21 / 21
報告書
しおりを挟む
報告書
「潜入捜査、お疲れさま。報告書、よくまとまっていて、上も大喜びだよ」
「はい、室長、それで...例の件に関しては...」
「ああ、もちろん、約束通り、君は明日から本部勤務だ」
「ありがとうございます」
私は部屋を出てるとそのまま、昼食を摂る為に社外に出た。
「お久しぶり、鈴木さん」
私に話しかけてきたのは、今、いちばん顔を見たくな女だった。
「ア、アカリさん!」
「ちょっと話があるんだけど、今、大丈夫?」
「は、はい...」
私はアカリさんの車の助手席に乗る。
「車の中ってことは、誰かに聞かれちゃまずい話ってことですよね?」
「もちろん、それで報告書のことなんだけど」
「はい、ちゃんと断罪刀の部分は適当に誤魔化しておきましたよ」
「どんなふうに誤魔化したの?」
「だから、断罪刀は全部回収して、第8施設に凍結しておいたって」
「そう、助かったわ。でもそれじゃあ、いずれ上にバレるんじゃないの?」
「問題ありません、凍結した断罪刀はみんなレプリカです、仮に、適合者の探索が再開されても、レプリカの断罪刀に適合できる人間なんて一人もいません」
「なるほどね」
「でも、本物の断罪刀、本当に全部、破壊しちゃってよかったんですか?」
「どういう意味?」
「だって、断罪刀がなくなったら、これから『怪異』の被害者がどんどん増えるってことですよ」
「私はそれでいいと思うわ、人間なんてみんな『怪異』に寄生されて絶滅しちゃえばいいのよ」
「それじゃあ、私、人類を絶滅させるために『組織』と『ブレイズ』の二重スパイをやらされていたようなもんです」
「いいじゃない、別に。結局、そのおかげで明日から本部勤務なんでしょう?」
「どうしてアカリさんが知ってるんですか?」
「でも、私はこれでよかったと思ってるわ、これでもう、断罪刀のせいで嫌な思いをする人間は一人も出なくなるんだから」
「でも、『怪異』を唯一倒せる断罪刀がなくなったせいで、人類は絶滅確定ですよ」
「いいじゃない、別に自然災害に巻き込まれたと思えば」
「自然災害?」
「ええ、人間も所詮は自然の一部だからね。つまり、人の過ちも、殺人も交通事故も、あらゆる犯罪も所詮、自然災害なのよ」
「なるほど、断罪刀をすべて破壊したのも、自然災害だって言いたいわけですね」
「そういうこと」
「あの、悪いんですけど...」
「はいはい、この話はもう終わり、もうあなたの前には二度と姿を現さないわ。わたしはただ、あなたの書いた報告書について色々聞きたかっただけだから」
私は何も言わずに、アカリさんの車から外に出た。
アカリさんの乗った車はそのまま、どこかへと走っていった。
『怪異』から人類を救う、唯一の兵器である『断罪刀』がこの世界から失われた今、私達人類は近い将来『怪異』に寄生された人間達による自殺や殺人などで絶滅する可能性が高い。
それでも、私は室長に提出した報告書の一部を改ざんした。
表向きには12本の断罪刀は第8施設に凍結封印されている。
しかし、実際に第8施設に凍結されている12本の断罪刀はレプリカだ。
本物の断罪刀は全て、アカリさんが回収して破壊した。
それは、人類の滅亡を意味している。
そして、私もそれに手を貸したことになる。
『組織』と『ブレイズ』、敵対する2大勢力で二重スパイをしながら、そこで見た現実を報告書にまとめて本部に送信していた私にはその義務がある。
人が人らしく生きることができる世界を守る為に、人が人でなくなってはいけないのだ。
それが、今回の潜入捜査で感じた私の感想だった。
だから、私は断罪刀の部分だけ、報告書を改ざんしたのだ。
つまり、これで私とアカリさんは人類を滅亡に陥れる恐怖の大魔王になったわけだ。
不思議と罪悪感はなかった。
「潜入捜査、お疲れさま。報告書、よくまとまっていて、上も大喜びだよ」
