24 / 32
早まる鼓動
しおりを挟む
滝谷さんと別れた後は、姫乃ちゃんと二人で酔い覚ましがてら歩いて帰ることにした。
歩き始めの頃は足取りも不確かで、意味のない事を姫乃ちゃんに話しかけていたが、飲み屋から結構歩いて家までもう少しの距離になると、私の酔いも大分覚めてきた。
「この間とは逆の立ち場になったね」
この間二人で飲みに来た時には姫乃ちゃんが酔っ払いで、私がそれを心配する立場だった。
でも今は、私が酔っ払いで姫乃ちゃんが私を心配する立場に変わっている。
あれから二人の関係もだいぶ変わったなぁ。
そう思いながら姫乃ちゃんに気さくに話しかける。
なのに、姫乃ちゃんからはいつものような返事が返ってこない。
ほんのり頬はピンク色に染まってはいるけど、さっきの私のようにそこまで酔っ払っているわけではなさそうだ。
なのに、さっき私と再開した時のような不安そうな顔をしている。
今日は綾と二人で飲みに行ったはずだけど、それと関係しているのかも。
「綾とどんな話をしたの?」
姫乃ちゃんが不安そうにしている理由が知りたくて、さっきまでどんな事を二人が話していたのかを聞いてみる。
だと言うのに、姫乃ちゃんから返って来た言葉は予想外なものだった。
「和泉さんが思う、紗希先輩の幸せな将来について話をされました。」
はぁ?なにそれ。
私は困惑する。二人で話し合う内容がまさかの私についてで、しかもその内容が私の幸せな将来についてとは。
まぁ確かに、綾がわざわざ時間をとって話をしようとした時点で、私が関係するのかなとは思ったけど、内容が思いがけないものだった。
と言うか、綾が私の将来について真剣に考えていることに驚いた。
いつも私の事を心配してくれているけど、まさかそこまで考えてくれているとは思わなかった。
「それって詳しくいうと、どんな内容になるの?」
綾が考える私の幸せな将来とは一体どんなものなのか、とっても興味がある。
絶対に本人に聞いても教えてくれないもんね。
「和泉さんに、『あくまで私の主観だから絶対に紗季には言わないで』って言われているんですけど、どうします?
聞きます?」
う~ん、綾が言って欲しくないって思っている事を聞き出すのは憚られるなぁ。
でもすっごい気になるのも確かだ。
「ちょっとだけ、話の要約だけ教えてくれる?」
綾には悪いけどちょとだけならいいよね?
姫乃ちゃんは、少し考えた後に1文で話をまとめてくれた。
「えっと、要は紗希先輩を悲しませるようなことはするなっていう話でした。」
結局よくわからない。
でも綾が本当に私のことを考えてくれているのは感じるからよしとしましょうか。
「そっか…」
綾の優しに思わず目元が緩んでしまう。
「それにしても紗希先輩」
先ほどまでの態度とは打って変わり。
わざとのように、平坦な声をした姫乃ちゃんが真っ直ぐに私の目を見ながら話しかけてくる。
「あれだけ泥酔しないでくださいって言ったのに、なんであそこまで酔っ払っていたんですか?」
うっ、姫乃ちゃんには迷惑かけてないし、私は悪いことはしていないはずだ。
ただ、少しだけ飲みすぎて、意識がどこかに行きそうになっていただけである。
でも、姫乃ちゃんのこの突き刺すような視線を受けると、悪いのは私なのかという気がしてくる。
そのせいで、思わず言い訳めいた事を呟いてしまう。
「でもしょうがないんだよ…。仕事以外の場で滝谷さんと喋ったことないから何話せばいいのかわかんなくて…」
そう、しょうがなかったの!
私の会話のネタが滝谷さんと合う気がしなかったから、お酒の力を借りるしかなかったの!
