ無駄なのよ。魔法を使える様になって、出来るだけ早く彼の前から…去らなければ。
心ここにあらずといった状態でアレクシスに手を借りながら竜から降りると、彼は「…リティシア、大丈夫か?」と声をかけてくる。
「…えぇ。私がこんな事で怖がるわけないでしょう?」
「やっぱり怖がってたんだな。…ごめん、無理矢理乗せるつもりはなかったんだ。やっぱり俺が運んでくれば良かっ…」
「嫌よ。何度も言わせないで。貴方なんかが私に触れられるとでも思ってるの?」
危ない危ない。墓穴を掘ったわ。自分から怖がってた事を報告してしまうなんて悪役令嬢ランクが一下がってしまうわね…。…そんなランク聞いた事ないから今自分で作ったのだけれど。
…もし王子ランクが存在するならアレクシスは間違いなくカンストしてるわ。絶対に。
…私、一体何の話をしてるのかしら。
「そんな事は思ってないけど、お前が怖がったり嫌がるような事はしたくないからな。遠慮せず言ってくれよ」
「だから貴方に触れられるのが嫌だって言ってるじゃない」
「…さっきは普通に俺の手を取ったのに?それにパーティの時だって…」
「あれは…私の情けよ。仕方なく取ってあげたの。」
「…そうは見えなかったけどな?」
「うるさいわね。これ以上私を疑うなら殴るわよ」
待って、これじゃ私悪役令嬢じゃなくて暴力令嬢だわ…。気をつけないと。ドジっ子令嬢はまだ許されるけど暴力令嬢なんか即処刑に決まってるわ。本当に演技って難しいのね…。
「いいから始めるわよ。魔法の練習」
「そうだな。リティシアに殴られる前に始めるか」
「えぇそうよ私に殴られる前に……いえそれは冗談よ」
「なら良かった」
いつもの優しい柔和な笑みを浮かべる彼を前にして、私は少し違和感を覚える。
気の所為せいかしら、アレクシスが段々私に言い返す様になったような…。いやきっと気の所為よね。
「じゃぁとりあえず…もう一回教科書を見てくれ」
アレクシスはこちらに水の膜を飛ばすと、本が私の手の上に上手く落ちるように調節してくれる。本は丁度先程のページが開かれていた。
私は言われるがままに本の文字を目で追っていく。
『リフレイア』…炎属性の呪文。この呪文以外で炎の攻撃魔法を使う事は不可能である。これは応用する事でいくらでも進化でき、便利に使う事が出来る。また炎属性の者は、他の属性の魔法を使う事は出来ない。ただし、闇属性を除く。
…この少し後に闇属性のページも存在するみたいだけど光属性と同じで詳細は不明、としか書かれてないのよね。闇属性は他の属性と置き換えることが可能だから…そもそも生まれついての闇属性という人がいないのかもしれないわ。
…ちょっと待って、置き換えることができるって事が判明してるなら誰かが試していてもおかしくないじゃない?なのに試してみた結果とかは何処にも書いてないわ。…試すなって事?まぁ闇属性なんて聞くからに怪しいし誰も試さないわよね。きっとそれのせいだわ。
「…リティシア?ぼうっと教科書を見つめてどうしたんだ?そんなに詳しい事は書いてないけど、絵が書いてあるから分かりやすいかなと思ってそれを選んだんだ」
「…あぁ、ごめんなさい。…?…絵なんかないわよ」
「その呪文の文字を指で擦なぞってみてくれ」
「指で…?」
リティシアの綺麗な指を動かしそっと『リフレイア』の文字を撫でてみる。私の身体から何かが抜けていくような不思議な感覚を覚えたかと思うと、空中に魔道士のような男性の絵が浮かび上がる。
長いローブを羽織った魔道士の男性は「リフレイア!」という吹き出しを出し、手の平を上に向け、炎を呼び出している。
「その本にはその属性の魔力に反応してやり方を絵で教えてくれる魔法がかけられているんだ。」
なるほど、今身体から抜けてったものが魔力って訳ね。
「こんなの見なくても分かるわよ」
「呪文を唱えずにやろうとすると魔力が上手くコントロール出来なくて危険だ、とか色々教えてくれるぞ」
「貴方が全部教えられるならこんな教科書いらないじゃない」
どう考えても教科書は邪魔になっちゃうと思うのよね…。アレクシスが完璧に記憶してるならそれを教えてほしいんだけど…?
