最恐 百物語

いつき

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第十話目 ワクちゃんの兄弟

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放課後の図書室。
そこには、使われていない「倉庫」への小さな窓があった。

場所は図書室の奥、木製の本棚の裏。
普段は誰も気づかない。
だけど、ある日、カズヤがその窓を見つけた。

曇ったガラスの向こう。
埃まみれの、真っ暗な部屋。
でも、よく見ると……何かが、いる。

じっと、こっちを見ていた。

「えっ……なんだ、今の……?」

ガラスにはうっすら、手形。
しかも、それは内側からつけられたものだった。

それ以来、カズヤは“見られている”感覚に悩まされ始める。

家でも、学校でも。
気配を感じ、物音がし、物が勝手に動く。
ある夜、目が覚めると――自分の枕元に、“あの手形”がついていた。

「ヤバい……あの窓、見たからだ……」

翌日、図書室へ急いだカズヤ。
本棚の裏へ向かう。

だが――窓はなかった。

代わりにあったのは、小さなドア。
開けてはいけない、そんな直感が走る。
けれど、手は勝手にノブを回していた。

ぎぃ……

開いた先は、暗い部屋。
そこにいたのは、カズヤとまったく同じ顔をした“誰か”。

そいつが言った。

「――やっと、入れ替われるね」

ドアが閉まった瞬間。
静寂が戻る。

カズヤはそのまま戻らなかった。
いや、“彼のようなもの”は、今も学校にいる。

カズヤの姿で、カズヤの声で、何食わぬ顔で。

ただ、一つだけ違うのは――
「本棚の裏のドアを絶対に見せようとしない」ことだ。

誰かがその場所を尋ねると、にやりと笑って言う。

「……知らないよ。あんなの、最初からなかったでしょ?」
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