私の中にも

Emma

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きっかけ

はじめまして

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 なんで?なんでだったっけ…思い出さなきゃ……!


〔ダメだよ。いい子にしてないと……〕
 私は山瀬花美[やませはなみ]。5歳。今ね不思議な声が聞こえたの!私と同じぐらいの歳の子の声だった。誰だろう?今この部屋には私しか居ないのに…。今ねママがお買い物に言ってるから、1人でお留守番してるの。
「イタズラしたり、暴れたり、物を壊したり、勝手に何か食べちゃダメよ!」
ってママに言われたから大人しく待っとくの!私って偉い子なのよ!

 パパはお仕事に行ってるの。最近なんか忙しいらしくてあんまり遊んでくれないの。だけど、
「いい子にしてたら、また遊んでくれるわよ。」
ってママが言ってたから私いい子にしとくの!偉いでしょ?私がいい子にしてたら、ママは褒めてくれるし、パパも遊んでくれるの。だから、私頑張るの!

 そういえば、さっきの不思議な声はなんだったんだろう?
〔そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?〕
え?でも頑張らないと…
〔いいじゃん!もっと自分に素直になっても!〕
でも……ママに怒られちゃうよ………
〔大丈夫だって!〕
そうかな?
〔大丈夫!大丈夫!〕
なら、お菓子食べたいな~。食べちゃおうかな?
〔でも、お菓子食べたら怒られるよ?怒られたいの?〕
えぇ?あなたが言ったんじゃん!
〔本当に食べていいの?〕
やっぱりやめとこうかな?どうしよう……
〔やっぱり大丈夫だよ。〕
え?え?もう言ってることが違うよ!どっちなの?
〔どっちもだよ…〕
ん?どっちも?意味わかんない!もう黙ってて!!


 家のドアが開く音がした。
「ただいまー。いい子にしてた?」
ママが私に向かって言う。一体あれからどれくらい時間がたってるんだろう?
「どうしたの?ボーっとして。何かあった?」
ママが買ってきた物を片付けながら聞いてくる。
「ママ。なんかね、不思議な声が聞こえたの。それで、よくわかんない事を言ってくるから『黙ってて』って言ったの。そしたら、なんかよくわかんなくなっちゃって……そしたら、ママが帰ってきたの。」
ママは片ずける手を止めて私の方に来て言った。
「大丈夫よ。不思議な声なんて聞こえないわ。大丈夫大丈夫。きっとただの幻聴よ。疲れてて何か聞こえたかもって思っちゃっただけよ。安心して、もう大丈夫だから。」
信じてくれないんだ…
「うん!わかった…」
本当に聞こえてたのに……



 一近所の公園で一

 「花美ちゃん!早く遊ぼ?」
私を呼んでいるのは、親友の南美[みなみ]ちゃんだ。南美ちゃんは親同士が仲が良くて、よく一緒に遊んでいる内にに仲良くなった。
「うん!南美ちゃん今行くよ。」
私は南美ちゃんがいる滑り台の方へ駆けていく。
「何して遊ぼっか?」
南美ちゃんが滑り台に座りながら聞いてくる。
「南美ちゃんは何して遊びたい?」
私は南美ちゃんと遊んだらなんでも楽しいので、南美ちゃんに選んでもらうことにした。
「うーん。じゃあ、ブランコに乗りながらおしゃべりしない?」
私は不思議な声について話をしたかったので、都合が良かった。

 2人でブランコに向かい、ちょうど人数分空いていたので、そこに座った。
「南美ちゃん、あのね。私この前不思議な声を聞いたの。」
私は早速不思議な声について話し始めた。
「不思議な声?」
南美ちゃんは興味が湧いたようだった。
「うん。不思議な声…ママに行ったんだけど、『幻聴だ』って言われたんだ。」
私は南美ちゃんも信じてくれないのかと不安になった。
「そうだったんだ。私は信じるよ!親友だからね。」
南美ちゃんは笑顔でそう言った。私は南美ちゃんを見つめた。
こんな話を信じてくれるなんて思っても見なかった。心の底から嬉しかった。

 〔本当に信じてくれたのかな?〕
え?そんな事言わないでよ!
〔こんな話本当に信じてくれると思ってるの?ママも信じてくれなかったのに。冗談だと思ってるかもよ…〕
確かに…そう思われてるかもしれない……南美ちゃんも信じてくれないのかな?

