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異世界になんか行きたくないけど

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カチカチカチ

暗い部屋の中テレビの前で髪がぼさぼさのまま十夜(じゅうや)は1人ファタジーゲームをしていた。

カチカチ

スティックの音が部屋に響きわたる。

「このボス結構強いな」

十夜は学校に行く前1時間ほどファタジーゲームをするのが日課になっている
ファタジーゲームを始めたのは小学生六年生の時だった
友達のすすめで始めそれ以来ファタジーゲームをやり込んでいる

ゲームをやり終えると十夜が携帯で時間を確認して学校に向かった

「今日お昼どうすっかなー」

横断歩道の辺りでそんな事を言っていたら
信号が青に変わった

今日は焼きそばパンにしようかシャケおにぎりにしようか

「ん?」

妙に足が重い、いや動かない!なんだよなんなんだよ!怖くて後ろを見れない
足になんかくっついてるような気がしてならない

信号が赤に変わろうとしていた

「やべ!よし無理やりにでもひっこぬきゃなきゃ!
いっせーのーで!」

バタ

あぶねーなんだったんだ今の

後ろを振り返ると白い手のような物が下に下がっていくのが見えた

「うゎゎゎゎゎゎ!なんだこれ!
これが噂のお化けって奴か!」

十夜が驚いている間に手は下の方にゆっくりと下がって消えていった

「てか、もう赤じゃん!」

信号が赤に変わっているのに気づくとすぐさま横断歩道を渡り切った
この辺りは今の時間帯車があまり通らないため事故の心配はなかった

「なんだったんだ?見間違いかな?別に足も痛くないしあざもないし
はー、ゲームのやりすぎで目がおかしくなったのかな?」

十夜はそのまま学校へ行き何事もなく学校生活を送った

キーンコーンカーン

「よし!じゃ帰ってゲームの続きでもするか!」

そう言ってカバンからスマホを取り出して
十夜は音楽を聴き始めた

音楽を聴きながら鼻歌を歌っていた十夜
その前には朝通った横断歩道があった

「そう言えばここ、」

朝のことを思い出した瞬間急に足が止まった

ここを通らなくちゃ家には帰れない
勇気を出してダッシュで行けば何とかなるかもでもこの時間帯は車どうりが少し多くなる
万が一、朝みたいな事が起こったら事故に巻き込まれるかもだし‥

「よし!いくか!」

十夜は少し後ろに下がって青になるのと同時に一気にはしった

「うぉぉぉぉぉぉ!」

その時急に体が重くなった今まで感じたことの無いくらい体が重くなった

なんだよ!体がうごかねー!足にも何もついてないし!なんだよマジで!

ブッブー

トラック!トラックなんかこの辺りめったに通らないぞ!なんでこんな時に!

トラックはスピードを緩めるどころかスピードを上げてきている

止まれ止まれ止まれ止まれ!

ブッブー

バァン!

十夜の体が大きく空を飛んだ

死ぬ時に聞く最後の音がトラックのクラクションの音なんてついてねーな
次目が覚めたら魔王の前だったりして
まぁそんな事、天地がひっくり返ってもないだ‥ろ‥ど

俺の意識はその時完全に無くなった

「んで、天地がひっくり返った感想は?」

「正直なんとも言えない」

「はっはっは!そうかそうか!」

「笑い事じゃないだろ!俺はお前にころされたんだからな!」

そう、今俺が話しているのは魔王だ
見た目はツノが2本生えていて黒の服に黒のズボン顔はイケメンで若い感じがする
魔王から聞いた話によれば俺は魔王にこの異世界に強制的に転生させられたそうだ
また目も名前もそのままで、
この世界では転生より召喚の方が時間が物凄くかかるらしく手っ取り早く転生方式で俺をこの世界に呼んだらしい

「結構受け入れるの早くないか?」

「少しはビックリしてるけどあんたがなれなれしくて緊張がほぐれたんだ。あんた本当に魔王か?」

「あぁ、正真正銘の魔王だ!」

「そうなのか、それでなんで俺はお前によばれたんだ?」

「それは簡単な事さ、俺は魔王なって2000年以上この玉座で勇者が来るのを待っている。でも、この国ではそう簡単に勇者にはなれないらしくてな、なれたとしても途中の旅であっさり死んじまう弱い奴ばっかで、その時に他の世界から見つけたのがおまえだ!
お前は勇者になる素質がある!
そう俺は判断した。
まぁ実際見てみると弱そうで本当は少し損した気分だ!はっはっは!」

「勇者になったら絶対殺す!でも俺、あんたが言ってる事は正しいと思う。
俺はこんな弱そうな見た目だしいじめも受けてた。それでも心の支えになってたのがファタジーゲームでその中でも勇者を毎回使ってた。
でも友達に馬鹿にされて‥」

その時十夜の頭に過去の事の思いが浮かび上がってきた

「俺は本当は勇者が大好きだ!でも俺には勇者はふさわしくないんだ!」

「そんな事はない!自分の好きな物には胸を張って好きと言えるようにしろ!」

魔王の言葉に十夜は少し嬉しくおもってしまった

「勇者は魔王を倒す存在なのにその魔王から召喚されて魔王を倒す旅に出るってなかなか
レアな体験をさせていただきました」

少し呆れながら十夜は魔王に言った

「そうだろ!そうだろ!」

「魔王!俺勇者になる!勇者になってお前を倒してやる!」

十夜は今までの事を全て跳ね除け体が軽くなったのを感じた

「それで僕はこの後どうすれば、」

「ちょっと待ってろ」

そう言って魔王は何やら大きな金庫らしきところから何かを取り出してきた

「どうだこれ!俺様直々にお前のために編んだ服だ!これを来て冒険にいけ!」

「なんか普通だな、まぁ礼は言っておく、
ありがとう」

「いいって事よ!後この剣も持っていけ」

そう言って渡されたのは真っ赤な剣で所々金色の線が入っていた

「こんなかっこいいのもらっていいのか!」

「あぁ、それはかつて俺様が使っていた剣だまだまだ使えるから持ってけ!」

バシ!

そう言いながら魔王は十夜の背中を叩いた

「なにすんだよ!」

「まぁいいじゃねーか」

これだけ準備してもらった魔王にこれ以上怒ることも出来ずあっさり許してしまった

「じゃ行ってくる」

「あぁ!きーつけていけよ!」

自分にこの世界で生きる意味をくれた魔王に少し感謝していた

あっ、名前言ってなかったな

そう思うと後ろを振り返った

「俺は西木十夜だ!将来お前を倒す物だ!」

「そうか!覚えておいてやるよ!」

そう言うと十夜は魔王城を出て近くの町へ向かった
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