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第9話 20××年 5月5日 その2
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第9話 20××年 5月5日 その2
「ひさしぶですね、アカリさん」
ビルの屋上で昼食を食べていた私の目の前に断罪刀『水無月』を手に持ったミナヅキが現れた。
「よく、ここがわかったわね」
「だって、さっき杉本さんと電話してたでしょ?」
「なるほど、私の携帯のGPSを逆探知したわけか、まんまとやられたわね。それでなんのようからしら?」
「『あなた達』がかくまっている『実験体9号』をこちらに引き渡しなさい」
「さて、なんのことかしら?」
「調べはとっくについてるんだから、あなたが『私たち』に対抗する組織に所属していることは」
「私はただ、色々あって『あなた達』を裏切って、家出して、たまたま、組織に拾われただけよ」
「ほら、やっぱり、私の言った通りじゃない!とっととナガツキを出しなさい!」
「あのね、私は最近、たまたま今の組織に拾われた、いわば新入社員なわけ、私の一存でナガツキをあなた達に差し出せるほど私は偉くないのよね」
「ほら、やっぱりあなた達がかくまってるんじゃない!ナガツキを!」
「だからね、そういうことは私みたいな新人社員じゃなくて、社長に言ってくれない?」
「あっそ、あなた達がナガツキの居場所を教えてくれないのなら、私はあなたの所属している組織の人間を全員殺すわよ」
「いいのかしら、そんなことしちゃって、あなた達『実験体』の仕事は本来、『怪異』から『人間』を守ることじゃないの?」
「『私たち』と敵対してる組織の人間は、私たちが断罪刀で守るに値する『人間』ではないわ」
「無理よ、ミナヅキちゃん、あなたには『人間』は殺せない」
「脅しじゃないわよ!」
「ウソね、だってそんなことしたらあなたの大好きな杉本君に嫌われちゃうでしょ?」
「でもナガツキを殺すのに成功したら、杉本さんは私のこと、今より好きなってくれるはずなのよ!」
「そんなことしても、無駄よ、だってあいつがあなたの親友のカンナヅキと付き合ってるの知らないの?」
「ウソ...カンナちゃんと!」
「あらら、ご愁傷さま」
「でも、だったらなおさらナガツキは諦めきれないわね、だってそうでしょ?私がカンナちゃんより先にナガツキを殺せば、杉本さんはカンナちゃんより私のことを好きになってくれるかもしれない...!」
「あのね、あの二人はそういう軽い関係じゃないの、あなたなんかが付け入る隙なんて無いわと、あきらめなさい、前を向いて生きなさい」
ミナヅキか空気中から断罪刀『水無月』を抜刀する。
ミナヅキは両手に持った死神の大鎌を彷彿とさせるシルエットの断罪刀『水無月』を私の首元に近づける。
「最終警告です。今すぐナガツキの居場所を言いなさい、でないとあなたもあなたの所属している組織の人間も全員、私が殺す」
「そこまでだ動くな!」
私を助けにきた組織の人間たちが一斉にミナヅキに銃口を向け、放つ。
「あのー諸先輩方、『実験体』にはそういうのあんまし聞かないって私言いませんでしたっけ?」
ミナヅキの意識が諸先輩方に行っている隙に、私は諸先輩方に一言アドバイスして、ビルから飛び降りる。
ミナヅキは舌打ちをしながら、小型の簡易用パラシュートを広げてビルの屋上から落下する私を見送るしかできない。
「アカリさんがダメなら、あんた達に聞くだけよ!」
私、ミナヅキに向かって銃弾が一斉に放たれる。
色々な意味で手遅れだった。
私がやつらの放った銃弾を断罪刀『水無月』で粉々にする際に発生した衝撃波はそのまま銃を放ったやつらの体も粉々にしてしまった。
この世界で唯一『怪異』を殺す力をもつ兵器である『断罪刀』を普通の人間相手に使えばどうなるのか、私だってわかっていた。
「私は人間を殺してしまった...私は...ただ銃弾を破壊しようと思っただけなのに...!」
アカリさんに私にはできないと言われたことが、こうも簡単できてしまうとは。
私はもう、後には戻れない。
私たちに敵対する組織の人間とはいえ、私は『断罪刀』で『怪異』ではなく人間を殺してしまった。
これで、ナガツキを殺すことができなければ、私は杉本さんに嫌われてしまう、最悪の場合、廃棄の可能性もある。
「嫌だ...私は、私は死にたくない...!」
私が生き残るために残された道はただ一つ、ナガツキを見つけ出して、誰よりも早く殺すこと。
「あ~あ、断罪刀で人間殺しちゃったね』
背後から私の今後の運命を左右する女の声がする。
「ナガツキ、ずっと見てたの?」
「ちょっと前に来ただけよ。だってお昼ご飯食べてたら、アカリさんが屋上からパラシュートで降下してくるし、みんな銃持って屋上行っちゃうし、すぐに『あなた達』が私を殺しに来たことがわかった。でも、一人で来るとは思わなかったわ、手柄を独り占めして、そんなに杉本さんに気に入られたいの?」
「悪い?」
「でも杉本さんの本命ってぶっちゃけあんたじゃなくて、あんた親友のカンナヅキよ」
