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今日、世界で一番好きな人に告ります。2
しおりを挟むそんなこんなしているうちに時刻は20時を回っていた。
一緒にいる中で思いを告げる決心が固まったというのに、一歩が中々踏み出せない。
そんなこんなしているうちに時刻は20時を回っていた。
一緒にいる中で思いを告げる決心が固まったというのに、一歩が中々踏み出せない。
夕食も既に済ませてしまっていた。
「はー、楽しかったねえ。ごはんもめっちゃおいしかったし。」
外灯のある並木道を何でもない会話をしながら、行く当てもなくブラブラ歩く。
さっきから、よし言うぞ!と、ビビって口をつぐむを延々と繰り返し、
焦りを感じていた。早くしないとこのまま終わってしまう。
一度深く深呼吸し、頭をぼりぼりと搔いてから意を決して彼女に話を切り出す。
「先輩!」
「おう、どしたー?」
彼女がおれの顔を覗き込み、またおれは視線をそらしてしまう。
「…あの、ちょっと飲み行きません?
ほら、この前あそこの店行きたいって言ってたじゃないですか?」
「あぁ、そうだねえ……」
あれ?あんまり乗り気じゃない?
立ち止まることなく、「んー。」と言葉を漏らしながら考えている。
いやでもここは押さないと!
「付き合ってくれるなら今日はおれの奢りです。」
「へー?うーん…じゃあせっかくだから奢って貰っちゃおうかな。」
よかった…ホッと胸を撫でおろす、すこしヘタレな気もするが酒の力を借りよう。
シラフで顔を真っ赤にして告白なんて恥ずかし死ぬ。
10分ほど歩いて目的の店に到着する。
カウンター席に2人で座ると、おれは直ぐに強めの酒を注文し、グビグビと一気に飲み干した。
そして2杯、3杯、4杯と代わる代わるグラスを空けていく。
「ちょっと、そんな一気に飲むと身体に悪いよ?ベロベロになって歩けなくなっても
私担げないからね?」
とそんな俺を見かねて心配そうに見つめている。
「全然、大丈夫っすよ、おれ酒強いんで。」
彼女の忠告を無視して強引に飲み進める。当然飲みたいから飲んでいる訳ではない。
告白する時に赤くなった顔をごまかしたいのと、
頭のネジを1.2本外さなければ告白できないからなのだが…
おかしい、いくら飲んでも全く酔わない。
飲み進めているうちに酔いよりも先に吐き気が襲ってきた。
「ちょっとトイレ行ってきます…」
と言って席を立つと、それと同時にぐらっと世界が歪む。
バランスを崩しそうになったおれを見て、彼女が慌てて身体を支える。
どうやら立ち上がったところで急に酔いが回ったらしい、頭がグワングワンだ。
顔を赤くするどころか血の気が引いていた。
「もう、顔真っ青だよ。だから言ったのに。」
途中、店員さんが心配して手伝おうとしにきてくれたのだが、
ペコペコと頭を下げながらおれを引っ張っていってくれる彼女の横顔をおぼろげな意識で見つめていた。
「また、横顔か…」
「もう、ちゃんと付いてきてよ!」
フラフラの状態のおれを支えながらトイレまで連れて行ってくれる。
「着いたよ!ほら、外で待っててあげるから、ささっと吐いといで。」
「…待ってなくていいです。」
そんな心無い言葉を投げ捨て、酒と今日食べたものを全て吐き出した―
…どのくらいトイレにこもっていたのだろうか。
時間の感覚が分からない、意識がまだぼんやりしているが吐き気は収まっている。
今度は頭が痛くなってきたが、とりあえずトイレから出ねばと扉を空けると彼女がまだ待っていた。
「落ち着いた?」
…最悪だ、おれのゲロる声をずっと聴いていたんだ。
「…はい、すいません。」
下を向いたまま返答し、一緒に席に戻る。
ありえない…何やってんだおれは。
ここに来るまでは結構良い感じだったのに…
全部自分でぶち壊しちまった…
恥ずかしくて情けなくて、いつのまにかおれは泣いてしまっていた。
「そと出よ?」
そう言われ、気が付いた時には公園のベンチに1人で寝ころんでいた。
よくよく考えたら会計をしていない、彼女が払ってくれたのだろう。
その後ここまで連れて来てくれたのだろうか、だがその姿が見当たらない。
「呆れられちまったか…」
当たり前だ、あんな状態で呆れない奴なんていない。
もう二度と一緒に遊びに行ってはくれないだろう。
その事実確認と悲しさから、またおれは顔を伏せて泣いてしまっていた。
その瞬間、何か冷たいものがおれの頬に触れる。
「うわっ!!」
間抜けな大声を出し、顔を上げ辺りを見回すと、彼女がおれの後ろで笑っていた。
「あはははっ!びっくりした?はい、お水。ん…まだ泣いてるの?」
何が起きているか分からないが、水を受け取りおれは直ぐに顔をそらす。
「帰ったんじゃなかったんですか?」
彼女は目を丸くしている。
