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1.生まれたときから決まってたこと
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「・・・この様に、扇の向きや動かし方で相手に気持ちを伝えます」
ここ、リス・ブラン女学校では貴族の令嬢達に社交界のマナーやダンスレッスンなどを教えている。
壁一面に華美な装飾がほどこされた部屋で、十数名ほどの少女が講義を受けていた。
その中に他の令嬢とは異質な、クーと名乗る少女がいた。
年は16、ボンネットからのぞく栗色の髪は少年の様に短く刈り込まれ、手は労働者のように荒れていた。
褐色の瞳は鋭く開かれ、不穏な空気を放っていた。
(騙されたかもしれない…)
講義の内容はわかるが納得はできない。
女性は社交界において発言が許されていないので、扇の扱いで返事をする。
返事をする、だけ?
こちらからの意見は?!
女性の仕事は、しおらしく振る舞い殿方の愛を受け子供を生むこと。そして務めに疲れた旦那様を癒やす。
ああ、そうかい。
貴族って大変だね。
………で?
体から湧き出る殺気に、隣にいた令嬢が「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。
「少し早いですが、今日はこれでお終いにしましょう。」
クーの醸しだす殺伐とした雰囲気に耐えきれず、講師をしていた年配の女性が授業を早めに切り上げる。
令嬢達は心の中で『ありがとうございます!!!』とシャウトした。
足早に部屋を去ろうとする講師を捕まえ、クーは質問した。
「幾何学や燃焼力学はいつやりますか?!
せめて薬学だけでもいいんですか………」
「……………やる予定はありませんわ。」
いやいや、
いやいやいやいやいやいや、
それじゃ話が
「ちがうだろーーー!!!」
鼻息荒く研究室の扉を開ける。
そこには部屋の主であるトマス・カレン教授がいた。
「おう、クーか。どうじゃった、学校は?」
「どうもこうも…庶民が貴族のマナーを学んでなんになる!!!」
「ん?公爵家に嫁ぐこともあるかもしれんぞ?」
「庶民が貴族に、しかも公爵なんかと結婚なんてありえないわ!!!」
「わしの養子になれば、ありえない話ではないと思うが。他国で領地持っとるからの。
クーが本当の名を教えてくれとればすぐにでも手続きを…」
「それはもういいからっ。
問題はそこじゃないよ、教授。どうして大学じゃ無くて女学校なのか!科学を学ばせてくれる約束だったのに。」
教授は調べていた書物を閉じ、深く息を一つ吐き出した。
「クーや、この国では女性が大学へ行くことは認められておらん」
「っ!……知ってる、そんなこと。」
そんなこと、わかってる。
女性に教育は必要ない。
そんなこと、もっと小さい子供だって知ってる。
でも、どうして?
部屋に行き、身につけていたボンネットとワンピースを投げ捨て、シャツとズボン、ジャケットを羽織る。
男の服装になった私を見て教授のもじゃもじゃの眉が少し下がるが、格好については何も言わなかった。
「これを図書館から借りてきてほしい。もう暗くなるから、明日、頼むぞ。」
渡されたリストには、教授が研究で使う論文の他に科学の入門書が書かれていた。これは私の勉強用だろう。
胸かじんわり熱くなり息が詰まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
女学校は、午後3時から一時間、週一回開講する。やる気が感じられない頻度だが、お嬢様方はお茶会や夜会で忙しいらしい。
私も女学校へ行きたい意思はないので良しとしよう。
教授に許可証をもらい、王立図書館へ本を探しに行く。服装は庶民の男性と同じような物を身に着けている。そもそも図書館を利用する女性はほぼいないし、一人で歩くなら、男の子の格好のほうが安全だ。
目的のものを司書さんに見つけてもらい、気になった本も一緒に借りた。帰ってからまた忙しくなるので、外で少し読んでから帰ろうかな。
王立なだけあり、この図書館の庭は馬鹿広い。教授の広い家が100個も入るんじゃないか。
読んでいる途中で邪魔が入らぬよう奥の方へ進むうち、水の流れる音が聞こえてきた。湧き水が出ているのか、自然の小川と池ができている。
「あー、気持ち~~」
手を水の中に入れ冷たさを感じていると、視界に光るものがあることに気がついた。
金髪だ。
ブロンドの髪の人が茂みの近くに横たわっている。少し見える小綺麗な服装から、おそらく貴族だろう。すごくきれいな子だ。絵本に出てくるお姫様みたい。
音を立てぬよう観察していると、すぐ気がついた。
あれ?