「それも今日までよ、だってあなたは私の断罪刀『水無月』で死ぬんだから...!」
次回予告 第10話 20××年5月5日 その3
「ひさしぶですね、アカリさん」
ビルの屋上で昼食を食べていた私の目の前に断罪刀『水無月』を手に持ったミナヅキが現れた。
「よく、ここがわかったわね」
「だって、さっき杉本さんと電話してたでしょ?」
「なるほど、私の携帯のGPSを逆探知したわけか、まんまとやられたわね。それでなんのようからしら?」
「『あなた達』がかくまっている『実験体9号』をこちらに引き渡しなさい」
「さて、なんのことかしら?」
「調べはとっくについてるんだから、あなたが『私たち』に対抗する組織に所属していることは」
「私はただ、色々あって『あなた達』を裏切って、家出して、たまたま、組織に拾われただけよ」
「ほら、やっぱり、私の言った通りじゃない!とっととナガツキを出しなさい!」
「あのね、私は最近、たまたま今の組織に拾われた、いわば新入社員なわけ、私の一存でナガツキをあなた達に差し出せるほど私は偉くないのよね」
「ほら、やっぱりあなた達がかくまってるんじゃない!ナガツキを!」
「だからね、そういうことは私みたいな新人社員じゃなくて、社長に言ってくれない?」
「あっそ、あなた達がナガツキの居場所を教えてくれないのなら、私はあなたの所属している組織の人間を全員殺すわよ」
「いいのかしら、そんなことしちゃって、あなた達『実験体』の仕事は本来、『怪異』から『人間』を守ることじゃないの?」
「『私たち』と敵対してる組織の人間は、私たちが断罪刀で守るに値する『人間』ではないわ」
「無理よ、ミナヅキちゃん、あなたには『人間』は殺せない」
「脅しじゃないわよ!」
「ウソね、だってそんなことしたらあなたの大好きな杉本君に嫌われちゃうでしょ?」
「でもナガツキを殺すのに成功したら、杉本さんは私のこと、今より好きなってくれるはずなのよ!」
「そんなことしても、無駄よ、だってあいつがあなたの親友のカンナヅキと付き合ってるの知らないの?」
「ウソ...カンナちゃんと!」
「あらら、ご愁傷さま」
「でも、だったらなおさらナガツキは諦めきれないわね、だってそうでしょ?私がカンナちゃんより先にナガツキを殺せば、杉本さんはカンナちゃんより私のことを好きになってくれるかもしれない...!」
「あのね、あの二人はそういう軽い関係じゃないの、あなたなんかが付け入る隙なんて無いわと、あきらめなさい、前を向いて生きなさい」
ミナヅキか空気中から断罪刀『水無月』を抜刀する。
ミナヅキは両手に持った死神の大鎌を彷彿とさせるシルエットの断罪刀『水無月』を私の首元に近づける。
「最終警告です。今すぐナガツキの居場所を言いなさい、でないとあなたもあなたの所属している組織の人間も全員、私が殺す」
「そこまでだ動くな!」
私を助けにきた組織の人間たちが一斉にミナヅキに銃口を向け、放つ。
「あのー諸先輩方、『実験体』にはそういうのあんまし聞かないって私言いませんでしたっけ?」
ミナヅキの意識が諸先輩方に行っている隙に、私は諸先輩方に一言アドバイスして、ビルから飛び降りる。
ミナヅキは舌打ちをしながら、小型の簡易用パラシュートを広げてビルの屋上から落下する私を見送るしかできない。
「アカリさんがダメなら、あんた達に聞くだけよ!」
私、ミナヅキに向かって銃弾が一斉に放たれる。
色々な意味で手遅れだった。
私がやつらの放った銃弾を断罪刀『水無月』で粉々にする際に発生した衝撃波はそのまま銃を放ったやつらの体も粉々にしてしまった。
この世界で唯一『怪異』を殺す力をもつ兵器である『断罪刀』を普通の人間相手に使えばどうなるのか、私だってわかっていた。
「私は人間を殺してしまった...私は...ただ銃弾を破壊しようと思っただけなのに...!」
アカリさんに私にはできないと言われたことが、こうも簡単できてしまうとは。
私はもう、後には戻れない。
私たちに敵対する組織の人間とはいえ、私は『断罪刀』で『怪異』ではなく人間を殺してしまった。
これで、ナガツキを殺すことができなければ、私は杉本さんに嫌われてしまう、最悪の場合、廃棄の可能性もある。
「嫌だ...私は、私は死にたくない...!」
私が生き残るために残された道はただ一つ、ナガツキを見つけ出して、誰よりも早く殺すこと。
「あ~あ、断罪刀で人間殺しちゃったね』
背後から私の今後の運命を左右する女の声がする。
「ナガツキ、ずっと見てたの?」
「ちょっと前に来ただけよ。だってお昼ご飯食べてたら、アカリさんが屋上からパラシュートで降下してくるし、みんな銃持って屋上行っちゃうし、すぐに『あなた達』が私を殺しに来たことがわかった。でも、一人で来るとは思わなかったわ、手柄を独り占めして、そんなに杉本さんに気に入られたいの?」
「悪い?」
「でも杉本さんの本命ってぶっちゃけあんたじゃなくて、あんた親友のカンナヅキよ」
「それも今日までよ、だってあなたは私の断罪刀『水無月』で死ぬんだから...!」
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