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自信
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「じゃ、もう寒いから帰るわ。殿下を迎える準備をしなきゃだしね。」
アルターニャは軽く身震いすると派手なストールを自分の胸の辺りまで引き寄せる。
そう言われてみれば私も少し寒い気がする。風邪を引いてしまう前に帰らなければ。
「あの手紙は大事にとっておきなさい。ルトレット国から貴女に送る最後の手紙でしょうから」
私がもし皇后になれば隣国から手紙が年に何通も届く事であろう。エトワール国はルトレット国と友好関係にあるはずだから。
しかし私が皇后にならなければ…つまりアレクシスと結婚しなければ隣国から手紙を貰うことはない。彼女はそれを言いたいのだろう。
確かにそうだ。私は近い将来そうなることであろう。だが…アルターニャ王女が隣国からの手紙を受け取る側になる訳ではない。
皇后になれるのは…主人公…ヒロインだけなのだから。
「…そうですね。大切に保管しておきます」
私は適当に肯定の意を示しておいたが、脳内ではまるで違う事を考え始める。
あの手紙は無難に燃やすべきか?いやそれだけだとなんか勿体ない気がするわ。
シュレッダーとかあれば是非いれたいんだけど…そんなものはなさそうだし、アーグレンの剣で真っ二つにしてやろうかしら。
…そうね、やっぱり切った後に私の魔法の実験台にしましょう。それが一番良いわ。
…手紙…ん…?ちょっと待って。
とんでもない事に気づいたわ。
私に背を向け帰ろうとするアルターニャに私は疑惑の声を投げかける。
「ちょっと待ってください、王女様…今日殿下と会う予定を作ったんですよね?それなのにどうして今日私に手紙を出したんですか?明日殿下と会う予定が出来るかどうかなんて…分からないじゃないですか。」
今日アレクシスと会う予定を作った彼女が、今日私に手紙を出したとなると…必然的に今日より早く手紙を書いたことになる。
となると彼女とアレクシスが会う約束が出来たのは私に手紙を書いた後の話になる訳で…どうしても時系列がおかしなことになってしまうのだ。
もし仮に約束が出来なかったら…ただの私とアルターニャの対談になってしまうんだもの。
…まさか、未来が分かっていたとでもいうのかしら?
「あぁ、そんなこと?自信があったからよ。殿下が私の誘いを断らないっていう自信がね」
誘いを断られない自信があるって…相当な自信家なのね…。私は呆れて「そうですか…答えてくださって有難うございます」と完全な定型文を話し、その場を去ろうとする。
しかし彼女はポツリと…最もらしい理由を口にする。
「明日は私の…誕生日なの」
「…え」
なるほどね…それじゃアレクシスも断るに断れないはずだわ。
周りの家臣達が後日にしないかという説得を泣く泣く諦める様子が非常によく目に浮かんだ。
「おめでとうございます、アルターニャ王女様」
「やめてよ貴女に祝われてもちっとも嬉しくないんだから」
じゃぁその思いっきり緩んでいる口元はなんなのかしらね…満更でもない表情だわ。
「殿下は毎年私の誕生日をお祝いしてくださるんだけど…今年は私のお城で盛大にお祝いしてもらおうと思うの。要は二人だけの誕生日パーティーよ」
「両国の平和はどうしたんですか?」
「そんなのどうだっていいわよ私は殿下に私の誕生を祝ってほしいだけなんだから。でもそう言っておけば殿下も来なきゃって思うでしょ?だからそう言っただけ。」
アルターニャ…アレクシスが来れば理由はもう何でもいいって訳ね。大好きな人に誕生日を祝ってほしいか…まぁ分からなくもないわね。
…リティシアの誕生日はいつだったかな。
「貴女は誘わないけど悔しかったら来てみなさい。貴女の前で殿下を奪ってやるんだから」
「望むところです。また後日…お会いしましょう」
できることなら会いたくはないがどうせ彼女とは今後も顔を合わせることになるであろう。
私が皇后になることはないが…アレクシスの婚約者である限りはあちらの方から関わってくるはずだ。
アルターニャは私の言葉に返事する事なく一瞬眉を顰めた後にこちらに背を向けて歩き始める。もう私と話すつもりはないらしい。
全く…王女様って偉いのね。
去っていく彼女を呆然と見つめ、完全にその姿が見えなくなった頃、背後から聞き覚えのある声がかかる。
「…公女様」
振り返るとそこには複雑な表情を浮かべるアーグレンが立っていた。彼はずっと私を影で見守っていてくれたのだろう。
私は彼の顔を見るなり深いため息をつく。このため息は勿論彼に向けてではない。
「全く、何を伝えたいのかまるで分からなかったわ。恐らく…私を嫉妬させたかったんでしょうけど。」
私はきつく腕を組み、いかにも面倒だという様子を露わにする。
それを見たアーグレンは肯定も否定もせずにただ真剣な眼差しをこちらに向けてくる。
…なんでそんな顔をしているの?
