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第1話 20××年 5月2日
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●登場人物
高村友助 主人公。妻・アカリに家出される。
高村アカリ 友助の妻、家出中。
杉本ヒロキ アカリの前の夫でヤヨイの実の父親。
高村ヤヨイ アカリと前の夫・杉本ヒロキとの間にできた娘。
第1話 20××年 5月2日
報告書 20××年 5月1日
『実験体3号』はエリアAで『怪異』と交戦。
『実験体3号』は断罪刀『弥生』〈やよい〉を用いて『怪異』を撃破。
交戦後、『実験体3号』の体に異変が見られる。
検査の結果、『実験体3号』と断罪刀『弥生』の適合率低下が判明。
『実験体3号』の廃棄および『弥生』の新適合者の捜索が決定した。
*
20××年 5月2日
ゴールデンウィークだった。
妻のアカリがテーブル置手紙をに残して家出した。
なんで?
俺、高村友助は困惑していた。
俺がいい歳こいたフリーターだから?ヒモだから?
でも、結婚するときにアカリさんは別にそれでもいいって、言ってくれてたもんな。
まぁ、アカリさんの両親はだいぶ複雑そうな顔してたけど。
「ねぇ、ヤヨイちゃん、君のお母さんからなんか聞いてないの?」
俺は、銀色の長髪に頭の両サイドに結んであるピンク色のリボンと大きな胸が特徴的な妻の連れ子のヤヨイちゃん(高校生)に聞いてみた。
高校の制服姿のヤヨイちゃんは気まずそうに俺から目をそらすと、首をぶんぶんと横に振った。
「あっそ、なんにも知らないのね」
俺、昨日なんかアカリさんに酷いこと言ったっけ?
「ねぇ、ヤヨイちゃん、俺、昨日君のお母さんになんか酷いこと言ったっけ?」
ヤヨイちゃんはまた気まずそうに俺から目をそらして、首をぶんぶんと横に振った。
「ねぇ、いくら俺が君の本当のお父さんじゃないからってさ、こう...もうちょっと言葉使うとかさ、ちゃんとコミュニケーションしない?君のお母さんが返ってこないとヤヨイちゃんも困るんだからさ」
「大丈夫です...」
「ふぇ?」
「私が...私が友助さんを守りますから...!」
ヤヨイちゃんと初めて目が合った。
しかも、ちょっといや、だいぶ顔が赤い。
アカリさんがこの家に居たころはあんなによそよそしかったのに。
まぁ、仕方ないよな。
ヤヨイちゃんはアカリさんと前の夫との間にできた連れ子だから。
ヤヨイちゃんの立場にしてみれば、俺はほとんど他人みたいなもんだからな~と妥協してたらこれだ。
なぜ、アカリさんが家出した今になってヤヨイちゃんがこんなに情熱的な目で俺を見つめてくるのか、俺は不思議で仕方なかった。
そして、ライフラインじゃなくて...最愛の妻に捨てられたっぽい俺はとりあえず泣いた。
目の前にヤヨイちゃんがいるにも関わらず、迷子の子どもみたいにわんわん泣いた。
泣き疲れた俺は急に冷静になって、ヤヨイちゃんにアカリさん失踪の事情聴取を再開しようとした。
「ねぇ、ヤヨイちゃ...」
ヤヨイちゃんは俺に向かって、あっかんべ~をして、足早に家を出て行ってしまった。
「そっか、ヤヨイちゃん今日、学校か...でも、なんでゴールデンウィークなのに学校があるんだ?」
口ではそう言いつつも、ヤヨイちゃんのあっかんべ~のことで俺の頭はいっぱいになっていた。
先程の発言といい、あっかんべ~といい、初めて見るヤヨイちゃんの姿に俺は困惑していた。
それに加えアカリさんの家出。
大黒柱を失った俺はこれからどうすればいいのだろうか。
とりあえず時計を見た。
もうすぐバイトの時間だ。
「メシでも食うか」
冷蔵庫には朝食と思しき料理が乗せられた皿が一枚、ラップをされた状態で置かれていた。
よく見るとラップにはなにか文字が書かれたメモ用紙がセロハンテープで張られていた。
メモ用紙にはこう書かれていた。
『いつもより早起きして朝食を作りました、よかったら食べてください。いつもより早起きして朝食をつくりました、よかったら食べてください。 ヤヨイ』
なぜ、二回書いたのだろうか?
