ヤヨイがいた日々。

zex69

文字の大きさ
12 / 21

第12話 20××年 5月6日

しおりを挟む
第12話 20××年 5月6日

5月5日
ヤヨイちゃんと家族の友情を確かめるスキンシップをしていると、それを遮るかのようにナガツキちゃんが我が家に来訪してきた。
「おじゃましま~す」
「あのさ、ナガツキちゃんとアカリさんはいったいどういう関係わけ?」
「関係?う~ん、上司と部下みたいなもんかな」
「ナガツキちゃん、就職したの?」
「そ、友助もちゃんと就職しないとヤヨイちゃんのこと幸せにできないわよ?」
「よ、余計なお世話だ!でも、とりあえず、就職おめでとう」
「あんがと」
ヤヨイちゃんが紅茶の入ったコップをナガツキちゃんの前にあるテーブルに勢いよく置く。
「おー!こわッ!私、なんかヤヨイちゃんを怒らせるようなことした?」
「用件が済んだらとっとと帰ってください...」
「あれ?ヤヨイちゃんとナガツキちゃん、喧嘩でもしたの?」
「してないけどさ、私だってここに好きで来たんじゃないのよ、これでも結構命がけなんだから」
「命がけ?命がけでうちに来たの?」
「もう~友助ったら冗談よ、冗談」
「でも、なんで、わざわざアカリさん本人じゃなくてナガツキちゃんがうちに来たんだい?」
「それはヤヨイちゃんの方が詳しいんじゃないの?」
「ふぇ、ヤヨイちゃん、アカリさんとなんかあったの?」
「それよりナガツキちゃん、お母さんからの伝言を早く聞かせてください」
「そうだよ!伝言!早く聞きさせてよ!」
「うん、まぁ簡単に説明するとさ、今、私とアカリさんが所属している組織『ブレイズ』にヤヨイちゃんを勧誘しに来たのよ。杉本から聞いたでしょ、カンナもこっち側についたって」
「ちょっとまってよ、よくわかないけどさ、ヤヨイちゃんはまだ女子高生だよ。それに組織ってなんだ?会社じゃないの?カンナって誰だ?」
「友助はちょっと黙ってて、私はヤヨイちゃんの返事を聞きに来たの。それに、あんまりここにいると私もけっこーやばいのよね、だから返事は早めにね」
「そういうことなら、私が返事をするまで、ナガツキちゃんはこの家を出ることはできないってことですね...」
「なに?やんの、友助の前で?」
「ちょっと二人とも、そんなに怖い顔してにらみ合わないでよ!」
「私は今まで通り友助さんを守ります、それが私の答えです」
「アカリさん、きっと悲しむわよ」
「今も、そして、これからも、たぶん、悲しませることになると思います」
「『組織』と『ブレイズ』、どっちに味方した方があなたと友助のためになるか、考えればわかるはずよ」
「私の答えは変わりません、もう帰ってください、でないと」
「あっそ、じゃあ、次、会った時はもう容赦しないわよ」
「それはこちらのセリフです」
「絶対、後悔するわよ...」
「後悔のない人生なんてありません」
「どうすれば後悔せずに済むのかわかっているのに、あえて、後悔する道を選ぶのは、ただのバカよ」
「バカでない人がこの世界にいるんですか?」
「私はヤヨイちゃんのことを考えて言ってるの!だって『ブレイズ』に入れば、ヤヨイちゃんは廃棄されずにすむ...」
ヤヨイちゃんがナガツキちゃんの頬を平手打ちした。
「余計なお世話です、私は決めたんです、お母さんを裏切ってでも、自分の願いを叶えるって...!」
ナガツキちゃんが両目から涙を流しならヤヨイちゃんをにらんでいる。
俺には目の前の現象が、どんな原因で起きているのか、いまいち把握できない。
「と、とりあえず、二人ともいったん、落ち着かないか、そうだ、今、風呂沸かすからさ、一緒に入りなよ」
結局、ヤヨイちゃんとナガツキちゃんは一緒に風呂に入った。
風呂場から二人の笑い声が聞こえてくる。
「なにこれ」
俺は戸惑いながらも、すこし安心した」
先に風呂から上がったナガツキちゃんは着替え終えるとコップ二杯ぶんの牛乳を飲んで我が家を出た。
風呂での楽し気な雰囲気など、まるでなかったかのように、ヤヨイちゃんもナガツキちゃんもお互いの目を見ようとはしなかった。
俺は二人が入った後の風呂に入ることにした。
ちょっと興奮している俺はきっと最低だ。
5月6日
昨日、ナガツキちゃんが言っていた不可解なことについて、ヤヨイちゃんに聞いてみた。
ヤヨイちゃんはにこやかにほほ笑むと人差し指で俺の口びるをそっと抑える。
俺とヤヨイちゃんの目が合う。
それが1分間ほど続いた。
俺はもう、それ以上ヤヨイちゃんになにも聞けなかった。

次回予告 20××年 5月6日 その2 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...