レベル999の魔王にレベル1の召喚士が挑んだら

いつき

文字の大きさ
1 / 1

レベル999の魔王にレベル1の召喚士が挑んだら

しおりを挟む
魔王城。そこはかつて幾多の勇者が散っていった絶望の地。

そこに今、たった一人の少年が立つ。

レベル1。
職業:召喚士。
名前:ユウ。

戦士でも、勇者でもない。
だが、彼の背後には――無数の魔法陣が展開されていた。



第一防衛線:〈炎の獄将・グラド〉

「たかがレベル1が……ここを通れると思ったかッ!」

炎を操る将軍グラドが立ちはだかる。レベル850。炎の津波を召喚するが――

ユウが指を鳴らす。

「《同時召喚:A群・前列展開》!」

現れたのは、レベル5~10の低ランク召喚獣たち。スライム型防炎壁、防御特化のカメ型召喚獣、風精霊のバリア群――

100体が一斉に前線を張り、炎を分散・中和!

「数だけで……防いだと……!?」

「一体じゃ無理でも、100体なら話は別だよ。」

地面を走る冷却型スライムがグラドの足元を封じる。

「次!《B群・氷結突破部隊、発動!》」

20体の氷狼召喚獣が連携攻撃、氷柱を連打。グラドはついに動きを止め、ユウの前に崩れ落ちる。



第二防衛線:〈幻惑の女帝・セレネ〉

「少年……心を惑わせる術に、どれだけの数が通じるかしら?」

セレネの幻術が城内全体を覆い、ユウの精神に侵食を始める。

しかし――

「《C群:精神干渉対策・小型精霊群、展開》」

ユウの周囲に現れたのは、光・音・香りを持った1000体以上の小型精霊!

「“数が多すぎて”幻覚に集中できない……!? 私の術が乱れる……!」

「迷わせるなら、こっちも“情報の洪水”で対抗する。」

セレネは頭を押さえ、後退した。



第三防衛線:〈戦鬼双王・ギガン&ロック〉

二体の鬼が襲い掛かる!だがユウはもう詠唱を始めている。

「《D群・低ランク妨害部隊:起動》!」

針を飛ばす虫型召喚獣、糸を吐く蜘蛛型、粘液をまき散らすスライム種――計300体が一斉に突撃!

ギガンの斧が虫をなぎ払っても、次の瞬間にはまた10体現れる。

「なんだこの“物量”はァアア!!」

「パワーじゃ君たちに敵わない。でもね、“1000手先まで動く軍勢”なら話は別だ。」

粘液が槍を封じ、蜘蛛の糸が脚を縛る。最後は重ねがけの爆発型召喚獣でダウン!



最終戦:〈魔王バルザメル〉

「……ふむ。よくもまぁここまで“雑魚”を揃えたものだな。」

レベル999。魔王バルザメルが立ち上がる。

「たった1体で、貴様の千を薙ぎ払ってやろう。」

バルザメルが放つ一撃で、召喚獣が100体単位で消滅していく。

しかし、ユウの魔法陣は止まらない。

「《連続召喚・F群~L群まで、順次起動!》」

次々に現れる、雑多な召喚獣たち――精霊、魔虫、構造体、幻影、植物、紙兵、機械、粘体。

その数、総計――一万体。

「……なぜ、そんな低レベル召喚獣がこんなにも……!」

「全部、“契約してきた”。君に勝つためにね。」

魔王が大技を放てば、犠牲覚悟の召喚獣が身を投げる。即座に補充される。

1秒に10体死に、10体召喚される。

呼び出し。死。呼び出し。死。

1万の命が、1つの勝利のために動き続けた。

そして――

「今だ、全召喚獣一斉攻撃、《千連撃陣形・終式》!」

全方向からの物理・魔法・霊撃の雨あられ。

ついに――魔王が崩れる。

「くだらぬ……。数で……私が……!」



エピローグ

ユウは力尽きてその場に座り込む。

彼の後ろには、一面に召喚獣の残骸。けれどその中央に、まだ光る魔法陣。

「僕は……一度も、“自分”で攻撃してないんだよ。」

「でも――数は、力を超えることがある。」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...