「それなら、どうして二人で飲む事をokしちゃったんですか?」
「でも度々お誘いされたから断りきれなくてね…」
あそこまで執拗にお誘いを受けることがなかったから、どうやって断ったらいいのかわからなかった。
それに、会社と会社の付き合いもあるから下手な断り方もできないし。
「今までどうやって男性からのお誘いを断っていたんですか?それとも、まさか全部okしていたんですか!?」
「そんなわけないよ!大学時代は綾とほとんど一緒にいたからか誘われることはなかったの。社会人になって初めてだよ…」
私の言葉に、姫乃ちゃんは小さく頷く。
「なるほど、和泉さんがストッパー役をしていたって事ですね」
そうなのかなぁ?
単純に私に興味がある人がいなかっただけだと思うんだけど。
大学時代の私って、交友関係はめっちゃ狭くて、綾と数人の友人としか話してなかったんだよね。
だから、大学生になったら彼氏とかできるのかな?
ってちょっとドキドキしていたのに、綾との大学生活を満喫していたら気づいたら卒業していた。
まぁ綾って言う大切な友人ができたからいいんだけどね。
それでも最近は、このままだと一生彼氏もできないまま私の生涯が終了しそうな予感がして来ている。
だから、もしかしたら気が合うかもっていう可能性にかけて、滝谷さんと飲むことを承諾してみた。
まぁ実際には話が合う以前の問題だったけどね。
慣れないことはするもんじゃないね。
「でも、滝谷さんが私を狙っていたかどうかは分からないでしょ?」
そう言うと、姫乃ちゃんの目線に鋭さが増した。
えっ私何か間違ったことを言ってないよね?
「あぁ確かに和泉さんの言った通りですね」
どうしてここで綾の名前が出てくるんだろう?
私は不思議そうに姫乃ちゃんの事を見る。
「和泉さんが言ってたんですよ。大学時代の紗希先輩も男性にモテてたのに、それに全く気づいてなかったって」
えっうそ!だって全然声とかかけられたりもしなかったよ?
綾が男の人から声をかけられているのはよく見たけど、私には全然だったもん。
「えっ嘘だぁ。それなら私に声をかけてくる人もいたはずでしょ?」
「紗希先輩を紹介して欲しいって相談は何度もされたみたいですよ?でも、紗希先輩に気になる男性がいるのか聞いても、いないって答えられたから紹介しなかったそうです」
思い起こせば、綾にそんなことを聞かれた気がする。
あぁ、あの時に彼氏というものを一度は作ってみたいと言っておけばよかったのかぁ。
私が残念がっていると、姫乃ちゃんがジト目で私の事を見つめてくる。
「そんなに彼氏が欲しかったんですか」
「まぁ一度も誰かと付き合ったことがないっていのもなんか嫌じゃん?」
私も人並みに、幸せな家庭というやつを憧れている時期もあったのですよ。
正直今はすでに諦めていますが。
「だからって、今回みたいにノーガードな姿を、よく知らない男性の前で見せるのはどうかと思いますけどね!」
姫乃ちゃんが何やらお怒りのようである。
でも、私からしたらちゃんとガードは固めていると思うのだが、
「ノーガードではないよぉ。さっきもタクシーで家に帰ってお別れのはずだったもん」
「ふぅ~ん。そんな事よく言えますね?」
あれっ何かまずい事を言ったのでしょうか?
