意味がわかると怖い話 訪問者

意味がわかると怖い話 訪問者

ある日の夜。

一人暮らしの男の部屋に、ピンポーン、とインターホンが鳴った。

「宅配です」

男は首をかしげた。何も頼んだ覚えはない。

だがドアスコープを見ると、確かに宅配便の制服を着た男が立っている。

「荷物、ここに置いておきますねー」

そう言うと、配達員は荷物を置いて帰っていった。

男は不審に思いながらも、荷物を部屋の中に入れる。

箱の中身は……人形だった。
美しい女の人形。だが、妙に生々しい。

その夜。

寝ていると、耳元で「ありがとう」という声が聞こえた。

翌朝。

玄関の前に、またあの宅配の男が立っていた。

「昨日の荷物、受け取ってくれましたか？」

男はうなずいた。すると配達員は微笑み、こう言った。

「それ、届け先間違えちゃってたんですよ。昨日死んだ隣の部屋の女性宛だったんです。間違えて、そちらに……」

配達員は帰っていった。

男は青ざめた。――だって隣の部屋、空き室のはずだったのだから。

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【解説】

一見すると「宅配ミスの怪談」に思えるが――本当に怖いのは「隣の部屋が“空き室”なのに、なぜ配達員は『昨日死んだ隣の女性宛』と言ったのか」という点。

つまり、「隣人」は本来いないはず。だが、配達員には「昨日死んだ住人」が見えていた。もしくは本当に“いた”ということ。

さらに恐ろしいのは、荷物の中の“人形”――これが「その女性の成れの果て（ミイラ化した遺体）」である可能性。

だから「ありがとう」と耳元でささやいたのも、その“元隣人”だったのかもしれない。

この話には二重の恐怖が隠れている。
1. 本来存在しないはずの隣人が“いた”こと。
2. 届けられた荷物の正体。