アレクシスの話に集中していたせいで、周りの景色をあまり見ていなかったのだが…うっすらと見えた眼下に広がる景色は眩しい程に綺麗な風景としか形容の仕様がなかった。
美しい王国に優しい心を持つ王子様がいるとは、まるでおとぎ話の世界ね。当然、王子と結婚するのは可愛らしい美少女…主人公なんでしょうけど。
そもそもここは主人公とアレクの為に作られた世界なんだから当然と言えば当然か。私の出る幕なんて初めからないのよね。
…寂しいなんて感じる暇はないわよ、私。私がしなければいけない事は寂しがることなんかじゃない。悪役令嬢の役を全うするの。
リティシアとアレクシスの関係がどんなに改善しようと所詮は悪役令嬢と男主人公(第二の主人公)。決して結ばれる事は…ないのだから。期待なんてするだけ無駄なのよ。魔法を使える様になって、出来るだけ早く彼の前から…去らなければ。
心ここにあらずといった状態でアレクシスに手を借りながら竜から降りると、彼は「…リティシア、大丈夫か?」と声をかけてくる。
「…えぇ。私がこんな事で怖がるわけないでしょう?」
「やっぱり怖がってたんだな。…ごめん、無理矢理乗せるつもりはなかったんだ。やっぱり俺が運んでくれば良かっ…」
「嫌よ。何度も言わせないで。貴方なんかが私に触れられるとでも思ってるの?」
危ない危ない。墓穴を掘ったわ。自分から怖がってた事を報告してしまうなんて悪役令嬢ランクが一下がってしまうわね…。…そんなランク聞いた事ないから今自分で作ったのだけれど。
…もし王子ランクが存在するならアレクシスは間違いなくカンストしてるわ。絶対に。
…私、一体何の話をしてるのかしら。
「そんな事は思ってないけど、お前が怖がったり嫌がるような事はしたくないからな。遠慮せず言ってくれよ」
「だから貴方に触れられるのが嫌だって言ってるじゃない」
「…さっきは普通に俺の手を取ったのに?それにパーティの時だって…」
「あれは…私の情けよ。仕方なく取ってあげたの。」
「…そうは見えなかったけどな?」
「うるさいわね。これ以上私を疑うなら殴るわよ」
待って、これじゃ私悪役令嬢じゃなくて暴力令嬢だわ…。気をつけないと。ドジっ子令嬢はまだ許されるけど暴力令嬢なんか即処刑に決まってるわ。本当に演技って難しいのね…。
「いいから始めるわよ。魔法の練習」
「そうだな。リティシアに殴られる前に始めるか」
「えぇそうよ私に殴られる前に……いえそれは冗談よ」
「なら良かった」
いつもの優しい柔和な笑みを浮かべる彼を前にして、私は少し違和感を覚える。
気の所為せいかしら、アレクシスが段々私に言い返す様になったような…。いやきっと気の所為よね。
「じゃぁとりあえず…もう一回教科書を見てくれ」
アレクシスはこちらに水の膜を飛ばすと、本が私の手の上に上手く落ちるように調節してくれる。本は丁度先程のページが開かれていた。
私は言われるがままに本の文字を目で追っていく。
『リフレイア』…炎属性の呪文。この呪文以外で炎の攻撃魔法を使う事は不可能である。これは応用する事でいくらでも進化でき、便利に使う事が出来る。また炎属性の者は、他の属性の魔法を使う事は出来ない。ただし、闇属性を除く。
…この少し後に闇属性のページも存在するみたいだけど光属性と同じで詳細は不明、としか書かれてないのよね。闇属性は他の属性と置き換えることが可能だから…そもそも生まれついての闇属性という人がいないのかもしれないわ。
…ちょっと待って、置き換えることができるって事が判明してるなら誰かが試していてもおかしくないじゃない?なのに試してみた結果とかは何処にも書いてないわ。…試すなって事?まぁ闇属性なんて聞くからに怪しいし誰も試さないわよね。きっとそれのせいだわ。
「…リティシア?ぼうっと教科書を見つめてどうしたんだ?そんなに詳しい事は書いてないけど、絵が書いてあるから分かりやすいかなと思ってそれを選んだんだ」
「…あぁ、ごめんなさい。…?…絵なんかないわよ」
「その呪文の文字を指で擦なぞってみてくれ」
「指で…?」
リティシアの綺麗な指を動かしそっと『リフレイア』の文字を撫でてみる。私の身体から何かが抜けていくような不思議な感覚を覚えたかと思うと、空中に魔道士のような男性の絵が浮かび上がる。
長いローブを羽織った魔道士の男性は「リフレイア!」という吹き出しを出し、手の平を上に向け、炎を呼び出している。
「その本にはその属性の魔力に反応してやり方を絵で教えてくれる魔法がかけられているんだ。」
なるほど、今身体から抜けてったものが魔力って訳ね。
「こんなの見なくても分かるわよ」
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