この人、息してないぞ????
ここ、リス・ブラン女学校では貴族の令嬢達に社交界のマナーやダンスレッスンなどを教えている。
壁一面に華美な装飾がほどこされた部屋で、十数名ほどの少女が講義を受けていた。
その中に他の令嬢とは異質な、クーと名乗る少女がいた。
年は16、ボンネットからのぞく栗色の髪は少年の様に短く刈り込まれ、手は労働者のように荒れていた。
褐色の瞳は鋭く開かれ、不穏な空気を放っていた。
(騙されたかもしれない…)
講義の内容はわかるが納得はできない。
女性は社交界において発言が許されていないので、扇の扱いで返事をする。
返事をする、だけ?
こちらからの意見は?!
女性の仕事は、しおらしく振る舞い殿方の愛を受け子供を生むこと。そして務めに疲れた旦那様を癒やす。
ああ、そうかい。
貴族って大変だね。
………で?
体から湧き出る殺気に、隣にいた令嬢が「ひっ」と小さな悲鳴をあげる。
「少し早いですが、今日はこれでお終いにしましょう。」
クーの醸しだす殺伐とした雰囲気に耐えきれず、講師をしていた年配の女性が授業を早めに切り上げる。
令嬢達は心の中で『ありがとうございます!!!』とシャウトした。
足早に部屋を去ろうとする講師を捕まえ、クーは質問した。
「幾何学や燃焼力学はいつやりますか?!
せめて薬学だけでもいいんですか………」
「……………やる予定はありませんわ。」
いやいや、
いやいやいやいやいやいや、
それじゃ話が
「ちがうだろーーー!!!」
鼻息荒く研究室の扉を開ける。
そこには部屋の主であるトマス・カレン教授がいた。
「おう、クーか。どうじゃった、学校は?」
「どうもこうも…庶民が貴族のマナーを学んでなんになる!!!」
「ん?公爵家に嫁ぐこともあるかもしれんぞ?」
「庶民が貴族に、しかも公爵なんかと結婚なんてありえないわ!!!」
「わしの養子になれば、ありえない話ではないと思うが。他国で領地持っとるからの。
クーが本当の名を教えてくれとればすぐにでも手続きを…」
「それはもういいからっ。
問題はそこじゃないよ、教授。どうして大学じゃ無くて女学校なのか!科学を学ばせてくれる約束だったのに。」
教授は調べていた書物を閉じ、深く息を一つ吐き出した。
「クーや、この国では女性が大学へ行くことは認められておらん」
「っ!……知ってる、そんなこと。」
そんなこと、わかってる。
女性に教育は必要ない。
そんなこと、もっと小さい子供だって知ってる。
でも、どうして?
部屋に行き、身につけていたボンネットとワンピースを投げ捨て、シャツとズボン、ジャケットを羽織る。
男の服装になった私を見て教授のもじゃもじゃの眉が少し下がるが、格好については何も言わなかった。
「これを図書館から借りてきてほしい。もう暗くなるから、明日、頼むぞ。」
渡されたリストには、教授が研究で使う論文の他に科学の入門書が書かれていた。これは私の勉強用だろう。
胸かじんわり熱くなり息が詰まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
女学校は、午後3時から一時間、週一回開講する。やる気が感じられない頻度だが、お嬢様方はお茶会や夜会で忙しいらしい。
私も女学校へ行きたい意思はないので良しとしよう。
教授に許可証をもらい、王立図書館へ本を探しに行く。服装は庶民の男性と同じような物を身に着けている。そもそも図書館を利用する女性はほぼいないし、一人で歩くなら、男の子の格好のほうが安全だ。
目的のものを司書さんに見つけてもらい、気になった本も一緒に借りた。帰ってからまた忙しくなるので、外で少し読んでから帰ろうかな。
王立なだけあり、この図書館の庭は馬鹿広い。教授の広い家が100個も入るんじゃないか。
読んでいる途中で邪魔が入らぬよう奥の方へ進むうち、水の流れる音が聞こえてきた。湧き水が出ているのか、自然の小川と池ができている。
「あー、気持ち~~」
手を水の中に入れ冷たさを感じていると、視界に光るものがあることに気がついた。
金髪だ。
ブロンドの髪の人が茂みの近くに横たわっている。少し見える小綺麗な服装から、おそらく貴族だろう。すごくきれいな子だ。絵本に出てくるお姫様みたい。
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あれ?
この人、息してないぞ????
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