姫乃ちゃんの声が怒りに震えているように聞こえる。
「滝谷さんに腰に手を回されて、何か言われても頷くだけの状態だった紗希先輩がよくノーガードじゃないって言えましたね?」
姫乃ちゃんの言葉でさっきの私の状態を思い返してみる。
詳細には思い出せないけど、今いった姫乃ちゃんの言ったことは確かにあっている気がする…
「でも、滝谷さんが私の事を狙っているかはわからないじゃん?」
「…もしかして滝谷さんに狙ってて欲しかったんですか?」
先ほどまでの態度と一転して、不安そうな顔をしてくる。
どうしてそんあ顔をするのかは分からないけど、とりあえず私の本心を話しておく。
「いや全く。正直滝谷さんに興味は湧かなかったなぁ」
緊張していたのか、ふぅ~と息を吐く姫乃ちゃん。
そして、先程の怒りも戻って来た姫乃ちゃんが、私に言い聞かせるように尋ねる。
「なら余計に隙のあるところは見せる必要はなかったですよね?」
「まぁそうかもしれないけど…。まぁ大丈夫だって、滝谷さんが私に興味があったかなんて分からないし」
私の言葉に姫乃ちゃんの表情は明らかに納得していないようだった。
そして、尚も私は悪くないって主張したところで、私の家に到着した。
それじゃあと言って、姫乃ちゃんと別れようとしたが、
「ちょっとだけ紗希先輩の家に上がって行ってもいいですか?」
そう言って私の腰に手を回してくる姫乃ちゃん。
いつもは可愛い後輩という感じなのに、なぜか今は高圧的に私に話しかけてくる。
普段とは異なる雰囲気の彼女に困惑する。
「ほら、行きますよ」
そう言って、何も返事をしない私に構わずに、家のドアまで腰を押されて連れていかれる。
姫乃ちゃんの突然の変化に、思考が停止した状態で家の鍵を開けて、姫乃ちゃんと二人で我が家に帰る。
歩き疲れてソファに座り込んで、そばに立っている姫乃ちゃんを見上げながら尋ねる
「どうしたの姫乃ちゃん?」
先ほどから様子がおかしい姫乃ちゃんに不安になる。
すると姫乃ちゃんが切羽詰まった声色で囁くように、でも思いを叫ぶように私に言う
「そうやって隙を見せるから…」
そう言いながらソファに座っている私をそっと押し倒し、姫乃ちゃんが私の上に覆い被さってくる。
突然の出来事に頭が追いついてこない。
「えっどうしたの?姫乃ちゃん」
今おこっていることが理解できなくて、いつもの料理教室の時のように姫乃ちゃんに質問する。
「まだ分からないんですか?紗希先輩があまりにも隙だらけだから襲われているんですよ?」
えっどうして?
そんな顔をしている私の気持ちを感じ取ったのか、姫乃ちゃんが私に向かって囁いてくる。
「こんなに細い足をして」
そう言って、姫乃ちゃんの指先が私の足先から、ふくらはぎ、太ももをそっと撫でる。
「こんなに綺麗な曲線のお尻をして」
そうして次は私のお尻を優しく触れ。
「こんなにくびれたお腹をして」
私のお腹を手のひらが通り抜ける。
「こんなに豊満な胸でアピールをされて」
私の胸部をそっと撫でて。
「こんなに綺麗なお顔をしたあなたに話しかけられたら…」
私の頬に手を添えられる。
「誰だって襲いたくなるでしょ?」
そうして姫乃ちゃんの顔が私に近づいてくる。
私はいつもと全く違う姫乃ちゃんに驚き、ただ呆然とみていた。
私と姫乃ちゃんとの距離があと数センチとなった時に再び姫乃ちゃんが囁いてきた。
「ほらっ紗希先輩。ヤダって言わないと私と、キスしちゃいますよ」
そう言われて、我に返った私はできる限り大きな声で、なのにとても小さな声で、
「っやだ…!」
私にそう言われた姫乃ちゃんは、自分から言わせたくせにとても傷ついて表情を見せる。
思わずゴメンと言いそうになる私に向かって、
「ほらっこうやって隙を見せると危ない目にあっちゃうでしょ?だから今度からは気をつけてくださいね?」
私の事を見ずに早口でそう言い切った姫乃ちゃんは、それではと言って私の家から帰っていった。
胸の鼓動が速くなった私を置いて。
歩き始めの頃は足取りも不確かで、意味のない事を姫乃ちゃんに話しかけていたが、飲み屋から結構歩いて家までもう少しの距離になると、私の酔いも大分覚めてきた。
「この間とは逆の立ち場になったね」
この間二人で飲みに来た時には姫乃ちゃんが酔っ払いで、私がそれを心配する立場だった。
でも今は、私が酔っ払いで姫乃ちゃんが私を心配する立場に変わっている。
あれから二人の関係もだいぶ変わったなぁ。
そう思いながら姫乃ちゃんに気さくに話しかける。
なのに、姫乃ちゃんからはいつものような返事が返ってこない。
ほんのり頬はピンク色に染まってはいるけど、さっきの私のようにそこまで酔っ払っているわけではなさそうだ。
なのに、さっき私と再開した時のような不安そうな顔をしている。
今日は綾と二人で飲みに行ったはずだけど、それと関係しているのかも。
「綾とどんな話をしたの?」
姫乃ちゃんが不安そうにしている理由が知りたくて、さっきまでどんな事を二人が話していたのかを聞いてみる。
だと言うのに、姫乃ちゃんから返って来た言葉は予想外なものだった。
「和泉さんが思う、紗希先輩の幸せな将来について話をされました。」
はぁ?なにそれ。
私は困惑する。二人で話し合う内容がまさかの私についてで、しかもその内容が私の幸せな将来についてとは。
まぁ確かに、綾がわざわざ時間をとって話をしようとした時点で、私が関係するのかなとは思ったけど、内容が思いがけないものだった。
と言うか、綾が私の将来について真剣に考えていることに驚いた。
いつも私の事を心配してくれているけど、まさかそこまで考えてくれているとは思わなかった。
「それって詳しくいうと、どんな内容になるの?」
綾が考える私の幸せな将来とは一体どんなものなのか、とっても興味がある。
絶対に本人に聞いても教えてくれないもんね。
「和泉さんに、『あくまで私の主観だから絶対に紗季には言わないで』って言われているんですけど、どうします?