「はい、室長、それで...例の件に関しては...」
「ああ、もちろん、約束通り、君は明日から本部勤務だ」
「ありがとうございます」
私は部屋を出てるとそのまま、昼食を摂る為に社外に出た。
「お久しぶり、鈴木さん」
私に話しかけてきたのは、今、いちばん顔を見たくな女だった。
「ア、アカリさん!」
「ちょっと話があるんだけど、今、大丈夫?」
「は、はい...」
私はアカリさんの車の助手席に乗る。
「車の中ってことは、誰かに聞かれちゃまずい話ってことですよね?」
「もちろん、それで報告書のことなんだけど」
「はい、ちゃんと断罪刀の部分は適当に誤魔化しておきましたよ」
「どんなふうに誤魔化したの?」
「だから、断罪刀は全部回収して、第8施設に凍結しておいたって」
「そう、助かったわ。でもそれじゃあ、いずれ上にバレるんじゃないの?」
「問題ありません、凍結した断罪刀はみんなレプリカです、仮に、適合者の探索が再開されても、レプリカの断罪刀に適合できる人間なんて一人もいません」
「なるほどね」
「でも、本物の断罪刀、本当に全部、破壊しちゃってよかったんですか?」
「どういう意味?」
「だって、断罪刀がなくなったら、これから『怪異』の被害者がどんどん増えるってことですよ」
「私はそれでいいと思うわ、人間なんてみんな『怪異』に寄生されて絶滅しちゃえばいいのよ」
「それじゃあ、私、人類を絶滅させるために『組織』と『ブレイズ』の二重スパイをやらされていたようなもんです」
「いいじゃない、別に。結局、そのおかげで明日から本部勤務なんでしょう?」
「どうしてアカリさんが知ってるんですか?」
「でも、私はこれでよかったと思ってるわ、これでもう、断罪刀のせいで嫌な思いをする人間は一人も出なくなるんだから」
「でも、『怪異』を唯一倒せる断罪刀がなくなったせいで、人類は絶滅確定ですよ」
「いいじゃない、別に自然災害に巻き込まれたと思えば」
「自然災害?」
「ええ、人間も所詮は自然の一部だからね。つまり、人の過ちも、殺人も交通事故も、あらゆる犯罪も所詮、自然災害なのよ」
「なるほど、断罪刀をすべて破壊したのも、自然災害だって言いたいわけですね」
「そういうこと」
「あの、悪いんですけど...」
「はいはい、この話はもう終わり、もうあなたの前には二度と姿を現さないわ。わたしはただ、あなたの書いた報告書について色々聞きたかっただけだから」
私は何も言わずに、アカリさんの車から外に出た。
アカリさんの乗った車はそのまま、どこかへと走っていった。
『怪異』から人類を救う、唯一の兵器である『断罪刀』がこの世界から失われた今、私達人類は近い将来『怪異』に寄生された人間達による自殺や殺人などで絶滅する可能性が高い。
それでも、私は室長に提出した報告書の一部を改ざんした。
表向きには12本の断罪刀は第8施設に凍結封印されている。
しかし、実際に第8施設に凍結されている12本の断罪刀はレプリカだ。
本物の断罪刀は全て、アカリさんが回収して破壊した。
それは、人類の滅亡を意味している。
そして、私もそれに手を貸したことになる。
『組織』と『ブレイズ』、敵対する2大勢力で二重スパイをしながら、そこで見た現実を報告書にまとめて本部に送信していた私にはその義務がある。
人が人らしく生きることができる世界を守る為に、人が人でなくなってはいけないのだ。
それが、今回の潜入捜査で感じた私の感想だった。
だから、私は断罪刀の部分だけ、報告書を改ざんしたのだ。
つまり、これで私とアカリさんは人類を滅亡に陥れる恐怖の大魔王になったわけだ。
不思議と罪悪感はなかった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
読者目線では中途半端に終わった感が大きいです。
21話で突然出てきた「私」というか鈴木さんは意味不明でした。