これでは、逆に食べないとこちらが悪者になってしまいそうだ。
そう、アカリさんがこの家にいたころは、料理はすべてアカリさんが作っていたのだ。
ということはつまり、このラップに包まれた朝食はおそらくヤヨイちゃんの初料理の可能性が高い。
そして俺はヤヨイちゃん初料理のモルモットに選ばれたということだ。
光栄なような...そうでないような...。
一瞬、頭にお花畑が浮かんだが、俺はとりあえず、冷蔵庫から出した皿に乗った状態のウインナーと卵焼きとブロッコリーを電子レンジで温めた。
朝食を温めている間に俺は顔を洗って着替えを済ませる。
そして、ヤヨイちゃんの作った朝食を食べる。
美味しかった。
モルモットにされてよかった。
俺は戸締りを済ませて、自転車にまたがってバイト先のスーパーに向かう。
裏口から入店してタイムカードをスキャン。
更衣室に入ると、ヤヨイちゃんと同い年の青年が私服から制服に着替えていた。
「鈴木君、おはよう」
「あ、高村さん、おはようございます」
女の子みたいな顔をした鈴木君は俺と同じ青果部門で働くバイト仲間である。
まあ、先程も述べた通り、色々訳ありらしいが、それはみんな同じことだ。
「鈴木君さ、俺さ、今日朝起きたらさ、嫁がさ...いや...やっぱなんでもない!」
「高村さん、奥さんに家出されたんですか?」
「どうしてわかるの?」
「そりゃあ旦那がいい歳こいたフリーターなら俺が高村さんの奥さんの立場でも愛想つかして絶対家出しますよ」
「泣いていいですか?」
「もう目の周り真っ赤じゃないですか、涙出るんですか?」
「今日はもう出ないと思う」
「でも、確か、高村さんの奥さん、連れ子がいましたよね、女子高生」
「よく知ってるねぇ」
「ええ、柿原さんが言ってました」
「あの人妻め~!人の個人情報を俺に無断でペラペラしゃべりやがって!」
「でもよく考えてみてくださいよ、血の繋がっていない十歳近く歳が離れた女子高生と一つ屋根の下で暮らせるんですよ。これってむしろチャンスじゃないですか!」
「バカ言うんじゃないよ、だってあの子いつも、なにかと俺を避けて...」
俺の脳裏に今朝のいつもと違うヤヨイちゃんの様子が思い出される。
『私が...私が友助さんを守りますから...!』
『いつもより早起きして朝食を作りました、よかったら食べてください。いつもより早起きして朝食をつくりました、よかったら食べてください。 ヤヨイ』
まさか...よりによってそんなこと...。
「高村さん、急に黙ってどうしちゃったんですか?」
「え、ああ。悪い、ちょっと考え事」
「今日は休んだほうがいいんじゃないですか?」
「いや、大丈夫だよ。急に休むと、あとでまた、柿原がうるさいからさ」
「つらいときは無理しない方がいいですよ」
「お、おう。ありがとな、鈴木君」
スーパーの制服に着替え終えた鈴木君はそのまま更衣室を出た。
鈴木君、ああ見えて、意外といいところあるんだよな。
スーパーの制服に着替え終えた俺は更衣室を出る。
廊下には制服姿の人妻・柿原がニヤニヤしながら両手を腰に手を当てて立っていた。
「おっす高村!鈴木から聞いたわよ!あんたさ、嫁に逃げられたんだってな!」
鈴木君はやっぱり鈴木君だった。
柿原はなにがそんなに面白いのかずっとゲラゲラ笑っている。
心が折れそうになったとき、ふいに今朝のヤヨイちゃんの熱い視線と言葉を思い出した。
『大丈夫です...』
『私が...私が友助さんを守りますから...!』
さっきまで折れそうだった心が急に温かくなる。
その時、俺は初めてヤヨイちゃんに守ってもらったような気がした。
俺は自分がおかしくなっている事を知りつつも、とりあえず今だけは前を向くことにした。
次回予告 第2話 20××年 5月2日 その2
高村友助 主人公。妻・アカリに家出される。
高村アカリ 友助の妻、家出中。
杉本ヒロキ アカリの前の夫でヤヨイの実の父親。
高村ヤヨイ アカリと前の夫・杉本ヒロキとの間にできた娘。
第1話 20××年 5月2日
報告書 20××年 5月1日
『実験体3号』はエリアAで『怪異』と交戦。
『実験体3号』は断罪刀『弥生』〈やよい〉を用いて『怪異』を撃破。
交戦後、『実験体3号』の体に異変が見られる。
検査の結果、『実験体3号』と断罪刀『弥生』の適合率低下が判明。
『実験体3号』の廃棄および『弥生』の新適合者の捜索が決定した。
*
20××年 5月2日
ゴールデンウィークだった。
妻のアカリがテーブル置手紙をに残して家出した。
なんで?