聞きます?」
う~ん、綾が言って欲しくないって思っている事を聞き出すのは憚られるなぁ。
でもすっごい気になるのも確かだ。
「ちょっとだけ、話の要約だけ教えてくれる?」
綾には悪いけどちょとだけならいいよね?
姫乃ちゃんは、少し考えた後に1文で話をまとめてくれた。
「えっと、要は紗希先輩を悲しませるようなことはするなっていう話でした。」
結局よくわからない。
でも綾が本当に私のことを考えてくれているのは感じるからよしとしましょうか。
「そっか…」
綾の優しに思わず目元が緩んでしまう。
「それにしても紗希先輩」
先ほどまでの態度とは打って変わり。
わざとのように、平坦な声をした姫乃ちゃんが真っ直ぐに私の目を見ながら話しかけてくる。
「あれだけ泥酔しないでくださいって言ったのに、なんであそこまで酔っ払っていたんですか?」
うっ、姫乃ちゃんには迷惑かけてないし、私は悪いことはしていないはずだ。
ただ、少しだけ飲みすぎて、意識がどこかに行きそうになっていただけである。
でも、姫乃ちゃんのこの突き刺すような視線を受けると、悪いのは私なのかという気がしてくる。
そのせいで、思わず言い訳めいた事を呟いてしまう。
「でもしょうがないんだよ…。仕事以外の場で滝谷さんと喋ったことないから何話せばいいのかわかんなくて…」
そう、しょうがなかったの!
私の会話のネタが滝谷さんと合う気がしなかったから、お酒の力を借りるしかなかったの!
「それなら、どうして二人で飲む事をokしちゃったんですか?」
「でも度々お誘いされたから断りきれなくてね…」
あそこまで執拗にお誘いを受けることがなかったから、どうやって断ったらいいのかわからなかった。
それに、会社と会社の付き合いもあるから下手な断り方もできないし。
「今までどうやって男性からのお誘いを断っていたんですか?それとも、まさか全部okしていたんですか!?」
「そんなわけないよ!大学時代は綾とほとんど一緒にいたからか誘われることはなかったの。社会人になって初めてだよ…」
私の言葉に、姫乃ちゃんは小さく頷く。
「なるほど、和泉さんがストッパー役をしていたって事ですね」
そうなのかなぁ?
単純に私に興味がある人がいなかっただけだと思うんだけど。
大学時代の私って、交友関係はめっちゃ狭くて、綾と数人の友人としか話してなかったんだよね。
だから、大学生になったら彼氏とかできるのかな?
ってちょっとドキドキしていたのに、綾との大学生活を満喫していたら気づいたら卒業していた。
まぁ綾って言う大切な友人ができたからいいんだけどね。
それでも最近は、このままだと一生彼氏もできないまま私の生涯が終了しそうな予感がして来ている。
だから、もしかしたら気が合うかもっていう可能性にかけて、滝谷さんと飲むことを承諾してみた。
まぁ実際には話が合う以前の問題だったけどね。
慣れないことはするもんじゃないね。
「でも、滝谷さんが私を狙っていたかどうかは分からないでしょ?」
そう言うと、姫乃ちゃんの目線に鋭さが増した。
えっ私何か間違ったことを言ってないよね?
