強制的魔王

ほのぼのる500

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魔王誕生

5話

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コウキに強く言い切ってもらえたからか、なんとか落ち着いた。
不安がなくなったわけではないけれど。

『ごめん。もしかして不安にさせた?』

『あぁ、こんな所に1人で置いて行かれるのかと思った』

それだけは絶対に嫌だ。

『置いてって。……ごめん』

私が消えるという事はそういう事になるのか。

『もういい』

コウキ怒ったのかな?

『コウキ?』

ガガッガガッガガガガガガガ。

『なんだ?』

『分からないけど、絶対何かおかしいよね?』

「ガガガギャガー……が溜まりました。ガガッ名前決めにレッツ、チャレンジ! 何になるかな~」

『『えっ?』』」

名前?
さっき終わったはずだよね?
……もしかして、私の魔王名を決めるため?

『ハルカは消えない。魔王の名前を決める「これ」が出たんだから、大丈夫だ』

俺の名前はもう決まった。
となると、「これ」はハルカの魔王名を決めるためのモノだ。
俺たちはずっと一緒にいられる!

そうか、よかった。
私、消えなくていいのか。
魔王の名前を決める「これ」が現れたって事は、そういう事だよね?
……あんなに力説したのが恥ずかしいな。
知らなかったんだから仕方ないよね?

『ハルカ、ボタン見えているか?』

『大丈夫。見えてるよ。押すね』

目の前にあるボタンを押す。

ガチャガチャガチャ……ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン。

「おめでとう! 6個、手に入れれたよ! 次に行く?」

『コウキ、ボタンが増えた』

よかった。
私にも見える。

『今度は俺が見えない』

『そうなの?』

「あぁ、まだ回すんだろ?』

『その予定。出てくるカプセルの数で決めようかと思う』

『外れもあるし、3回は最低回したらいい』

俺が3回も回したんだから、ハルカも3回は回した方がいいだろう。

「ありがとう。だったら、そうさせてもらう」

「もう一度回しますか?」のボタンを押す。
すぐに「……が不足しています。ガガガガッ。溜まるまで待機します」という声が聞こえた。

『途中の詰まったような音が気になるね』

『そうだな。もしかしたら、本来1回で済むはずが2回必要だから混乱してるのかもな』

『初めから少しおかしな状態だったもんね」

コウキの自我が残っていたことに、あいつら驚いていた。
まぁ、すぐに消されそうになったけど。

『今、嫌なことに気が付いた』

『なんだ?』

『コウキの自我が残っているとわかった時、すぐに対処されたじゃない?』

『……確か、そうだったかな?』

うろ覚えだが確かにそうだったような?
俺が奴に話しかけると驚いた後、すぐに消すように指示を出したな。
そうだ、すぐに対処された。

『私がいることがばれたら、速攻で消されるんじゃない?』

コウキの時だって、向こうのミスなのにすごく不機嫌そうだった。
私がいることがばれたら、どうなるのだろう?
すごく嫌な未来しか思い浮かばない。

『そうだな。ばれたら、厄介なことになるかもしれないな』

『だよね? どうしよう?』

対応をしたくても、俺たちが今どんな状態なのかも不明だしな。
今できることはない。

『なぁ、ハルカ』

『何?』

『前の時はどうやって奴から隠れたんだ?』

『たぶんだけど、コウキの中に入った気がする』

『はっ?』

俺の中に入った?
えっと、どういう意味だ?