俺、高村友助は困惑していた。
俺がいい歳こいたフリーターだから?ヒモだから?
でも、結婚するときにアカリさんは別にそれでもいいって、言ってくれてたもんな。
まぁ、アカリさんの両親はだいぶ複雑そうな顔してたけど。
「ねぇ、ヤヨイちゃん、君のお母さんからなんか聞いてないの?」
俺は、銀色の長髪に頭の両サイドに結んであるピンク色のリボンと大きな胸が特徴的な妻の連れ子のヤヨイちゃん(高校生)に聞いてみた。
高校の制服姿のヤヨイちゃんは気まずそうに俺から目をそらすと、首をぶんぶんと横に振った。
「あっそ、なんにも知らないのね」
俺、昨日なんかアカリさんに酷いこと言ったっけ?
「ねぇ、ヤヨイちゃん、俺、昨日君のお母さんになんか酷いこと言ったっけ?」
ヤヨイちゃんはまた気まずそうに俺から目をそらして、首をぶんぶんと横に振った。
「ねぇ、いくら俺が君の本当のお父さんじゃないからってさ、こう...もうちょっと言葉使うとかさ、ちゃんとコミュニケーションしない?君のお母さんが返ってこないとヤヨイちゃんも困るんだからさ」
「大丈夫です...」
「ふぇ?」
「私が...私が友助さんを守りますから...!」
ヤヨイちゃんと初めて目が合った。
しかも、ちょっといや、だいぶ顔が赤い。
アカリさんがこの家に居たころはあんなによそよそしかったのに。
まぁ、仕方ないよな。
ヤヨイちゃんはアカリさんと前の夫との間にできた連れ子だから。
ヤヨイちゃんの立場にしてみれば、俺はほとんど他人みたいなもんだからな~と妥協してたらこれだ。
なぜ、アカリさんが家出した今になってヤヨイちゃんがこんなに情熱的な目で俺を見つめてくるのか、俺は不思議で仕方なかった。
そして、ライフラインじゃなくて...最愛の妻に捨てられたっぽい俺はとりあえず泣いた。
目の前にヤヨイちゃんがいるにも関わらず、迷子の子どもみたいにわんわん泣いた。
泣き疲れた俺は急に冷静になって、ヤヨイちゃんにアカリさん失踪の事情聴取を再開しようとした。
「ねぇ、ヤヨイちゃ...」
ヤヨイちゃんは俺に向かって、あっかんべ~をして、足早に家を出て行ってしまった。
「そっか、ヤヨイちゃん今日、学校か...でも、なんでゴールデンウィークなのに学校があるんだ?」
口ではそう言いつつも、ヤヨイちゃんのあっかんべ~のことで俺の頭はいっぱいになっていた。
先程の発言といい、あっかんべ~といい、初めて見るヤヨイちゃんの姿に俺は困惑していた。
それに加えアカリさんの家出。
大黒柱を失った俺はこれからどうすればいいのだろうか。
とりあえず時計を見た。
もうすぐバイトの時間だ。
「メシでも食うか」
冷蔵庫には朝食と思しき料理が乗せられた皿が一枚、ラップをされた状態で置かれていた。
よく見るとラップにはなにか文字が書かれたメモ用紙がセロハンテープで張られていた。
メモ用紙にはこう書かれていた。
『いつもより早起きして朝食を作りました、よかったら食べてください。いつもより早起きして朝食をつくりました、よかったら食べてください。 ヤヨイ』
なぜ、二回書いたのだろうか?
