強制的魔王

ほのぼのる500

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12話

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「ここって外だよね?」

アルフェの声が微かに震えている。
まぁ、俺も怖くてビビってるけどな!
しかし真っ暗だな。

「たぶん外だろうな。風を感じるし」

暗くて何も見えないな。
もっと見やすくならないか?
じっと周りを見つめていると、視界が何かおかしくなる。
ピコン。
なんだ?
今、何か音がしなかったか?
それよりも、見え方がおかしい。
目をつぶって頭を数回横に振る。
目を開けると……凸凹した大地を見ることが出来た。
ただ、見え方が部屋の中とは異なる。
なんだ?
どこかで見たような……これって暗視スコープで見た映像に似ているな。
ネットで面白半分で調べた事がある。
そうだ、よく似ている。
ちょっと怖いが、これで暗闇でも見ることが出来るな。

「どうしたの?」

「暗闇でも見ることが出来る暗視スコープみたいな魔法? スキル? を手に入れたかもしれない」

「ウソ! すごい! どうやって手に入れたの?」

「どうって、見たいと念じたからか?」

「それだけ?」

「あぁ、それだけだな」

他に何かした覚えはない。
それにしても、普通に見るより遠くまで見ることが出来るんだな。
不思議なものだな。

「そうなんだ」

だったら私にも出来るかな?
何とか見れるようになりたい。
よし。
見たい、見たい、見たい……見えない。

「無理だけど」

「いや、俺に言われてもな」

あれ?
蛇の種類には夜行性もいたような。
という事は蛇の機能の1つだったりするのか?

「あ~、もしかしたら蛇の機能の1つかも。蛇には夜行性の種類がいたはずだから」

「そんな……期待したのに」

「悪い」

はぁ、仕方ないか。
あれ、そう言えば声が聞こえなくなってる。
なんでだろう?

「もう少し外に出てみるか。声も聞こえないし」

「そうだね」

ふらふら飛んで周りを見る。
何だろう、所々に赤い点がある。
そう言えば、この赤く見える事に何か意味があるのかな?
これまで赤く見えるのは、ラルグだけだったのに。
今は形が違うからラルグの見分けはつくけど、赤く見える物が増えてきたら困るな。

随分凸凹した岩が多いな。
ん? 
岩が動いた?
いや、それは無いか。

「ラルグ、何か見える?」

「岩がゴロゴロしてるぐらいだな、動いているモノはないから生き物はいないみたいだ。アルフェは何か分かるか?」

「ん~、なんだか赤い点がいっぱいある」

赤い点?
なんだそれは。
すごくいやな予感がするんだが。

「他に赤く見える物ってあるのか?」

「ラルグが長い赤い蛇型に見える?」

気になるから近づいてみたけど、赤いモノは結構大きかったんだな。
ん?
動いてる?
見間違いかな?

なんで疑問形なんだ。
赤い蛇型ね。
赤い……赤い点?
サーモグラフィーか?
だったら、赤い点は!

「アルフェ、離れろ!」

gyagyaggyaggyagya。

「えっ!」

目のまえの赤いモノから鳴き声が響きわたる。
次の瞬間、今まで動かなかった赤い塊が飛び掛かってくるのが見えた。
これって死ぬ?

「ぎゃー!!!!!!!」

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。
ピコン。

「うわっ!」

ボタ、バタ、ボタ、バタ、ボタ、バタ、ボタ、バタ。
ポン、ポン、ポン、ドサッ、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン。
ピコン。

体から何かがごっそりと抜けていくのが分かる。
これは死ぬ?
死ぬの?
死にたくないんですけど!

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、生きてる?」

私を襲い掛かってきたあのでかい塊は何処だろう?
周りを見るが、うん、見えない。
じゃなくて、赤い塊。
…………あれ、いない?
それに周りに点在していた赤い点が消えてる?