「あぁ確かに和泉さんの言った通りですね」
どうしてここで綾の名前が出てくるんだろう?
私は不思議そうに姫乃ちゃんの事を見る。
「和泉さんが言ってたんですよ。大学時代の紗希先輩も男性にモテてたのに、それに全く気づいてなかったって」
えっうそ!だって全然声とかかけられたりもしなかったよ?
綾が男の人から声をかけられているのはよく見たけど、私には全然だったもん。
「えっ嘘だぁ。それなら私に声をかけてくる人もいたはずでしょ?」
「紗希先輩を紹介して欲しいって相談は何度もされたみたいですよ?でも、紗希先輩に気になる男性がいるのか聞いても、いないって答えられたから紹介しなかったそうです」
思い起こせば、綾にそんなことを聞かれた気がする。
あぁ、あの時に彼氏というものを一度は作ってみたいと言っておけばよかったのかぁ。
私が残念がっていると、姫乃ちゃんがジト目で私の事を見つめてくる。
「そんなに彼氏が欲しかったんですか」
「まぁ一度も誰かと付き合ったことがないっていのもなんか嫌じゃん?」
私も人並みに、幸せな家庭というやつを憧れている時期もあったのですよ。
正直今はすでに諦めていますが。
「だからって、今回みたいにノーガードな姿を、よく知らない男性の前で見せるのはどうかと思いますけどね!」
姫乃ちゃんが何やらお怒りのようである。
でも、私からしたらちゃんとガードは固めていると思うのだが、
「ノーガードではないよぉ。さっきもタクシーで家に帰ってお別れのはずだったもん」
「ふぅ~ん。そんな事よく言えますね?」
あれっ何かまずい事を言ったのでしょうか?
姫乃ちゃんの声が怒りに震えているように聞こえる。
「滝谷さんに腰に手を回されて、何か言われても頷くだけの状態だった紗希先輩がよくノーガードじゃないって言えましたね?」
姫乃ちゃんの言葉でさっきの私の状態を思い返してみる。
詳細には思い出せないけど、今いった姫乃ちゃんの言ったことは確かにあっている気がする…
「でも、滝谷さんが私の事を狙っているかはわからないじゃん?」
「…もしかして滝谷さんに狙ってて欲しかったんですか?」
先ほどまでの態度と一転して、不安そうな顔をしてくる。
どうしてそんあ顔をするのかは分からないけど、とりあえず私の本心を話しておく。
「いや全く。正直滝谷さんに興味は湧かなかったなぁ」
緊張していたのか、ふぅ~と息を吐く姫乃ちゃん。
そして、先程の怒りも戻って来た姫乃ちゃんが、私に言い聞かせるように尋ねる。
「なら余計に隙のあるところは見せる必要はなかったですよね?」
「まぁそうかもしれないけど…。まぁ大丈夫だって、滝谷さんが私に興味があったかなんて分からないし」
私の言葉に姫乃ちゃんの表情は明らかに納得していないようだった。
そして、尚も私は悪くないって主張したところで、私の家に到着した。
それじゃあと言って、姫乃ちゃんと別れようとしたが、
「ちょっとだけ紗希先輩の家に上がって行ってもいいですか?」
そう言って私の腰に手を回してくる姫乃ちゃん。
いつもは可愛い後輩という感じなのに、なぜか今は高圧的に私に話しかけてくる。
普段とは異なる雰囲気の彼女に困惑する。
「ほら、行きますよ」
そう言って、何も返事をしない私に構わずに、家のドアまで腰を押されて連れていかれる。
姫乃ちゃんの突然の変化に、思考が停止した状態で家の鍵を開けて、姫乃ちゃんと二人で我が家に帰る。
歩き疲れてソファに座り込んで、そばに立っている姫乃ちゃんを見上げながら尋ねる
「どうしたの姫乃ちゃん?」
先ほどから様子がおかしい姫乃ちゃんに不安になる。
すると姫乃ちゃんが切羽詰まった声色で囁くように、でも思いを叫ぶように私に言う
「そうやって隙を見せるから…」
そう言いながらソファに座っている私をそっと押し倒し、姫乃ちゃんが私の上に覆い被さってくる。
突然の出来事に頭が追いついてこない。
「えっどうしたの?姫乃ちゃん」
今おこっていることが理解できなくて、いつもの料理教室の時のように姫乃ちゃんに質問する。
「まだ分からないんですか?紗希先輩があまりにも隙だらけだから襲われているんですよ?」
えっどうして?
