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汚部屋清掃ボランティア その2

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汚部屋清掃ボランティア その2
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
 
今回、役所からきたボランティアの依頼は汚部屋清掃ボランティアだった。
近隣住民から1分間に100回クレームがくると噂のゴミ屋敷に向かう途中、金子さんの運転するトラックの窓から竹田とヨシノと副部長が脱走。
近隣住民から1分間に100回クレームがくると噂のゴミ屋敷に向かう途中のトラックに取り残された俺と部長は噂のゴミ屋敷に潜入。
ゴミ屋敷の玄関には見覚えのあるイラスト↓が飾られていた。
『鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤
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こうしてゴミ屋敷の主である、金髪が特徴的な先原エリカと接触した俺と部長は周囲に建造されたゴミの山との戦いを始めた。
俺は汚部屋主の先原エリカに聞いてみる。
「失礼なこと聞いていもいいですか?」
「ダメです」
「どうして、こんなことになっちゃたんですか?」
「こうなってしまったとしか言えませんね」
「それはやはり、片づけられないということですよね?」
「片づけられないということではないです、気付いたらこうなってしまったということです」
人はそれを『片づけられない』と言うのだ。
俺がエリカと話している間も、部長はゼーゼー息を荒げながら、ポリ袋にゴミを入れている。
ちょっと怖い。
よく見るとエリカの右手首にはたくさんの傷があった。
もしかしたら、もともと片づけられない人ではなかったのかもしれない。
きっと、なにかショックな出来事があって、片づけられない人になってしまったのだ。
もしかすると、その原因を突き止めて、解決しない限り、俺たちがどんなにゴミの山を清掃しても再びゴミの山が建造されてしまう可能性がある。
「エリカさんの右手首、傷がたくさんありますよね」
「ありますねぇ!」
「どうして、自分を自分で傷つけてしまうんですか?」
「なんか、こう、やっちゃうんですよね」
「なんか、こう?」
「はい、なんか、こう、気付いたら自分でシュッて感じで」
「シュッて感じ?」
「はい、痛いです、結構」
「でしょうねぇ!痛いのにやめられない?」
「はい、やめられないっすね」
「なんか昔、嫌なことあったんですか?」
「ありますねぇ!」
「どんな?」
「夫がパブリックモンスターになって、暴走しちゃったんです。それで、PGS(パブリックガーディアンズ)に処刑されてしまいました。手首を切って自殺すれば、天国で夫に会えるじゃないかって、でも、なかなかちゃんと死ぬ勇気も出なくて...おまけに、もうすぐ人類が滅びるとかもう、なんか全部どうでもよくなっちゃって...」
「それで、自分を自分で傷つけたり、部屋を片づけられなくなってしまった?」
「ええ、でも役所から、近所の方々からクレームが1分間に100回きてるって言われまして...」
「今に至る?」
「はい、そうですねぇ、でも1分間に100回とか普通に考えて意味わからなくないですか?」
「ですねぇ!」
「私はこのゴミだらけの空間が好きなんです...」
「は?」
「夫がいなくなった後の、この家は、私が住むのにはあまりにも広すぎました、だから、大量のゴミに囲まれていると、私は安心できたんです、私は1人じゃないって...」
「じゃあ、なんで汚部屋清掃を受け入れたんですか?」
「近所の方々に迷惑をかけているのはもちろん、やっぱり、このままでいいのかなって、思ったのかもしれません...」
「それじゃあ、僕たちを一緒に、この部屋を片づけませんか?体を動かすと、気がまぎれるって、よく言うでしょ?」
「そうですね」
こうして、俺はエリカ共に、汚部屋清掃を開始した。
しかし、3人がかりでも、汚部屋を完全に清掃することは出来なかった。
部長が叫ぶ。
「ここでちょっとターイムッ!ちょっと休憩にしましょう」
汚部屋清掃に参加していたエリカが息を荒げながら言う。
「ハァハァ...やっぱり、ひさしぶりに体を動かすと、なんか気分がいいですね...」
「ほらほらほらほら、俺の言った通りでしょ!」
「山神君、スーパーで3人分の昼飯、ムァンビキしてきなさよ!」
「俺は竹田じゃないんですから、そんなことしませんよ」
俺はそのまま、エリカさんの家を出る。
エリカさんの家の前に止まっているトラックには、今回のボランティアの現場責任者の金子さんが乗っていた。
金子さんは運転席でタバコを吸っていた。
俺は人が汗だくになりながら汚部屋清掃していたにもかかわらず、トラックの中でタバコを吸っている金子さんを心の中で罵倒しながら、スーパーに向かう。
俺はちゃんと金を払ってスーパーで買ってきた3人分の弁当とアイスティーのペットボトルが入ったレジ袋を手に持って、エリカさんの汚部屋に帰宅した。

次回予告  汚部屋清掃ボランティア その3
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