最恐 百物語

いつき

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18話目 宿儺の指 終わりの始まり

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俺は骨董屋で、奇妙な指の標本を手に入れた。
その指は人間のものとは思えないほど大きく、黒ずんで腐敗していた。
店主は「宿儺の指」と言い、絶対に触るなと警告したが、好奇心が勝った。



最初は普通だった。
だが、夜になると、指からじわじわと不気味な黒い霧が立ち上り、部屋の隅を漂い始めた。

眠れぬ夜、俺は夢の中で巨大な怪物に追われた。
怪物の顔は指のように歪み、無数の目と口が蠢いていた。



次の日、左腕に激痛が走り、見ると皮膚が裂けて黒い鱗が現れていた。
触ると、指が震え、俺の腕を締め付けるように巻きついた。



徐々に身体がおかしくなった。
視界が歪み、幻覚が見え始め、言葉が発せられなくなった。

友人たちは俺から距離を取るようになり、俺自身も狂気に飲み込まれていった。



ある晩、指は完全に俺の体に融合し、俺はもう人間ではなくなっていた。

黒い霧の中、俺の声が響く。

「宿儺の力、ここに在り。」

宿儺の指が身体に融合してから、俺はもはや人間ではなかった。
しかし、肉体は完全に崩壊しきることなく、腐敗と再生を繰り返しながら宙を漂っている。



意識は朦朧として、痛みも苦しみも感じ続ける。
どこかの暗闇の中で、俺は終わりのない迷路を彷徨い続けている。

声は聞こえない。助けも来ない。
ただ黒い霧と宿儺の指の痺れる感触だけが、俺を縛りつける。



時折、夢の中で自分の破片が散らばる光景が映る。
そして、その破片はまた一つの肉塊となり、俺の身体を形作っていく。

しかし、決して完全には戻らない。



俺は知っている。
この呪いは死を許さず、永遠の苦痛と孤独を強いる。

誰も救えない。誰も救えない。



終わりのない彷徨いの中で、俺の叫びはやがて黒い静寂に呑まれた。
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