 「花美ちゃん、大丈夫!私信じてるよ!」
そう言われて私は我に返った。親友の南美ちゃんを疑うなんて……!
「うん、ありがとう!これからも相談にのってくれる?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「もちろん。親友だもの!」
私はやっぱり南美ちゃんに相談して良かったと強く思った。そして、これからも南美ちゃんを信じてなんでも話そうと決めた。



 -花美の家-

 今日はパパが早く帰ってくるの!パパなら南美ちゃんみたいに私の話を信じてくれるかもしれない。私はパパが帰ってくるのを楽しみに待っていた。

 玄関のドアに鍵を入れた音がした。パパが帰ってきたのだ。私は玄関の方を見つめた。パパがドアを開けて家に入ってきた。私は期待で胸がいっぱいになった。それと同時に不安もあった。パパもママみたいに『幻聴』って言うかもしれない……

 〔きっとパパもそうなんだよ…パパもママみたいに私の事を否定するんだよ。〕
そんな事ない!ママは私の事を否定してないし、パパも否定しない!
〔本当にそう言えるの?聞こえてたのに『聞こえない』って言ったんだよ?〕
でも……でも私は信じてる!

 「パパ、おかえりなさい。」
私は不思議な声を気にしていてもしょうが無いと思い、パパに話す事にした。
「花美、ただいま。最近忙しくてごめんね。もう忙しいのは終わったから、これからは一緒にいっぱい遊べるからな!」
パパは目の下に濃い隈ができていて、顔が少し痩せていた。とても疲れていたのだろう。だけど、私の目を見ながら笑顔でそう言った。私は今すぐに不思議な声について話をしたかったが、そんなことよりもパパが心配だったので、また明日聞くことにした。

 「パパ、もう今日は早く休んでね。疲れてるんでしょ?」
私はパパと一緒にリビングに向かいながらそう言った。
「そうだね。今日はもう寝ようかな。」
パパが自分の部屋に向かいながらいつもより元気の無い声で言った。

 「あなた。大丈夫?とても疲れてるでしょ?夕飯は残しておくから、明日食べてね。今日はもう寝なさい。」
ママはとても疲れた様子のパパに心配そうに駆け寄りながらそう言い、パパの部屋に一緒に入っていった。

 〔結局言わないのね。言う勇気がないんでしょ?〕
そんな事ない!パパがとっても疲れてるみたいだったから、今日は言わないことにしたの。明日には絶対に言うんだから!
不思議な声とそんな話をしていたら、パパを寝かせてママがパパの部屋から出てきた。

 「花美、パパは疲れてもう寝てるから、今日はもうパパの部屋には入らないのよ。」
ママはまだ心配そうにしながら私にそう言った。
「さて、夜ご飯にしましょうか!今日はパパの好きな唐揚げよ。パパは今日は食べれないけど、ママと花美で食べちゃお。」
ママは少し無理をして明るく振舞っているように見えた。私に心配させないようにしているのだろうか…
「さあ花美、早く座って!」
ママはもうリビングのテーブルの右のキッチン側、ママの席に座っていた。
「今行く。」
私もそう言ってママの隣に座った。ここが私の席だ。パパ明日には元気になるよね?大丈夫だよね?
〔どうかしらね。明日も話せないかも…〕
私は不思議な声がそう言っていたような気もしたが、明日が待ち遠しくてあまり気にしていなかった。


 「おやすみ花美。」
ママが電気を消しながら言う。
「おやすみママ。」
私はママにそう返した。明日になったらパパに不思議な声の事を言うと強く思いながら。そして、深い深い眠りの世界に落ちていった。
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