『今、私たちには実体がないでしょ? だから強く願ったらコウキの中に隠れられた……たぶん?』

なるほど。
実体がない今だからできる隠れ方って事か。

『なら、今は誰かの気配を感じたらすぐに俺の中に隠れろよ』

『いいの?』

ハルカが消されるよりはいい。

『あぁ、問題ない』

『ありがとう、一緒にいるのがコウキでよかった」

『だろ?』

…………

『ね~そろそろ3回目だよね?』

待つのに飽きた。
もうとっとと次へ行きたい。

「……が溜まりました。名前決めにレッツ、チャレンジ! 何になるかな~」

きた!
待ってました。

 『これで名前のガチャは終わりだな。よし、ハルカ押せ~!」

白いボタンを押すイメージを作る。
影が白いボタン触れると、ボタンがぐっと下に抑え込まれる。

ガチャガチャガチャ……ポン、ポン、ポン、ポン、ポン。

最後は5個かな。

『合計19個になった』

『それだけあれば外れがあっても問題ないな』

『うん。さて次~。長かったね』

あぁ、長かった。
しかも俺たちはこの場所から動くことができないらしい。
暇だからちょっと動こうとしたが、無駄だった。
動いた感覚がしない。
まぁ、動けたとしても、何も見えないのだから意味ないのだけどな。

『よしオープン!』

やばい、おかしなテンションになってるな。
ちょっと落ち着こう。

『はぁ、うそでしょ!』

『どうした? 何があった?』

ハルカの悲壮感漂う叫び声。
何かあったのか不安になる。

『外れが9個だった』

多すぎないか?
確か19個だと言っていたから約半分が空。

『……まだ10個あるから……ぷっ、大丈夫だろう。ククッ』

『ちょっとコウキ、笑ったでしょ!』

人の不幸を!
って、人じゃないのか?

『悪い。でも、運がなさすぎだろう。あはははは』

もう、笑いやがって!
でも、自分でも思う。
これは運がなさすぎる。

『本当に出てきた文字は一切見えないんだね』

『だろ? 綺麗に被さって見えないんだよ』

「出来た名前でレベルがアップするよ。あなたの運は私にお任せ!」という文字の下に隠されてしまった文字。
これは見せる気がないんだろうな。

『お願いだから、わかりやすい名前でお願い』

願ってから白いボタンを押す。
ポポポポン

「決定! あなたはアルフェ・ラ・マッキとなります」

……微妙な名前だな。
いいのか、悪いのかもよくわからない。

『悪い、なんだって』

コウキの声に目の前に表示された名前を口にする。

『アルフェ・ラ・マッキ』

コウキが沈黙する。
分かる。
なんとも言えないこの名前。
魔王名か、これで魔王の仲間入りって事になるのかな?
消える心配はなくなったけど、次は殺される心配か。

『アルフェ』

『へっ?』

コウキに魔王名を呼ばれると、ものすごく恥ずかしい。

『ハ、ハルカでお願いします』

うん、もともとの名前のほうがいいと思う。
魔王名とか恥ずかしすぎる。

『いや、これからの事を考えると、魔王名に慣れておいた方がいいと思う』

『なんで?』

これからの事?

『俺たちは恐らく魔王としては欠陥品だ」

そう、欠陥品。
奴らの思い通りになっていないのだから、間違いなく奴らからしたら欠陥品だろう。

『自我が残っている事、ここに魔王が2人産まれたた事、恐らくすべてが通常とは異なる状態のはずだ』

欠陥品か……。
名前を決める、あれは……ガチャでいいのかな?
ガチャも、途中でおかしな音が出て不気味だったもんね。

『だから本当の名前は隠しておきたい。周りに合わせて目立たないようにしたいんだ』

とりあえず、この世界のルールがわかるまで目立ちたくない。

『分かった。……ただ、ごめん。コウキの名前って何だっけ?』

そうなんだよな。
それが問題だ。

『悪い。俺も覚えていないんだ』

魔王名で呼びあおうと言っておいてそれは無い。

『ステータスが見られるようになったらわかると思う』

仕方ないか。
あの時は今よりもっと混乱していたから。

『分かった』

とりあえず私だけが魔王名で呼ばれることになるのか。
コウキと一緒に魔王で呼ばれたかったな。
そうすれば、恥ずかしさが半減したはずだ。
あ~、もう少し和名に近かったらもっと馴染みやすかったのに「アルフェ」なんて……はぁ。

『まぁ色々諦めろ、アルフェ』

ハルカの大きなため息に、笑いそうになるのを抑える。
名前に関しては仕返しされそうだ。
後の事を考えるなら、ここは我慢、我慢。
それより、俺の名前は何だったかな?
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