「帰るわけないじゃん、こんな子置いて。襲われちゃったらどうするの?」
「いや、男ですから大丈夫ですよ。」
「そう?じゃあ置いてった方が良かった?」
「いえ…すいません…ありがとうございます…あ、お水のお金、
いや、さっきのお店のお会計!言ってください、払いますから!」
「いいよ今日は、また今度ね。それより体調どう、良くなった?」
「いや!払いますって、迷惑かけたのにお金まで!」
「いいの!それより体調は?」
「………はい、おかげさまで。」
まったく恰好がつかない。立場が無いとは正にこのことだ。
「よかった。となり座っていい?」
こくんと頷くと、おれの横に彼女は座った。
しばらくの間、会話の無い時間が流れる。
おれは彼女の横顔を視界の端に捉え、何を見る訳でも無くボーっと景色を眺めていた。
…彼女のことが好きだ。
真っすぐなところ、自分の為に、人の為に一生懸命になれるところ、
笑った顔も、怒った顔も全てが好きだ。
君を好きなやつのことをおれはいっぱい知ってる。
おれには釣り合わないって分かってる…そんなこと分かってる。
でも…
気持ちはちゃんと伝えたい。
表情や視線を変えずに、できるだけ冷静を装い、おれは喋り始める。
「先輩はかわいいです。」
「急にどうしたの?」
表情を変えずに返答がある、彼女もこちらを向かない。
「先輩のこと好きなやつをめっちゃ知ってます。」
「へー、わたしモテモテなんだ?」
無機質に答える。
「僕もです。」
「…そうなんだ、どこが?」
「……。」
「やっぱ顔?」
「………いや―」
おれが話そうとすると、それを遮るように彼女はしゃべり始めた。
「あ、ごめん、ちょっといじわるだったよね。…でも良くわかんないの。何でわたしのこと好きになるのか。
自分のことあんまり好きじゃないんだよね。
だからわたしのこと好きって言ってくる人が何で好きになるのか良く分からなくて……
ちょっと気持ち悪く感じちゃう時があるの。」
こんな低いトーンでマイナスのことを言う彼女は初めて見たから少し動揺した。
いや…よくよく考えてみたら当たり前だ、彼女も同じ人間なんだから。
「…空気悪くしちゃったね、ごめん。もう大丈夫だよね?私先帰るね。」
そんなこと言っても伝わる訳ないと思ったのか分からない。
でも彼女の目から光が消えていくのを見て思った。
ここで別れたら二度とまともに話せなくなる。
「ちょっと待ってください!」
「………。」
何の答えも持っていないのに、考えるより先に言葉が出ていた。
ただ何というか…納得できない、腑に落ちない、許せない気持ちになっていた。
「おれは先輩のことが好きです!自分に自信は無いけど…
でもその気持ちだけは絶対に他のやつには負けない気持ちで、それだけは自信があるんです。
だから先輩のことが好きじゃないって意見は聞き捨てできません!それが先輩自身でも!」
「…なに言ってんの?」
「正直、自分でも良く分かんないです。でも大好きな先輩をそんな顔したまま
帰したくない!だから聞かせてください!なんでそう思うのか!」
「………。」
少し迷いのある表情を浮かべているが、彼女の口から言葉は出てこない。
駄目だ、何でもいい、話し続けろ、何か引っかかってくれ!
「…今のおれはキモいですか?いいですよ、キモイと思ったらいくらでも思って頂いて!
でも先輩がさっきのことちゃんと話してくれるまで帰しませんよ!
どれだけ先輩が素晴らしいか、ちゃん理解してくれるまで!」
「ちょっと…」
彼女が周りを気にして辺りをキョロキョロ見回している。
おれが大声を出したせいで、周りにいた人たちが集まってきていた。
しかし、そんなものはもう関係ない。おれのボルテージは完全に上がっていた。
「そうですね!先輩は美人だし性格も良いから多くの人に言い寄られてきたでしょ?
でもそれじゃ響かなかった。自分の良さを理解できなかった。
だったら先輩の自分の嫌いなところを全部教えてください!
おれが全部、完璧に否定してあげます!」
いつの間にか周りには人だかりができていた。
「よっ!兄ちゃんいいね!いいね!青春だね!!」
そんな声援を真っ赤な顔で聞きながら、彼女から視線をそらさずじっと見つめる。
「おれは先輩には釣り合わない!でもおれが一番先輩の彼氏にふさわしい!
なぜならおれが一番先輩のことを知ってるから!
おれが一番幸せにできるから!!」
ヒュー、ヒューと声援や拍手が飛びかう。もう訳が分からない状態になっていた。
彼女もそんな状態に耐えきれなくなったのか、顔を真っ赤にしておれの手を掴んだ。
「もう!行くよ!」
人込みをかき分け、その場から足早に去ろうとする、
頑張れよー!と言う言葉を背に受け、おれは彼女に引っ張られていった。
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