悪役令嬢リティシア

如月フウカ

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誕生日パーティ編 その23

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「それは私が答えましょう。なんとですね……ついさっきです」


「さっき!?」


「はい。ちょっと色々あったんですよ」


「悔しい……私だって呼んでもらいたいのに!!」


「王女様……以前アレクが言っていたことをもうお忘れですか?そんなことをしたら私と王女様の二人と同時婚約をしたのかと誤解を生みますよ。アレクが浮気男だと思われてもいいんですか?」


「分かってるわよ、でも……というかそんな簡単に呼ばないでよ!」


「許可は本人から貰ってますけど」


「私から貰ってないでしょ!」


「えぇ……」


 どうして何の関係もない貴女から許可を得なきゃいけないのよ…。


 相変わらず滅茶苦茶なことを言う王女だが、それだけアレクのことが好きなのだろう。その気持ちは私も同じだし、彼女の謎の発言は広い心で見逃してあげるとしましょう。


 まぁ、発言は許すとしても、アレクだけは譲らないけどね。絶対に。


 私とアルターニャは初めこそ普通の声で話していたものの、段々小さな声で話していたため、アレクには後半の内容が聞こえておらず、何を話しているんだろうと不思議そうな顔をしている。


 そして突然私とアルターニャの肩に軽い衝撃が走る。


「王女様、リティの誕生日パーティは楽しんでいますか?」


「お母様……!」


「公爵夫人…!はい、とても楽しませて頂いております。リティシア嬢のお誕生日、誠におめでとうございます。」


 アルターニャは不機嫌そうな表情を一転させ、王女スマイルを浮かべるとそれは良かったとお母様が微笑む。


 騙されないでお母様!この王女は全然楽しんでなかったわよ!まぁ確かに恋敵の誕生日パーティを呑気に楽しむ訳はないけどね。私だって面白くないもの。


 そしてお母様は私、アレク、アルターニャの順番に顔を見ると、ある提案を口にした。


「リティ、殿下、それに王女様。もう一度ここへ運ぶから一緒に食べませんか?」


「……何をですか?」


「あっ、もしかしてさっきの特大ケーキですか?」


 アルターニャがアレクと話していた時と同様に瞳を輝かせ、そうお母様に尋ねる。お母様はふふっ、と笑みを零すと、「そうですよ、沢山食べて下さいね」と答えた。


「やったー!」


 思い切り腕を上にあげて飛び跳ねようとしたが、彼女はようやく人の目があることに気づきこほんと咳払いをする。スイーツとアレクには目がない王女なのであった。


「特大ケーキ……さっきリティが話してたものですね」


 アレクがそう呟くとすかさずお母様が口を開く。


「見たら驚きますよ。ここにいる全員で食べないと食べきれないくらい大きいんですから。あぁ、リティが一人で全部食べてもいいわよ」


「あの量を一人で食べるなんてドラゴンでも無理ですよ……」


 もしかして私がドラゴンだと思ってるとか……ってそんなわけないか。常識的に人間と人間からドラゴンが生まれるわけないものね。……何の話してるんだ私は。


「そうよね。じゃぁ皆で食べましょ。イサベルちゃんとアーグレン君はあっちで待ってるわ。皆も早く来てね。」


「はーい!リティシア、殿下、先に行ってますね!」


 先程までの浮かない気分はどこへやら、彼女はお母様と一緒に特大ケーキが運ばれる場へと歩いていった。
 

 残された私は王女に呆れつつもアレクへと手を伸ばし、「アレク、一緒に行きましょ」と声をかける。しかし彼は何かを考え込んだ様子で私が手を出していることにすら気づいていない様子を見せる。


「……アレク?」


「……リティ、約束してくれ。俺がいない時はアーグレンの側を絶対に離れないと」


「それは前に約束したじゃない」


「そうだけど……やっぱり不安なんだ。母さんや父さんが一体リティに何をしてくるのか……」


「大丈夫よ。アレクがいる時は……貴方が全力で護ってくれるんでしょ?アーグレンもアレクも相当強いんだから心配する必要ないわ」


「そう……だな。あと……もう一ついいか?」


「え、まだあるの?何?」


 アレクが今気にしてくれているのはそれくらいだと思っていたんだけど……他にもまだあるのね?


 私が軽く首を傾げ彼を見つめると、彼は分かりやすく視線を逸らし、自分の耳に手を当てる。


「……もう俺を訳もなく突き放したりはしないでほしい。その……やっぱり、リティに冷たくされるのは寂しいから」


「…もうしないわ。私に何を言われても平気な顔してたのに…本当は不安だったのね。ごめんなさい。貴方が嫌がることはもうしないと誓うわ。」


 そりゃそうよね、好きな人に冷たくされて傷つかない人がいる訳ないわ。アレクはただずっと平気なふりをしてただけだったのね。


 悲しそうな態度は確かに今までも見せていたけど、私を責めたり私を傷つけたりすることは絶対になかった。こうしてお願いという形で私に何かを頼んでくるのは初めてね。


 本音を話すのが照れるのか、なんとも言えない表情の彼に私は微笑む。この人は本当に可愛い人ね。私にはほんとにもったいない。


「……ありがとう、リティ。」


「お礼なんていいわ。当たり前のことだもの。今まで貴方に冷たくした分、今度は優しくするわ。それで許してくれる?」
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