「ラルグ? えっ? ラルグ?」

周りを見渡すが赤い蛇型がいない。
え~、どこに行ったのこんな時に!
さっきまで近くに来てたよね。

「ラルグ」

疲れがたまったのかふらふらする。
でもラルグを探さないと。
うあ~しんどい。
でも、ここで倒れたらまた襲われるかもしれない。

「ん? あれは?」

蛇型の半分の大きさだけで赤い細長い物を見つけた。
ラルグより短い蛇型?
あれ?
土に埋まってる部分があるのかな?
なんだこれ。
ん~、近づくとまた襲われるかもしれないから、とりあえず放置でいいか。
それよりもラルグを探さないと。
そうとう疲れてるな、羽が動きづらい。
はぁ、頑張れ私!
ピコン。

「ん? 何か音がした?」

「あ゛~!」

「ぎゃー!」

キーーーーーーーーーーーーーン
ポン、ポン、ポン、ポン、ポン、ポン。

「アルフェ!」

「ん? ラルグ?」

声がした方へ見ると、土に埋もれた赤いモノがあった場所にラルグがいる。
そんなところにいたんだ。

「よかったいた! 探したんだから!」

「いや、俺。アルフェに殺されるところだったんだけど」

「はっ?」

アルフェの様子から気付いていないみたいだな。
しかし、すごかった。
あれが多分、超音波攻撃なんだろうな。
頭から爆発するかと思った。

「アルフェ、超音波攻撃で俺を含めた敵? を攻撃したからな」

「……うっそ~!」

えっ?
本当なの?

「ラルグ、ごめん。大丈夫?」

「あぁ、とっさに土に頭突っ込んだ」

土?
あの土に埋まっていたのがラルグだったのか。
蛇が頭を土に突っ込んでいたんだ。
ぶっさいく。

「おい、何かムカつくこと考えてないか?」

「いや? まったく」

なんでばれたんだろう?

「はぁ。アルフェ、なんでそんな軽薄な性格なんだ?」

軽薄な性格?
私が?

「俺を殺そうとしたと知ったのに、ショックを受けているように見えない」

そう言われればそうだな。
確かに、悪いなとは思うけど。
1人にならなくて良かったとは思うけど、あれ?
確かに薄情すぎるな。
こんな性格だったかな。

「魔王だから?」

「……そうなのか?」

だったら俺もそうなのか?
分からないが、仲間意識はあるぞ?

「アルフェにとって俺は仲間じゃないのか?」

「えっ? 仲間……同志かな」

仲間というより同志という関係がしっくりくる。
ラルグはもしかして仲間という感覚だたのかな。

「そうか。同志か」

確かにそれもあるな。
でも、ちょっとショックというか。

「えっと、ラルグ?」

gyagya。

「まだ生きてる敵がいるみたいだな」

周りを見ると岩だと思っていた物が1つふらふら動いているのが分かる。
恐怖を感じなかったので、するすると近づくと尻尾をその敵に向かって思いっきり薙ぎ払った。
バコン
ピコン

gya…………。

よし、動かなかなった。
それにちょっとすっきりした。

「ラルグ、大丈夫?」

「あぁ、アルフェ。ここに居る敵を見てくれ。何色だ?」

何色?
……見えない。

「ごめん、見えない」

「そうか、それならいいんだ。赤く見える物はあるか?」

赤く見える物?
さっきの……あれ?
無くなってる。
少し前までまだあったのに。

「えっと、近くにあったはずなのに無くなってる」

「あぁ。さっきの攻撃で死んだんだろう」

そう言えば、超音波攻撃したんだっけ?
本当に私がやったの?

「なんだかふらふらしてるな。大丈夫か?」

「疲れた。体が異様に重くて」

「攻撃魔法を使ったから疲れたんだろう。いったんあの部屋に戻ろう」

「うん」

良かった。
休める。
それにしても、私の攻撃でラルグを攻撃しないようにしないとな。
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