アーグレンなら肯定してくれると思ったんだけど…?
アルターニャは軽く身震いすると派手なストールを自分の胸の辺りまで引き寄せる。
そう言われてみれば私も少し寒い気がする。風邪を引いてしまう前に帰らなければ。
「あの手紙は大事にとっておきなさい。ルトレット国から貴女に送る最後の手紙でしょうから」
私がもし皇后になれば隣国から手紙が年に何通も届く事であろう。エトワール国はルトレット国と友好関係にあるはずだから。
しかし私が皇后にならなければ…つまりアレクシスと結婚しなければ隣国から手紙を貰うことはない。彼女はそれを言いたいのだろう。
確かにそうだ。私は近い将来そうなることであろう。だが…アルターニャ王女が隣国からの手紙を受け取る側になる訳ではない。
皇后になれるのは…主人公…ヒロインだけなのだから。
「…そうですね。大切に保管しておきます」
私は適当に肯定の意を示しておいたが、脳内ではまるで違う事を考え始める。
あの手紙は無難に燃やすべきか?いやそれだけだとなんか勿体ない気がするわ。
シュレッダーとかあれば是非いれたいんだけど…そんなものはなさそうだし、アーグレンの剣で真っ二つにしてやろうかしら。
…そうね、やっぱり切った後に私の魔法の実験台にしましょう。それが一番良いわ。
…手紙…ん…?ちょっと待って。
とんでもない事に気づいたわ。
私に背を向け帰ろうとするアルターニャに私は疑惑の声を投げかける。
「ちょっと待ってください、王女様…今日殿下と会う予定を作ったんですよね?それなのにどうして今日私に手紙を出したんですか?明日殿下と会う予定が出来るかどうかなんて…分からないじゃないですか。」
今日アレクシスと会う予定を作った彼女が、今日私に手紙を出したとなると…必然的に今日より早く手紙を書いたことになる。
となると彼女とアレクシスが会う約束が出来たのは私に手紙を書いた後の話になる訳で…どうしても時系列がおかしなことになってしまうのだ。
もし仮に約束が出来なかったら…ただの私とアルターニャの対談になってしまうんだもの。
…まさか、未来が分かっていたとでもいうのかしら?
「あぁ、そんなこと?自信があったからよ。殿下が私の誘いを断らないっていう自信がね」
誘いを断られない自信があるって…相当な自信家なのね…。私は呆れて「そうですか…答えてくださって有難うございます」と完全な定型文を話し、その場を去ろうとする。
しかし彼女はポツリと…最もらしい理由を口にする。
「明日は私の…誕生日なの」
「…え」
なるほどね…それじゃアレクシスも断るに断れないはずだわ。
周りの家臣達が後日にしないかという説得を泣く泣く諦める様子が非常によく目に浮かんだ。
「おめでとうございます、アルターニャ王女様」
「やめてよ貴女に祝われてもちっとも嬉しくないんだから」
じゃぁその思いっきり緩んでいる口元はなんなのかしらね…満更でもない表情だわ。
「殿下は毎年私の誕生日をお祝いしてくださるんだけど…今年は私のお城で盛大にお祝いしてもらおうと思うの。要は二人だけの誕生日パーティーよ」
「両国の平和はどうしたんですか?」
「そんなのどうだっていいわよ私は殿下に私の誕生を祝ってほしいだけなんだから。でもそう言っておけば殿下も来なきゃって思うでしょ?だからそう言っただけ。」
アルターニャ…アレクシスが来れば理由はもう何でもいいって訳ね。大好きな人に誕生日を祝ってほしいか…まぁ分からなくもないわね。
…リティシアの誕生日はいつだったかな。
「貴女は誘わないけど悔しかったら来てみなさい。貴女の前で殿下を奪ってやるんだから」
「望むところです。また後日…お会いしましょう」
できることなら会いたくはないがどうせ彼女とは今後も顔を合わせることになるであろう。
私が皇后になることはないが…アレクシスの婚約者である限りはあちらの方から関わってくるはずだ。
アルターニャは私の言葉に返事する事なく一瞬眉を顰めた後にこちらに背を向けて歩き始める。もう私と話すつもりはないらしい。
全く…王女様って偉いのね。
去っていく彼女を呆然と見つめ、完全にその姿が見えなくなった頃、背後から聞き覚えのある声がかかる。
「…公女様」
振り返るとそこには複雑な表情を浮かべるアーグレンが立っていた。彼はずっと私を影で見守っていてくれたのだろう。
私は彼の顔を見るなり深いため息をつく。このため息は勿論彼に向けてではない。
「全く、何を伝えたいのかまるで分からなかったわ。恐らく…私を嫉妬させたかったんでしょうけど。」
私はきつく腕を組み、いかにも面倒だという様子を露わにする。
それを見たアーグレンは肯定も否定もせずにただ真剣な眼差しをこちらに向けてくる。
…なんでそんな顔をしているの?
アーグレンなら肯定してくれると思ったんだけど…?
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