そんな顔をしている私の気持ちを感じ取ったのか、姫乃ちゃんが私に向かって囁いてくる。
「こんなに細い足をして」
そう言って、姫乃ちゃんの指先が私の足先から、ふくらはぎ、太ももをそっと撫でる。
「こんなに綺麗な曲線のお尻をして」
そうして次は私のお尻を優しく触れ。
「こんなにくびれたお腹をして」
私のお腹を手のひらが通り抜ける。
「こんなに豊満な胸でアピールをされて」
私の胸部をそっと撫でて。
「こんなに綺麗なお顔をしたあなたに話しかけられたら…」
私の頬に手を添えられる。
「誰だって襲いたくなるでしょ?」
そうして姫乃ちゃんの顔が私に近づいてくる。
私はいつもと全く違う姫乃ちゃんに驚き、ただ呆然とみていた。
私と姫乃ちゃんとの距離があと数センチとなった時に再び姫乃ちゃんが囁いてきた。
「ほらっ紗希先輩。ヤダって言わないと私と、キスしちゃいますよ」
そう言われて、我に返った私はできる限り大きな声で、なのにとても小さな声で、
「っやだ…!」
私にそう言われた姫乃ちゃんは、自分から言わせたくせにとても傷ついて表情を見せる。
思わずゴメンと言いそうになる私に向かって、
「ほらっこうやって隙を見せると危ない目にあっちゃうでしょ?だから今度からは気をつけてくださいね?」
私の事を見ずに早口でそう言い切った姫乃ちゃんは、それではと言って私の家から帰っていった。
胸の鼓動が速くなった私を置いて。
1
あなたにおすすめの小説
結婚したくない腐女子が結婚しました
折原さゆみ
恋愛
倉敷紗々(30歳)、独身。両親に結婚をせがまれて、嫌気がさしていた。
仕方なく、結婚相談所で登録を行うことにした。
本当は、結婚なんてしたくない、子供なんてもってのほか、どうしたものかと考えた彼女が出した結論とは?
※BL(ボーイズラブ)という表現が出てきますが、BL好きには物足りないかもしれません。
主人公の独断と偏見がかなり多いです。そこのところを考慮に入れてお読みください。
※番外編に入り、百合についても語り始めました。
こちらも独断と偏見が多々あるかもしれないのでご注意ください。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などとは関係ありません。
※番外編を随時更新中。
モヒート・モスキート・モヒート
片喰 一歌
恋愛
主人公・翠には気になるヒトがいた。行きつけのバーでたまに見かけるふくよかで妖艶な美女だ。
毎回別の男性と同伴している彼女だったが、その日はなぜか女性である翠に話しかけてきた。
紅と名乗った彼女は男性より女性が好きらしく、独り寝が嫌いだと言い、翠にワンナイトの誘いをかける。
根負けした翠は紅の誘いに応じたが、暑い盛りと自宅のエアコンの故障が重なってしまっていた事もあり、翠はそれ以降も紅の家に頻繁に涼みに行くようになる。
しかし、妙な事に翠は紅の家にいるときにだけ耐え難い睡魔に襲われる。
おまけに、ほとんど気絶と言って言い眠りから目覚めると、首筋には身に覚えのないキスマークのような傷が付いている。
犯人候補は一人しかいない。
問い詰められた紅はあっさり容疑を認めるが、その行動の背景には翠も予想だにしなかった事情があって……!?
途中まで恋と同時に謎が展開しますが、メインはあくまで恋愛です。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる