イソギンチャクに転生したけど強かった

いつき

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イソギンチャクに転生したけど強かった

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目が覚めると、俺は触手だった。

いや、正確には「触手の集合体」だった。あれ?手も足もないし、動けない…?と思ったら、イソギンチャクに転生していたらしい。

「え、なんでイソギンチャク!?もっとこう、チートなドラゴンとか勇者とか…!」

そう叫びたくても声も出ない。周囲は暗く静まり返った深海。水圧がエグいのに、なぜか俺は平然としていた。周囲には誰もいない――と思ったら、近くを通りかかった深海魚たちが、俺の触手に触れた瞬間、感電して気絶していく。

「……は?」

どうやらこの体、とんでもなく毒が強いらしい。しかも動けないと思っていたら、触手の先で海流を読んで自在に方向を変え、海底を滑るように移動できる。

俺、強いんじゃね?

深海では「動かないのに誰も近寄らない謎の脅威」として、すでに伝説になっていたらしい。魚たちは俺を「ヌル=クラゲ神」と呼び、拝み倒してくる。

だが、ある日――その静寂は破られた。

浅瀬からやってきたサンゴ礁の覇者・メガクマノミが、深海に侵攻してきたのだ。派手な色に似合わぬ凶暴な性格、集団で押し寄せるその姿は、まるで海のギャング。

「ここは俺様たちの縄張りにする。どけ、触手野郎!」

クマノミ軍団が襲いかかる。が、その瞬間――

バチィィィィンッッ!

俺の触手が一閃、周囲50メートルに電撃が走る。クマノミたちは一瞬で失神し、メガクマノミだけが震えながら残った。

「な、なんだこのイソギンチャクは……!」

俺は動かない。いや、動く必要がないのだ。ただ、海流に合わせてわずかに触手をなびかせるだけで、メガクマノミの頭上に小さな毒の胞子が漂い、即・失神。

――終わった。

それ以来、浅瀬の魚たちは深海に近づかなくなった。海の秩序は戻り、俺は静かな日々を取り戻した。

深海の主?そんな大層なもんじゃない。ただのイソギンチャクさ。

でも—————この海で俺に触れられる奴はいない
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