ヤヨイがいた日々。

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第12話 20××年 5月6日

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第12話 20××年 5月6日

5月5日
ヤヨイちゃんと家族の友情を確かめるスキンシップをしていると、それを遮るかのようにナガツキちゃんが我が家に来訪してきた。
「おじゃましま~す」
「あのさ、ナガツキちゃんとアカリさんはいったいどういう関係わけ?」
「関係?う~ん、上司と部下みたいなもんかな」
「ナガツキちゃん、就職したの?」
「そ、友助もちゃんと就職しないとヤヨイちゃんのこと幸せにできないわよ?」
「よ、余計なお世話だ!でも、とりあえず、就職おめでとう」
「あんがと」
ヤヨイちゃんが紅茶の入ったコップをナガツキちゃんの前にあるテーブルに勢いよく置く。
「おー!こわッ!私、なんかヤヨイちゃんを怒らせるようなことした?」
「用件が済んだらとっとと帰ってください...」
「あれ?ヤヨイちゃんとナガツキちゃん、喧嘩でもしたの?」
「してないけどさ、私だってここに好きで来たんじゃないのよ、これでも結構命がけなんだから」
「命がけ?命がけでうちに来たの?」
「もう~友助ったら冗談よ、冗談」
「でも、なんで、わざわざアカリさん本人じゃなくてナガツキちゃんがうちに来たんだい?」
「それはヤヨイちゃんの方が詳しいんじゃないの?」
「ふぇ、ヤヨイちゃん、アカリさんとなんかあったの?」
「それよりナガツキちゃん、お母さんからの伝言を早く聞かせてください」
「そうだよ!伝言!早く聞きさせてよ!」
「うん、まぁ簡単に説明するとさ、今、私とアカリさんが所属している組織『ブレイズ』にヤヨイちゃんを勧誘しに来たのよ。杉本から聞いたでしょ、カンナもこっち側についたって」
「ちょっとまってよ、よくわかないけどさ、ヤヨイちゃんはまだ女子高生だよ。それに組織ってなんだ?会社じゃないの?カンナって誰だ?」
「友助はちょっと黙ってて、私はヤヨイちゃんの返事を聞きに来たの。それに、あんまりここにいると私もけっこーやばいのよね、だから返事は早めにね」
「そういうことなら、私が返事をするまで、ナガツキちゃんはこの家を出ることはできないってことですね...」
「なに?やんの、友助の前で?」
「ちょっと二人とも、そんなに怖い顔してにらみ合わないでよ!」
「私は今まで通り友助さんを守ります、それが私の答えです」
「アカリさん、きっと悲しむわよ」
「今も、そして、これからも、たぶん、悲しませることになると思います」
「『組織』と『ブレイズ』、どっちに味方した方があなたと友助のためになるか、考えればわかるはずよ」
「私の答えは変わりません、もう帰ってください、でないと」
「あっそ、じゃあ、次、会った時はもう容赦しないわよ」
「それはこちらのセリフです」
「絶対、後悔するわよ...」
「後悔のない人生なんてありません」
「どうすれば後悔せずに済むのかわかっているのに、あえて、後悔する道を選ぶのは、ただのバカよ」
「バカでない人がこの世界にいるんですか?」
「私はヤヨイちゃんのことを考えて言ってるの!だって『ブレイズ』に入れば、ヤヨイちゃんは廃棄されずにすむ...」
ヤヨイちゃんがナガツキちゃんの頬を平手打ちした。
「余計なお世話です、私は決めたんです、お母さんを裏切ってでも、自分の願いを叶えるって...!」
ナガツキちゃんが両目から涙を流しならヤヨイちゃんをにらんでいる。
俺には目の前の現象が、どんな原因で起きているのか、いまいち把握できない。
「と、とりあえず、二人ともいったん、落ち着かないか、そうだ、今、風呂沸かすからさ、一緒に入りなよ」
結局、ヤヨイちゃんとナガツキちゃんは一緒に風呂に入った。
風呂場から二人の笑い声が聞こえてくる。
「なにこれ」
俺は戸惑いながらも、すこし安心した」
先に風呂から上がったナガツキちゃんは着替え終えるとコップ二杯ぶんの牛乳を飲んで我が家を出た。
風呂での楽し気な雰囲気など、まるでなかったかのように、ヤヨイちゃんもナガツキちゃんもお互いの目を見ようとはしなかった。
俺は二人が入った後の風呂に入ることにした。
ちょっと興奮している俺はきっと最低だ。
5月6日
昨日、ナガツキちゃんが言っていた不可解なことについて、ヤヨイちゃんに聞いてみた。
ヤヨイちゃんはにこやかにほほ笑むと人差し指で俺の口びるをそっと抑える。
俺とヤヨイちゃんの目が合う。
それが1分間ほど続いた。
俺はもう、それ以上ヤヨイちゃんになにも聞けなかった。

次回予告 20××年 5月6日 その2 
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