これでは、逆に食べないとこちらが悪者になってしまいそうだ。
そう、アカリさんがこの家にいたころは、料理はすべてアカリさんが作っていたのだ。
ということはつまり、このラップに包まれた朝食はおそらくヤヨイちゃんの初料理の可能性が高い。
そして俺はヤヨイちゃん初料理のモルモットに選ばれたということだ。
光栄なような...そうでないような...。
一瞬、頭にお花畑が浮かんだが、俺はとりあえず、冷蔵庫から出した皿に乗った状態のウインナーと卵焼きとブロッコリーを電子レンジで温めた。
朝食を温めている間に俺は顔を洗って着替えを済ませる。
そして、ヤヨイちゃんの作った朝食を食べる。
美味しかった。
モルモットにされてよかった。
俺は戸締りを済ませて、自転車にまたがってバイト先のスーパーに向かう。
裏口から入店してタイムカードをスキャン。
更衣室に入ると、ヤヨイちゃんと同い年の青年が私服から制服に着替えていた。
「鈴木君、おはよう」
「あ、高村さん、おはようございます」
女の子みたいな顔をした鈴木君は俺と同じ青果部門で働くバイト仲間である。
まあ、先程も述べた通り、色々訳ありらしいが、それはみんな同じことだ。
「鈴木君さ、俺さ、今日朝起きたらさ、嫁がさ...いや...やっぱなんでもない!」
「高村さん、奥さんに家出されたんですか?」
「どうしてわかるの?」
「そりゃあ旦那がいい歳こいたフリーターなら俺が高村さんの奥さんの立場でも愛想つかして絶対家出しますよ」
「泣いていいですか?」
「もう目の周り真っ赤じゃないですか、涙出るんですか?」
「今日はもう出ないと思う」
「でも、確か、高村さんの奥さん、連れ子がいましたよね、女子高生」
「よく知ってるねぇ」
「ええ、柿原さんが言ってました」
「あの人妻め~!人の個人情報を俺に無断でペラペラしゃべりやがって!」
「でもよく考えてみてくださいよ、血の繋がっていない十歳近く歳が離れた女子高生と一つ屋根の下で暮らせるんですよ。これってむしろチャンスじゃないですか!」
「バカ言うんじゃないよ、だってあの子いつも、なにかと俺を避けて...」
俺の脳裏に今朝のいつもと違うヤヨイちゃんの様子が思い出される。
『私が...私が友助さんを守りますから...!』
『いつもより早起きして朝食を作りました、よかったら食べてください。いつもより早起きして朝食をつくりました、よかったら食べてください。 ヤヨイ』
まさか...よりによってそんなこと...。
「高村さん、急に黙ってどうしちゃったんですか?」
「え、ああ。悪い、ちょっと考え事」
「今日は休んだほうがいいんじゃないですか?」
「いや、大丈夫だよ。急に休むと、あとでまた、柿原がうるさいからさ」
「つらいときは無理しない方がいいですよ」
「お、おう。ありがとな、鈴木君」
スーパーの制服に着替え終えた鈴木君はそのまま更衣室を出た。
鈴木君、ああ見えて、意外といいところあるんだよな。
スーパーの制服に着替え終えた俺は更衣室を出る。
廊下には制服姿の人妻・柿原がニヤニヤしながら両手を腰に手を当てて立っていた。
「おっす高村!鈴木から聞いたわよ!あんたさ、嫁に逃げられたんだってな!」
鈴木君はやっぱり鈴木君だった。
柿原はなにがそんなに面白いのかずっとゲラゲラ笑っている。
心が折れそうになったとき、ふいに今朝のヤヨイちゃんの熱い視線と言葉を思い出した。
『大丈夫です...』
『私が...私が友助さんを守りますから...!』
さっきまで折れそうだった心が急に温かくなる。
その時、俺は初めてヤヨイちゃんに守ってもらったような気がした。
俺は自分がおかしくなっている事を知りつつも、とりあえず今だけは前を向くことにした。
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