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誕生日パーティ編 その5
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︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎平然と言い放ったその言葉に私達は固まってしまった。イサベルは驚いただけだろうが、私とアーグレンに至っては驚きではなく呆れの要素の方が大きい。
そうだ、アルターニャはこういう人間なのだ。甘やかされて育った典型的な箱入り娘……。
アルターニャが「何よ?」と首を傾げると、私はこほんと咳払いをしてあくまでも冷静に呟いた。
「……そうですね。ありがとうございます。お帰り下さい」
「礼を言っておきながら帰れとは何事よ!?」
「……誕生日プレゼントは頂いたのでお帰り下さいという意味ですが」
「今のはどう考えても違う意味よね?私が邪魔だから帰れってことでしょ?そうは行かないわよ!」
「誰もそうは言ってないじゃないですか……」
アルターニャは意外に察しが良く私の言葉の裏を探り始めたがあくまでも単純なお礼であると言っておく。
本心?帰れ。アルターニャにこのパーティをめちゃめちゃにされたらたまったものじゃないからね。
この王女相手には喧嘩腰で話せるから楽しいと言えば楽しいけど……アレクを取られるかもしれないライバルにいつまでもいられるのは流石にいい気持ちはしない。
「……というか、ボケっとしてたら可愛いイサベルちゃんに一瞬で殿下を取られちゃうわよ?そうでなくても私に取られそうなのに」
「王女様に取られそうでは全くありませんしイサベルは……」
「私は、リティシア様と殿下の仲を心から応援しておりますのでそのような気持ちは一切ございません!私などが申すべきではないということは承知しておりますが、王女様も私と同じようにお二方を応援して下さればとても嬉しいです」
「それは無理なお願いねイサベルちゃん。だって私は…殿下を愛しているから」
「えぇっ!?」
「そんなに驚かないで。リティシアも知ってることよ。そうでしょ?」
だからと言って公言しないでくれるかな…本当に王女の権利を乱用するわねこの人は…。
私はアルターニャの言葉に無言で頷く。イサベルは心底不安そうに私の顔を見つめていた。
「…イサベル、私ももう知ってることだから気にしないで」
「で、ですが…」
イサベルは何度も私とアルターニャの顔を交互に見て表情を歪ませている。アーグレンはというと最早隠す気は微塵もないらしく、思い切り睨んでいた。
流石にやめなさいよ。相手は王女なのよ?
「イサベルちゃん、そんなに心配しないで。貴女の婚約者を奪ったりはしないから」
「……私の婚約者は奪うんですか?」
「あら、誰もそうは言ってないじゃないの。」
アルターニャは先程の私の台詞を上手く使い回すとにやりと笑ってみせる。私は彼女をただ無言で軽く睨みつけた。
……分かってはいたけどまだ諦めていないのね。まぁ私も奪えるものなら奪ってみせろみたいな挑発しちゃったし仕方ないけど。でもね、イサベル以外には例えどんなことをされても渡す気はないからね。
といってもアルターニャ一人じゃ何もできないでしょうけど。
昔のアルターニャならともかく今のアルターニャは私を面白いと考えているみたいだし……。なんだかんだこの関係を楽しんでいそうね。
まぁそれもまだ「結婚」じゃなくて「婚約」だからなんでしょうけど。
もし本当に私とアレクが結婚なんてしたら何をするか分かったものじゃないわ。でも、イサベルなら許してくれるでしょう。イサベルに譲れば全てが丸く収まるってわけね。
そう、全てが……。
「ねぇずっと気になってたんだけど、イサベルちゃん、そのドレス、リティシアとお揃いよね?」
「えっ?あ…はい、そうです。私がお願いして、リティシア様に貸して頂いたんです」
機転を利かせたイサベルは自分のドレスがアレクシスが私に贈ったものだということを伏せて伝えた。私の内心はこうだ。
ナイス、イサベル。
「やっぱり!ねぇ、リティシアじゃなくて私とお揃いのドレスを着ましょうよ!いいでしょ?」
「えっと…」
どうしてもイサベルと仲良くなりたいらしいアルターニャはとんでもない距離の縮め方をしている。アルターニャ、それじゃ逆効果よ。
「人の侍女にベタベタするのはやめてもらえますか?」
「だってリティシアよりずっと可愛いんだもの。生意気じゃなくて素直そうじゃない?私に頂戴よ~」
「あげません。というか物じゃありませんし。」
「あっそう。まぁそう言うと思ってたわ。じゃ、もう少しパーティを楽しんだら私は帰るわね。またね、イサベルちゃん」
「あっ、はい!お話ができてとても光栄でした!」
イサベルにだけ別れの挨拶をすると彼女はそのまま人混みに紛れて消えてしまった。彼女のその姿は嵐のように現れて嵐のように去る女としか形容の仕様がない。属性が風なだけあるわね。
……関係ないか。
「それにしてもアルターニャ王女が来るとは意外でしたね」
「ホントよ。以前の彼女ならパーティに来るどころか招待状をビリビリに破くか燃やすかしてたでしょうからね」
「そ、そんなに酷い王女様なのですか…!?」
「まぁ恋敵は誰でも嫌いになるでしょ…あの態度でも少しは進歩したのよ」
人混みに消えていったアルターニャを視線で追いながらイサベルは一人静かに呟いた。
「……そっか。きっとアルターニャ王女様はリティシア様と仲良くなりたいんですね。だからわざとリティシア様を怒らせるようなことを言って記憶に残るようにしたんだと……私にはそう見えました」
「……まさか。嫌いなだけよ」
そう返しながらも、私は無意識に彼女が消えていった人混みを見つめていた。
……それにしても公爵令嬢の誕生日パーティともなれば人が多い。アルターニャがどこにいるかなんて私にはもう分からなかった。
そうだ、アルターニャはこういう人間なのだ。甘やかされて育った典型的な箱入り娘……。
アルターニャが「何よ?」と首を傾げると、私はこほんと咳払いをしてあくまでも冷静に呟いた。
「……そうですね。ありがとうございます。お帰り下さい」
「礼を言っておきながら帰れとは何事よ!?」
「……誕生日プレゼントは頂いたのでお帰り下さいという意味ですが」
「今のはどう考えても違う意味よね?私が邪魔だから帰れってことでしょ?そうは行かないわよ!」
「誰もそうは言ってないじゃないですか……」
アルターニャは意外に察しが良く私の言葉の裏を探り始めたがあくまでも単純なお礼であると言っておく。
本心?帰れ。アルターニャにこのパーティをめちゃめちゃにされたらたまったものじゃないからね。
この王女相手には喧嘩腰で話せるから楽しいと言えば楽しいけど……アレクを取られるかもしれないライバルにいつまでもいられるのは流石にいい気持ちはしない。
「……というか、ボケっとしてたら可愛いイサベルちゃんに一瞬で殿下を取られちゃうわよ?そうでなくても私に取られそうなのに」
「王女様に取られそうでは全くありませんしイサベルは……」
「私は、リティシア様と殿下の仲を心から応援しておりますのでそのような気持ちは一切ございません!私などが申すべきではないということは承知しておりますが、王女様も私と同じようにお二方を応援して下さればとても嬉しいです」
「それは無理なお願いねイサベルちゃん。だって私は…殿下を愛しているから」
「えぇっ!?」
「そんなに驚かないで。リティシアも知ってることよ。そうでしょ?」
だからと言って公言しないでくれるかな…本当に王女の権利を乱用するわねこの人は…。
私はアルターニャの言葉に無言で頷く。イサベルは心底不安そうに私の顔を見つめていた。
「…イサベル、私ももう知ってることだから気にしないで」
「で、ですが…」
イサベルは何度も私とアルターニャの顔を交互に見て表情を歪ませている。アーグレンはというと最早隠す気は微塵もないらしく、思い切り睨んでいた。
流石にやめなさいよ。相手は王女なのよ?
「イサベルちゃん、そんなに心配しないで。貴女の婚約者を奪ったりはしないから」
「……私の婚約者は奪うんですか?」
「あら、誰もそうは言ってないじゃないの。」
アルターニャは先程の私の台詞を上手く使い回すとにやりと笑ってみせる。私は彼女をただ無言で軽く睨みつけた。
……分かってはいたけどまだ諦めていないのね。まぁ私も奪えるものなら奪ってみせろみたいな挑発しちゃったし仕方ないけど。でもね、イサベル以外には例えどんなことをされても渡す気はないからね。
といってもアルターニャ一人じゃ何もできないでしょうけど。
昔のアルターニャならともかく今のアルターニャは私を面白いと考えているみたいだし……。なんだかんだこの関係を楽しんでいそうね。
まぁそれもまだ「結婚」じゃなくて「婚約」だからなんでしょうけど。
もし本当に私とアレクが結婚なんてしたら何をするか分かったものじゃないわ。でも、イサベルなら許してくれるでしょう。イサベルに譲れば全てが丸く収まるってわけね。
そう、全てが……。
「ねぇずっと気になってたんだけど、イサベルちゃん、そのドレス、リティシアとお揃いよね?」
「えっ?あ…はい、そうです。私がお願いして、リティシア様に貸して頂いたんです」
機転を利かせたイサベルは自分のドレスがアレクシスが私に贈ったものだということを伏せて伝えた。私の内心はこうだ。
ナイス、イサベル。
「やっぱり!ねぇ、リティシアじゃなくて私とお揃いのドレスを着ましょうよ!いいでしょ?」
「えっと…」
どうしてもイサベルと仲良くなりたいらしいアルターニャはとんでもない距離の縮め方をしている。アルターニャ、それじゃ逆効果よ。
「人の侍女にベタベタするのはやめてもらえますか?」
「だってリティシアよりずっと可愛いんだもの。生意気じゃなくて素直そうじゃない?私に頂戴よ~」
「あげません。というか物じゃありませんし。」
「あっそう。まぁそう言うと思ってたわ。じゃ、もう少しパーティを楽しんだら私は帰るわね。またね、イサベルちゃん」
「あっ、はい!お話ができてとても光栄でした!」
イサベルにだけ別れの挨拶をすると彼女はそのまま人混みに紛れて消えてしまった。彼女のその姿は嵐のように現れて嵐のように去る女としか形容の仕様がない。属性が風なだけあるわね。
……関係ないか。
「それにしてもアルターニャ王女が来るとは意外でしたね」
「ホントよ。以前の彼女ならパーティに来るどころか招待状をビリビリに破くか燃やすかしてたでしょうからね」
「そ、そんなに酷い王女様なのですか…!?」
「まぁ恋敵は誰でも嫌いになるでしょ…あの態度でも少しは進歩したのよ」
人混みに消えていったアルターニャを視線で追いながらイサベルは一人静かに呟いた。
「……そっか。きっとアルターニャ王女様はリティシア様と仲良くなりたいんですね。だからわざとリティシア様を怒らせるようなことを言って記憶に残るようにしたんだと……私にはそう見えました」
「……まさか。嫌いなだけよ」
そう返しながらも、私は無意識に彼女が消えていった人混みを見つめていた。
……それにしても公爵令嬢の誕生日パーティともなれば人が多い。アルターニャがどこにいるかなんて私にはもう分からなかった。
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